第292号コラム「2013年デジタル・フォレンジック研究会活動を振り返って」

第292号コラム:安冨 潔 副会長(慶應義塾大学大学院法務研究科教授、弁護士)
題:「2013年デジタル・フォレンジック研究会活動を振り返って」

デジタル・フォレンジック研究会も本年で10周年を迎えることができました。

つきましては、本研究会を設立した8月23日には、創立10年記念の式典を無事に行うことができました。そこでは、これまで多大なご援助をいただき、また研究会での貴重な成果をとりまとめられた会員や後援省庁のみなさまに【普及・啓発賞】、【研究開発賞】及び【社会的貢献賞】や【感謝状】をお贈りすることができました。また、10周年を記念して、来春をめどに「改訂版デジタル・フォレンジック事典」の刊行準備を推進しています。

デジタル・フォレンジック研究会では、「法務・監査」、「技術」、「医療」と分科会を設け、定期的に研究会を開催して活動しています。本年も、「法務・監査」分科会では、 「デジタル・フォレンジックを民事訴訟でどう実践するか?(講師:櫻庭 信之氏)」、 「デジタル・フォレンジックと通信の秘密(講師:林 紘一郎氏)」、「不正会計防止のための内部統制 -近年の不正会計事例を踏まえて(講師:小川 真人氏)」を実施し、「技術」分科会では、「Predictive Coding -その技術と活用-(講師:武田 秀樹氏)」、「HDDのファームウェアが改竄されると機能不全に陥る危険性の理論と実演(講師:下垣内 太氏)」、「証拠保全ガイドライン第3版の解説(講師:名和 利男氏)」、「攻撃者を知るためのインテリジェンスの活用~入口、出口、そして侵入拡大へ~(講師:政本 憲蔵氏)」を実施し、また9月には「証拠保全ガイドライン第3版」を公開することができました。
これも、会員みなさまのお力によるものです。副会長として厚くお礼申し上げます。
※「医療」分科会につきましては、年内の開催ができなかったため来春に開催予定で内部検討を進めております。

第290号コラム「手術動画映像の管理」

第290号コラム:和田 則仁 理事(慶應義塾大学 医学部 外科学・専任講師)
題:「手術動画映像の管理」

先日(2013年11月28日~30日)、福岡国際会議場で第26回日本内視鏡外科学会総会が開催された。この学会は腹腔鏡手術などの内視鏡外科手術に関する診療科横断的な学会で、外科、産婦人科、泌尿器科などの外科系臨床医が参加する学会である。会員数は1万人を超え、総会参加者も3千人以上という大規模な学会である。昨年8月に本コラムで「手術映像の保存とデジタル・フォレンジック」と題する拙稿を発表させていただいた。手術の動画映像を診療録として保存することの臨床的意義と問題点を提言したつもりである。その論点に関して議論を深めるため、昨年12月6日に同学会でシンポジウム「手術映像の保存―技術的進歩と運用上の課題」を企画した。公募演題を募り、全国の先進的病院で実際に行われている手術動画の管理方法の実態を垣間見ることができた。当研究会理事の古川俊治教授に司会をお願いし、動画管理の技術的問題とともに、法的・倫理的観点からも突っ込んだ議論を進めることができた。その時点で、既に一部の施設で手術動画とともに室内映像や血圧などの患者生体情報も同時に同期して保存するシステムが導入されていることには驚かされた。それから1年が経過した今年11月30日の同学会で再び「動画映像の管理と配信」と題するパネルディスカッションが企画された。わずか1年間の間に手術動画像の統合的記録配信システムが多くの病院で構築されているのには再度驚愕を禁じ得なかった。多くの場合、病院等の新築等に伴う新たな医療情報システム導入をきっかけに、手術室内の記録システムを導入しているが、背景として動画保存技術の進歩とストーレッジの低価格があるのは間違いないであろう。