第663号コラム:佐々木 良一 理事(東京電機大学 研究推進社会連携センター 顧問・客員教授 兼 サイバーセキュリティ研究所 所長)
題:「セピア色」

最近は、技術や制度に関するコラムの記事が多かったので、少しやわらかい話題で書いてみたいと思います。

「色の名前」という本を持っており楽しみによく見ています。光琳社出版1996年刊「色々な色」の改題で、光琳社出版の倒産に伴い、角川から出ていたものです。自然にまつわる多彩な色の名前(たとえば、橙色、狐色、萌黄色(もえぎいろ)、浅葱色(あさぎいろ)、亜麻色(あまいろ)、ミスト・グリーン、アクアなど)を、その由来となった自然風景の写真とともに紹介しています。眺めているだけで豊かな気分になれます。

一方、パソコンのディスプレイ装置上の種々の色の表示は、光の3原色を利用しているのは有名な話。昔はせいぜい8色しか表示できなかったのですが、今では16、777、216色も出せるようになってきています。そのうち日本で名前がついている色が5、899種のようです。本当にごくごく一部ですね。「色の名前とカラーコード、RGB、CMYKの一覧表」などに一覧があります。

そのような色のひとつにセピア色というのがあります。セピア色はR(RED)の輝度020、G(GREEN)の輝度015、B(BLUE)の輝度007 であり、「暗い灰みの茶」と表現されることもあるようです。古い写真の色をセピア色と言うことから、古い思い出をセピア色の思い出などといったりします。古い写真は劣化防止剤の塗布によりコントラストの劣化を防いでいるのですが、この防止剤自体が経年により劣化し、本来は黒だった画像内の部分が茶色く変質し、セピア色の写真になるようです。

セピア色の写真は、いろいろな形でノスタルジーを刺激させられます。昔、妻の母親の死後、彼女の女学校時代のセピア色の写真を見せてもらい、人はみな若く、そして老い、そして死んでいくというのをしみじみと感じさせられました。

この色の名前の由来を調べたことがあります。最初に知ったのは、昔のヨーロッパ貴族の夫人の名前によるものだという説です。夫が十字軍に参加する際、自らの貞淑を示すために夫の参軍中は下着を取らないと誓い、それを実行したためすっかり変色してしまい、その下着の色をセピア色というようになったのだといいます。昔読んだ本の記憶なので細部は違っているかもしれませんが、もしこの話が正しいとすればセピア色にロマンチックな思いばかりはもてなくなりそうです。

セピア色については、その後の調べで次のような説が有力であることがわかりました。「ギリシャ時代にはセピアイカからとった墨をインクとして使っていた。このインクの色が、現在のセピア色といわれる色に対応する。」

確かにこちらの方が、説得性がありますね。私は見てないのですが、NHKの「チコちゃんに叱られる」でもこの説を取っているようです。

しかし、セピアイカをなぜセピアイカというのかということは未だに疑問で、セピアという名前の人物が出てこないかギリシャ神話など調べてみましたがわかりません。どなたかご存知でしたら教えてください。

昔ほどではないですが、いまだにこんなどうでもよいことを調べるのが楽しみです。こんなことをしながらこのまま退屈せずに人生が終われればいいなと思っています。

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