コラム第933号:「MECEによる不正アクセス対策の体系化」

第933号コラム:佐藤 慶浩 理事(オフィス四々十六 代表)
題:MECEによる不正アクセス対策の体系化

「不正アクセス」と書けば、「不正なアクセス」ということだから「悪いことをするためのアクセス」であって「してはいけないアクセス」みたいなことだろうと誰しもが考えます。実際にも「不正アクセス」という用語は一般的に使われています。
しかし、そこに「対策」をつなげた「不正アクセス対策」となると、不正アクセスの解釈がまちまちだと、「不正アクセス対策には、○○することが必要です。」と言うことは「なんらかの対策には、○○することが必要です。」と言っているのと同じです。本来ならば、「○○することが具体的には何の対策にどう役立つの?」と問うてから○○することの必要性や是非を議論しなければならないのに、その問いが見過ごされてしまったままで「確かに、不正アクセス対策には、○○することが必要ですね。」という仮性対話(会話の内容の共通認識が成立していないにもかかわらず、表面上は会話が成立しているように見える状態の対話のこと)になってしまうということです。

コラム第932号:「頂き女子りりちゃんとは何だったのか」

第932号コラム:松本 隆 理事(株式会社ディー・エヌ・エー IT本部 セキュリティ部 サイバーアナリスト)
題:頂き女子りりちゃんとは何だったのか

■ 「頂き女子」という発明

2023年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた「頂き女子」という造語は、渡辺真衣被告がSNSを通じて広めた詐欺の手法を指している。彼女はパパ活の枠組みを悪用し、男性の恋愛感情を利用して大金を騙し取る方法をマニュアルとして言語化した。このマニュアルはSNS上で約3万円で販売され、約1,000人に渡ったとされる。

■ すべてを共有しあうコミュニティ

渡辺被告の手法は、まずマッチングアプリやSNSでターゲットとなる男性を探し、LINEなどでこまめに連絡を取って信頼関係を築くことから始まる。相手が自分に好意を抱いた段階で、親との不仲や借金といった嘘の悩みを打ち明け、相手に「自分がいなければこの子は駄目だ」と思わせる心理操作を行う。その後「家賃が払えない」などの具体的な窮状を伝えて現金を送金させる。彼女がこのようにして男性3人から集めた金は、計約1億5,500万円に上った。

この事件の背景には、詐欺の実行犯たちが互いに協力し合うSNSを通じたコミュニティの存在があった。そこでは、ターゲットを騙すためのアイテムが日常的に共有されている。例えば、男性に対して支払いに困っていると見せかけるため、携帯電話の利用明細や、同情を引くためのうつ病の診断書などの画像がコミュニティ内で共有されていた。また、効率的に稼ぐためのノウハウや、暴力を振るったり金を払わない男性を「危険男性」として共有するブラックリストサイトも存在している。コミュニティは、本来は隠されるべき自らが受けた性被害の内容を、全て「仲間」に共有するといった、第三者からは理解できない価値観で運営されていた。