第56号コラム「デジタル・フォレンジックは、専門家以外の方の助け(役割)も必要としています」
~「デジタル・フォレンジックのキーワード」=「正確性(正当性)や信頼性」と「見える化(積極的な可視化による問題発生の抑制、早期解決能力の向上)」~

第56号コラム:小山 幸輝 氏(株式会社インフォセック セキュリティエンジニア、IDF会員)
題:「デジタル・フォレンジックは、専門家以外の方の助け(役割)も必要としています」

~「デジタル・フォレンジックのキーワード」=「正確性(正当性)や信頼性」と「見える化(積極的な可視化 による問題発生の抑制、早期解決能力の向上)」~

デジタル・フォレンジックという言葉を聞くと、専門家が証拠を収集、分析するというイメージがあります。そのイメージは、デジタル・フォレンジックの専門家が、不正(犯罪)調査やインシデントレスポンス(事故や事件への対応)を行い、法的紛争(訴訟)などに貢献するという一面から来ているのかもしれません。
デジタル・フォレンジックの専門家が扱う証拠となるデータなどは、改変されることなく、正確に記録されていることが重要であり、その正確性(正当性)をより高めることが、信頼性を高めることにもつながると考えます。
なぜなら、証拠となるデータなどが、正確に記録されずに、誤って記録されている疑いがあれば、真実を証明する難易度が増して、不正(犯罪)に関係していない無罪の人の潔白を明らかにできずに、不幸になる(有らぬ疑いをかけられる)可能性が高まるだけでなく、実際に不正を犯した人の有罪の事実すら立証されず、有罪の人には逃げられるかもしれないからです。

第55号コラム「仮想化とセキュリティ」

第55号コラム:宮坂 肇 理事(株式会社NTTデータ 公共ビジネス推進部 技術戦略部 部長)
題:「仮想化とセキュリティ」

今回は“仮想化とセキュリティ”というテーマで進めたいと思います。仮想化技術や仮想化環境、その運用等のセキュリティ、そして仮想化環境におけるデジタル・フォレンジックとの関係については相当に幅広く深くまで踏み込む必要がありますが、今回はコラムということで広く浅く見ていきたいと思います。さらに、仮想化環境におけるセキュリティは、今後も様々な研究や技術としても興味深いテーマでもあるため引き続きいろいろな場で議論を進める必要があるのかと考えています。
これまで物理的なハードウェアで構築されていた webサーバやデータベースサーバなどの物理的なサーバ、ディスクアレイ装置などの物理的なストレージ、さらには物理的なネットワークなどを仮想的な装置として動作させる技術、という意味で、ここでは“仮想化 (Virtualization) 技術”として扱います。仮想化技術の進展や、動作させるハードウェアのプロセッサ性能やOS技術等の発展により、仮想化環境が物理的なサーバに置き換えることが可能となり、仮想化環境を構築するためのソフトウェアを提供するベンダ等が増え、データセンターなどでも仮想化環境を提供するようなベンダなどの増加により、企業等の実際の業務で使われる情報系システムや基幹系システムでも実際に利用が現実的となってきています。さらに、仮想化環境を導入する企業等では、複数のサーバやアプリケーションの仮想化を行い少数台の物理サーバに統合することで運用管理等のコスト削減や省スペース化、環境の構築やバックアップ、リストアなどの運用を柔軟に行えるなどのビジネスメリットが期待できると考えられます。一方、セキュリティ面で見た場合には、仮想化環境の導入によりセキュリティ面の期待と課題の両面が存在します。特に仮想化環境を利用する利用者の立場から見た両面について簡単に触れたいと思います。

第54号コラム「ところ(分野)変われば定義も変わる」

第54号コラム:須川 賢洋 理事(新潟大学 法学部 法政コミュニケーション学科 助教)
題:「ところ(分野)変われば定義も変わる」

先日「第1回 研究・教育のためのデータ連携ワークショップ」というイベントに出席しました(http://www.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&page_id=653 ※リンク切れ)。国立情報学研究所が主催したこのワークショップの目的はずばり、「専門領域を超えたデータの連携をいかに行うか?」というものです。企画段階からこのワークショップに関する相談を受けていたのですが、当初の予想以上に大きなテーマであり、異なる専門分野間で研究データを共有していくためには様々な課題があることを改めて感じさせられました。
このWSで私に与えられたテーマは「法的な視点から”データ”という概念を整理して欲しい」というものでした。今回のコラムでは、データという言葉がいかに多種多様な使われ方をしているかということをこのWSの内容を紹介しながら記すとともに、「法的にはデータとはどう定義されているのか?」ということを述べてみたいと思います。
私の話した内容、つまりデータの法的な定義は本稿の後段で記すことにして、まずは「様々な分野で”データ”をどのように捉えているのか?」ということを少し紹介してみたいと思います。
単に「データ」と言っても、デジタル化された電子情報を指す場合もあれば、紙に書かれたアンケートの集計情報を指す場合もあり、人によっては文献や図録等の通常は「コンテンツ」呼んでいるものをデータと呼ぶ場合もあります。

第53号コラム「デジタル・フォレンジックは法律の試験問題になるか?」

第53号コラム:小向 太郎 理事(株式会社情報通信総合研究所 法制度研究グループ部長 上席主任研究員)
題:「デジタル・フォレンジックは法律の試験問題になるか?」

前回このコラムを書いたときに、デジタル・フォレンジックに関して法律・制度の面で研究すべきことは、法的係争に際して技術をどう扱うべきかということであり、従来は次の二つの問題を中心に考えられてきたと申し上げました。
(1)集めた証拠が裁判上の証拠として認められるか
(2)採用する技術や運用方法によって裁判上の証拠としての価値に差が出るか
ところで、法律科目の講義や資格試験で、デジタル・フォレンジックに関する試験問題というのはあり得るでしょうか?法律に関する試験といえば、司法試験がその代表です。いわゆる旧司法試験の論述試験で、平成に入ってから出題された問題を見ていくと、平成13年にコンピュータのデータに関する問題が二問出題されています。刑法の第2問と刑事訴訟法の第1問です。
刑法の問題は、勤務先の機密情報をフロッピーディスクにコピーして持ち出してライバル会社に売却しようとしたことに端を発する事件の罪責を問う事例問題で、データの証拠としての取扱いについては、(訴訟法の問題ではないので)当然ながら問題になっていません。一方、刑事訴訟法で出題されたのは、次のような問題です。