コラム第879号:「民事訴訟法の準文書に残された録音テープと検証作用」
第879号コラム:櫻庭 信之 理事(弁護士・法曹実務者分科会主査)
題:民事訴訟法の準文書に残された録音テープと検証作用
民法96条1項は、詐欺または強迫(注:条文ママ)による意思表示は取り消せることを定めています。
たとえば、民事裁判で、AがBに脅されて物を不本意に買わされたと主張し、購入時の会話の録音データがAの手元にあったとします。Aは、その反訳書面(録音を文字起こしした文書)を証拠提出し、その書面には、購入直前、Aが「怖いよ。」と発言したことが書かれていました。(実際の紛争はより複雑ですが、理解のため単純化しています。)
コラム第878号:「仮想通貨の取引履歴に対するプライバシーについて―United States v. Gratkowskiを手がかりに」
第878号コラム:尾崎 愛美 理事(国立大学法人筑波大学 人文社会ビジネス科学学術院法曹専攻(法科大学院) 准教授)
題:「仮想通貨の取引履歴に対するプライバシーについて―United States v. Gratkowskiを手がかりに」
1.はじめに
ビットコインをはじめとする仮装通貨(暗号資産)は、ブロックチェーン上の記録が公開かつ改ざん困難であることから新たな決済サービスとして注目される一方で、匿名性という性質ゆえにマネーロンダリングやランサムウェア攻撃といった様々な犯罪の場面で悪用されるリスクがある。仮装通貨が犯罪に悪用された場合、捜査機関としては、仮想通貨取引所への照会を行う等の捜査を行うことが考えられるが、このような照会にあたっては、どのような手続が求められるのであろうか。この点について、近時の米国では、仮装通貨の取引記録の提出に関して令状の要否が争われた事例が存在する(United States v. Gratkowski, 964 F.3d 307 (5th Cir. 2020).以下、「Gratkowski判決」という。)。本コラムでは、同判決の概要について紹介することとしたい。
コラム第877号:「理事就任のご挨拶~クラウドセキュリティ?を添えて~」
第877号コラム:廣澤 龍典 理事(株式会社 NTTデータグループ 技術革新統括本部)
題:「理事就任のご挨拶~クラウドセキュリティ?を添えて~」
第22期より理事に就任いたしました廣澤と申します。一昨年からコラムを執筆させていただいていますが、改めて自己紹介をさせていただきます。私はIDF内において、若手が集まってデジタル・フォレンジックに関係する活動を行う「若手活動WG」の主査(リーダー)を務めています。本WGは第21期に設立された出来立てホヤホヤのWGではありますが、デジタル・フォレンジックに関連するドキュメントを作成するために調査や執筆を進めているほか、WG外部から見える実績としては初心者向けのハンズオンイベントを開催するなど、一歩ずつ着実に活動を進めています。コラム第868号「新年度のご挨拶:利用者認証と本人認証」において、上原会長が「IDFのプレゼンスの一層の向上と共に、会員の皆様同士の交流の活性化に力を入れていきたい」と書かれていましたが、本WGにおいても交流の活性化は重視しており、ネットワーキングパーティ(仮称)を開催予定です。これまでのIDFにはないイベントのため、手探りな部分もありますが自由に動きやすいWGであるという特色を活かし、新たな試みにもたくさん挑戦していきます。皆様への周知はもう少し先にはなるとは思いますが、ぜひご期待ください。
コラム第876号:「アクティブサイバーディフェンスと企業のセキュリティ対策について その4」
第876号コラム:小山 覚 理事(NTTコミュニケーションズ株式会社 情報セキュリティ部 部長)
題:「アクティブサイバーディフェンスと企業のセキュリティ対策について その4」
今回で4回目となるコラム「アクティブサイバーディフェンス(以下、ACD)と企業のセキュリティ対策について」お付き合いください。
5月16日にサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御(以下、ACD)」導入に向けた関連法が参院本会議で可決され成立した。また同じ日に重要経済安保情報保護活用法による「セキュリティクリアランス」制度の運用が始まっており、我が国のサイバー安全保障戦略が動き出した感がある。
2022年12月16日に国家安全保障戦略が策定されてから2年半、紆余曲折を乗り越えてこられた関係者の皆さんに敬意を表したい。