第189号コラム「個人情報利活用と情報セキュリティ」

第189号コラム:秋山 昌範 理事(東京大学政策ビジョン研究センター 教授)
題:「個人情報利活用と情報セキュリティ」

未曽有の大災害のあった本年も、後5日を残すばかりとなった。一方で、高齢者率21%を超える世界一の超高齢社会を迎えた我が国では、財政難も加わり、高福祉社会が崩れようとしている。日本は平均寿命が長く、それを支える国民皆保険は優れた仕組みである。身分差がない上に所得の多寡に関わらずすべての国民が等しく世界最高水準の医療が受けられるため、他国であれば十分な医療を受けられない可能性がある人でも治る仕組みになっている。例えば、糖尿病性腎不全で透析を受けている方が、がん等の難病にかかった場合でも、治癒できるのである。その結果、複数の病気を持つ高齢者が多い世界一の超高齢社会になった。

一方、現状では、年金・介護・医療のIDがそれぞれ異なり名寄せができないため、高齢者が年金、医療、介護をどれだけ受けているのか正確に把握できず、社会保障資源の最適化の議論ができていない。財政難から歳出削減や増税等の議論が必要であるが、国民全体を巻き込んだ議論になっていない一因には、将来予測に必要なシミュレーションの正確性が低いことにもあるだろう。

第188号コラム「激動の一年を振り返る ~絆の重要性~」

第188号コラム:宮坂 肇 理事(NTTデータ先端技術株式会社 セキュリティ事業部 セキュリティソリューションBU)
題:「激動の一年を振り返る ~絆の重要性~」

今月12日に毎年恒例の日本漢字能力検定協会による今年の漢字が発表されました。今年の漢字は「絆(きずな)」でした。今年一年を象徴し、いま日本で一番大切な漢字でもありとても感慨深く思われます。

さて、今年一年を振り返ると、さまざまな事案が多く発生し、日本政府、企業、国民にとっても激動の一年であったと言えるのではないでしょうか。主だった事案を振り返ってみたいと思います。

3月11日の「東日本大震災」は、大地震、津波、原子力発電所事故と連鎖的に発生し、発生以降、国民の生活に影響を与え、日本経済にも大きな影響を与え続けています。これまでの備え以上に想定外の事案でした。「想定外」という言葉も頻繁に聞かれるようになりました。日本の歴史に残る大きな事案の一つであるとも思われます。
さらに、日本経済に影響を与えたのは7月に発生し予想外の影響を与えたタイの洪水です。日本企業は製造業を中心に経済的に有利なオフショアに生産拠点を設け、製造・開発を行ってきました。この洪水により、オフショアの生産拠点がダメージを受け、製品やサービスに全世界規模で影響がでました。日本企業においては、大震災時も同様の影響が国内外に起きていたが、連続して発生したことにより、問題は深刻化していったと思われます。9月11日には、2001年「アメリカ同時多発テロ事件」から10年を迎えました。この前後でも憶測が飛び交い、テロの恐怖をあらためて身近に感じた日でもありました。

第187号コラム「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティのテーマに想う」

第187号コラム:守本 正宏 理事(株式会社UBIC 代表取締役社長)
題:「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティのテーマに想う」

昨年、尖閣諸島沖で発生した中国船による巡視船への衝突を撮影したビデオの流出事件、検察によるFD改ざん、大相撲八百長事件、直近だと大企業による資産の不正利用等、さまざまな事件が発生するたびに、デジタル・フォレンジックが注目されてきました。しかし、デジタル・フォレンジックがどのような場所で活用されているのか等の実態は、意外と知られていないように思います。

そこで、実際にどのような場面でデジタル・フォレンジックが活躍するのかをまずご紹介したいと思います。

1 不正調査

会社で使用しているパソコンやサーバーにある電子データを解析することによって、誰が、いつ、どのような手段で、何をしたか?なぜ発生してしまったのか?あるいは実は発生していなかったのか?などを分析し、今後の方針を判断し、適切な対応をして危機を乗り越える支援をする際に使われます。

2 米国民事訴訟
米国を係争地とする訴訟においては、相互に証拠を開示するディスカバリという手続きがあります。訴訟に関係のある人が持つ電子データ等のドキュメントを収集し、ハイテクを使い分析・抽出します。さらにその抽出したデータを弁護士・パラリーガル等によって実際に人の目で判断するドキュメントレビューを行い、最終的に証拠物を相手方に提出します。係争の種類としては、知財訴訟、PL訴訟、契約上のトラブル、労務的な問題など多岐にわたっています。

第186号コラム「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティ開催に向けて」

第186号コラム:丸谷 俊博 理事・事務局長(株式会社フォーカスシステムズ 新規事業推進室 室長)
題:「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティ開催に向けて」

週明けの12月12日(月)、13日(火)の二日間、第8回目となるデジタル・フォレンジック・コミュニティ2011が開催されます。第8回となる今回は、昨年迄の参加者実績を反映して参加募集定員を260名に増やしましたが、それを上回る300名超の参加者となっています。急遽、会場の椅子席も増やしましたが会場内が混み合うことをご容赦下さい。

これは、昨年秋以降の尖閣ビデオ流出事件、FD改竄事件、大相撲八百長事件等から始まり、今年の東日本大震災で水没損傷を受けたデジタルデータの復旧や最近ではオリンパス不正経理や大王製紙背任事件、そして企業や衆参議両院及び省庁へのサイバー攻撃事案等への対応でもデジタル・フォレンジックの適用・使用が肝要となってきた趨勢を反映しているものと思います。デジタル・フォレンジックへの関心が高まり高度情報化社会のインフラとして適用や導入が増え、啓発が進むことは本研究会の活動目的に合致しておりますので大いに歓迎すると共に研究者や実務者が増えてゆくことを期待しております。

この意味からも今回のテーマとした「実務適用が広まったデジタル・フォレンジック-事例・実務紹介から学ぶ-」は時宜に適したものであり、招請した各講師及び「技術」「法務・監査」「医療」の各研究会での講演及び質疑・討議内容は、参加者の方々にとりまして有益なものとなると思います。また、企業展示も例年通り行いますので最新のデジタル・フォレンジック機材やデジタル・フォレンジック向けソフト製品等についてご覧頂き、各方面・分野への適用・導入検討にお役に立てて頂きたいと思います。