第86号コラム「アメリカ民事訴訟における電子証拠の保全と開示」

第86号コラム:町村 泰貴 理事(北海道大学大学院 法学研究科 教授)
題:「アメリカ民事訴訟における電子証拠の保全と開示」

アメリカの民事訴訟ルールでは、e-Discovery、すなわち電子証拠を対象とする証拠開示制度が明文化された。これによって訴訟上にデジタルデータが証拠として提出される場合のルールが明確化され、特に紛争が生じてからの改ざんが禁止されたり、相手方当事者に開示するデータの形式や範囲をめぐる協議が必要となったり、デジタルデータの改ざんという紛争の予防が図られている。

最近の日本の裁判例でも、デジタル録音されたデータが改ざんされたものかどうかが正面から争われた事例がある。東京高裁平成21年3月27日の判決で、判例タイムズ1308号283頁に掲載された事件だ。

事案は、著名な政治家が元所属先の政党と仲違いをしたため、著名政治家の所有する政党の秘密事項を記した手帳などの記録を政党側にとりもどすべく、政党幹部達が著名政治家の自宅を訪問し、手帳等の引渡しを受けたという出来事に関連する名誉毀損事件である。

第84号コラム「クラウドコンピューティングがもたらす光と影」

第84号コラム:丸山 満彦 監事(公認会計士)
題:「クラウドコンピューティングがもたらす光と影」

クラウドコンピューティングが、IT専門雑誌やIT系メディアのみならず、一般新聞紙やメディアでも取り上げられるようになってきています。そこで、今回はクラウドコンピューティングがもたらす光と影ということで、そのメリットとリスクというものを少し考えてみたいと思います。

クラウドコンピューティングと一言でいっても、その内容は様々で、いろいろな側面を有していると思います。クラウドコンピューティングの特徴としては、サービスを受ける側からみればハードウェアをそろえることなく、あたかも水道管をひねるように、電気のスイッチを入れるように必要な時に必要なサービスを直ちに受けることができるということがあると思います。このような状況は情報処理サービスの社会インフラ化ということにもつながってきているともいます。このようなサービスを提供するために、サービス提供側を安価かつ安定的に行うことができるようになってきた背景には、ネットワーク回線が社会インフラとして整ってきたということと、情報処理がハードウェアの低価格化のみならず仮想化技術等により安価に提供できるようになってきたこともあると思われます。

第83号コラム「事故対応社会におけるデジタル・フォレンジックの役割」

第83号コラム:守本 正宏 (株式会社UBIC 代表取締役社長、IDF理事)
題:「事故対応社会におけるデジタル・フォレンジックの役割」

本年2月に内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)は「第2次情報セキュリティ基本計画」を策定し、その中では“あらゆる関係主体は、情報漏えい、情報システムのサービス機能低下・停止などの情報セキュリティ上の問題の発生を防止するべく事前対策に最大限の努力を行いつつ、それでも万が一の事態が有り得ることを認識し、これに向けた準備を怠らない”とする“事故前提社会”という言葉が使われております。そしてさらに“そして万が一の事態においては、その影響範囲、影響の度合い、緊急度、原因などの事実関係を明らかにしつつ、迅速な対応・復旧を広く進めることで、事業継続性を確保する”と続いております。本年のデジタル・フォレンジック・コミュニティ2009はまさにそれに呼応するように、“事故対応社会におけるデジタル・フォレンジック”というテーマで開催されます。そしてデジタル・フォレンジック・コミュニティ2009において“事故対応社会“としたのは、前述の後段に対応したものだと私は考えています。

私はデジタル・フォレンジック研究会の「技術」分科会の幹事をさせていただいているのですが、このコラムでは「技術」分科会が行う、「技術」事例説明・研究会の中身についてほんの少しだけご紹介したいと思います。