第3号コラム「元祖デジタル・フォレンジック考」

第3号コラム:大橋 充直 氏 (ハッカー検事)
題:「元祖デジタル・フォレンジック考」

 今は,デジタルフォレンジックと言えば,コンピュータ(サーバ)内のアクセスログや各種ログというデジタルデータを証拠化するものと一般には理解されているようである。その御先祖様は何であろうか。実は刑事法の分野では,30年以上前からデジタルデータの証拠化つまり犯罪立証の証拠としてデジタルデータが使われてきた。ただし,プリントアウトしたペーパーベースであるが(笑)。

 それは,固定電話の課金情報すなわち通話履歴である。また,ときに,110番の逆探知というトレーシング(トレースバック)もマスコミに報道されていた。もちろん,手作業のトレースバックをクロスバ交換器に対して行って逆探知で犯人を追う,というところまで行けば,戦後犯罪史を飾る「よしのぶちゃん誘拐事件」までたどり着くであろう。

 当時から電話交換が発信番号パルスというデジタルデータで自動接続されていたから,身代金目的幼児誘拐事件という特異重大事件から,酔っ払いが酔った勢いで110番に爆破予告や放火予告を行うという間の抜けた脅迫事件まで,既にデジタルフォレンジックが大活躍していたわけである。とくに,身代金目的の金銭要求電話では,犯人性を特定する証拠として,声紋つまり今風に言えば生体認証が実用化を始めた。記憶では既に昭和30年代から実用化されていたはずである。

第2号コラム「書込み防止装置について」

第2号コラム:松本 隆 理事(ネットエージェント株式会社)
題:「書込み防止装置について」

5/19(月)のデジタル・フォレンジック研究会定例総会において追加新任理事に推挙頂いておりますネットエージェント株式会社の松本と申します。どうぞよろしくお願いします。

 

さて、私は現在フォレンジック調査部という部署で、クライアントからお預かりしたハードディスクから不正侵入や情報漏えいの痕跡などを解析しレポートするという業務を主として行っています。

調査を行う際によく、「秋葉原などで販売されている、書き込み防止機能の搭載された外付けハードディスク接続アダプタと、専門の会社が使っている書き込み防止装置とはどこが違うの?」という質問を頂きます。

書込み防止装置とは、ご存知の通り読み取り専用の状態でディスクにアクセスするための装置です。調査対象のハードディスクに対する書き込みを禁止することにより、原本の状態を損なうことなくデータの確認や、保全作業を行うことが可能になります。

しかし、カタログに記載された機能面だけを比較すると、量販店などで販売している安価な装置と違いがないように見える、というご指摘です

第1号コラム「デジタル・フォレンジックのコミュニティ」

第1号コラム:上原 哲太郎 理事(京都大学 学術メディアセンター)
題:「デジタル・フォレンジックのコミュニティ」

世界中の情報科学分野の研究者が参加する、情報処理国際連合(IFIP)という団体があります。情報通信技術(ICT)関連の学会の国際連合というとわかりやすいでしょうか、日本の情報処理学会、米国のACMとIEEE CSをはじめとして、世界50カ国以上の学会が参加する連合体です。

このIFIPの第11技術委員会(情報セキュリティ)に、第9ワーキンググループ(WG)としてデジタルフォレンジックのWG(略してIFIP WG11.9と呼びます)が設立されたのが2004年のことです。以来、このWGが主催する国際会議が例年開かれていますが、その第4回となる国際会議ICDF2008はこの1月に京都大学で開かれ、私は地元のお世話役を仰せつかっていました。本研究会にもご後援いただいたこともあって、盛会のうちに無事終えることができまして、ほっとしております。

この国際会議には、デジタルフォレンジックに関心を持つ様々な分野の方が集まってきています。もちろん従来の情報科学分野の研究者、特に情報セキュリティ分野の研究者が多いのですが、画像処理の研究者がデジタル画像の証拠性を扱う研究を発表するなど、これまで情報セキュリティと距離のあった分野の研究者も参加しています。さらに、鉄道や自動車の事故の解析のために運転者の操作を記録しておくイベントレコーダの記録を評価する研究発表などもあり、もはや情報科学や法学関係だけではなく、あらゆる研究がデジタルフォレンジックと見なされていることに驚かされます。一口で「電磁的証拠」といっても、その広がりの大きさや評価方法の多様さを改めて思い知らされながら、毎年この国際会議に参加しています。