第145号コラム「公開メールデータ」

第145号コラム:芝 啓真 幹事((株)フォーカスシステムズ フォレンジックセキュリティ室)
題:「公開メールデータ」

「エンロン事件」をご存じの方は多いと思います。総合エネルギー取引とITビジネスを行っていたエンロン社が、不正経理・取引が発覚したことにより、2001年12月に破たんした事件です。事件の詳細はここでは省略させて頂きますが、ワールドコムの事件と合わせて、上場企業会計改革および投資家保護法(通称SOX法)が制定される要因の一つとなり、また同社の不正に関わっていた大手監査法人アーサー・アンダーセンが解散するなど、多大な影響を及ぼした事件です。(およそ10年前の事件になることをあらためて知り、時の流れの早さを実感しました。)

また、このコラムをご覧になられている方の中には、EDRM(The Electronic Discovery Reference Model)をご存知の方もいらっしゃるかと思います。eDiscovery(電子情報開示)における処理フローのガイドラインを示すものです。このガイドラインはhttp://edrm.net/にて公開されていますが、このサイトでは、eDiscoveryを効率よく進めるためにいくつかのプロジェクトが行われています。これらプロジェクトは、複雑なeDiscovery処理フローをある程度標準化し、処理の品質を高め、eDiscoveryにかかるコストを削減することを目的としています。

第144号コラム「クラウド時代のセキュリティの真実~AWS最新動向から見る現実解~」

第144号コラム:熊平 美香 監事(一般財団法人クマヒラセキュリティ財団 専務理事)
題:「クラウド時代のセキュリティの真実~AWS最新動向から見る現実解~」

昨年秋に、AWS(アマゾンウェブサービス)のJeff Barr氏を講師に招き、クラウド時代のセキュリティをテーマにセミナーを開催致しました。企業のセキュリティ担当者やセキュリティの専門家など全部で136名の方にお集まりいただきました。Jeff Barr氏は、技術的な専門性が高く、AWS に精通している一方で、対象者の専門性や興味・関心に合わせて、『言語』を変えて話すことができるAWS のエバンジェリストです。現在は、世界中を回り、AWS の競争優位性や特徴を、経営者や技術専門家に対して『言語』を使い分け、解説されているそうです。講演では、セキュリティの専門家の『言語』でお話し頂きました。

Jeff Barr氏の講演を聞いて一番驚いたのは、「安全性」を実現しながらも、アマゾンの「顧客中心」という企業方針が、クラウド・コンピューティングサービスにも生かされているという点です。アマゾンがこのサービスを企業に提供し始めたのは2006年ですが、初期設計段階からセキュリティを設計に組み入れていました。システムを使うユーザーが最初から独立した形で保護されるという安全性を実現することが、顧客にとって最重要課題であり、セキュリティを保証するためには、セキュリティを後付けにするのではなく、システム設計の初期段階から設計に組み入むことが不可欠であるという認識からです。

第143号コラム「デジタル・フォレンジックと外科」

第143号コラム:和田 則仁 理事(慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科 助教)
題:「デジタル・フォレンジックと外科」

 医療には不確実性があります。患者さんにはなかなか理解しにくいことかもしれませんが、最善を尽くしても良くない結果が起きることがあります。すなわち同じような治療を行っても結果は同じとは限らないのです。

 外科手術には微妙なことが多く、例えば、切開するラインが1mmずれるだけで、癌を取り残すことになったり、逆に正常な組織を損傷したりすることもあります。薬物療法であれば、処方箋は教授が書いても研修医が書いても出てくる薬は同じですが、手術はそうはいきません。やはり技術や経験の差が結果に出ることがあります。外科医は手術がうまくなりたいので、日々手技の向上を目指して研鑽に努めます。手術のビデオを撮影することもありますが、それを後から見なおして、「この場をこう展開していれば、もっと効率的にできたな」とか、「もう少しこっちを切れば出血が防げたな」というふうに、今後の自分の手術へのフィードバックを考えます。特に結果が悪かった場合は、いろいろと勉強して、どうすれば良かったかを真剣に考えます。このようにして経験を積んで、専門医を取得し、質の高い手術を行ったとしても、合併症のような患者さんにとって好ましくないことはある一定の確率で起きます。治療で治る合併症もありますが、後遺症として後に症状を残すものもあります。そのようなときは、患者さんも辛いわけですが、われわれ外科医も悩みます。やはり「あの時こうしていれば…」などと考えるわけです。医療の結果は、治療の内容だけではなく、患者さんの病状や環境因子など様々な要因が影響して決まるので、どのようにやっても結果がどうなるかはわからないので、悩んでも仕方ないのですが、でも「しょうがない」で片づけることはできません。このように医療の不確実性は避けられないのが現実なのです。