第78号コラム「タイムライン解析で過去を探る」

第78号コラム:根岸 征史 氏(㈱アイアイジェイテクノロジー サービス技術部セキュリティサービスグループ マネージャ、IDF理事)
題:「タイムライン解析で過去を探る」

先月の技術分科会(「フリーツールを活用したディスクフォレンジック解析 ~タイムライン解析を中心に~」)でタイムライン解析 (Timeline Analysis)について、ツールの使い方などを中心に紹介しました。本コラムでは分科会での議論の内容も踏まえつつ、タイムライン解析の現状、課題などについてご紹介します。

 

1. タイムライン解析とは?

タイムライン解析は、ファイルシステムのタイムスタンプ情報などをもとに、過去の事象を時系列に整理して、そこから不正アクセスなどの痕跡を調査する手法のことです。伝統的なディスクフォレンジックの中でも基本となる解析手法と言えます。ファイルシステムは通常 MAC timesと呼ばれるタイムスタンプをメタデータとして保持しています。これは Modified, Accessed, Changedの頭文字をとったものです(*1)。この情報を調べることによって、いつどのファイルにどのような処理が行われたのか、おおよそのことがわかります。外部からの不正アクセスや内部犯行、マルウェア感染などの事象が発生した場合、対象システムのファイルシステムには何らかの痕跡が残ります。タイムライン解析を行うことによって、何が起きたのか、影響範囲はどの程度かを推測し、その後の調査や対応に役立てることができます。

第77号コラム「リスクコミュニケーションとマスメディア」

第77号コラム:舟橋 信 氏((株)NTTデータ・アイ 顧問、IDF理事)
題:「リスクコミュニケーションとマスメディア」

最初に、リスクの概念等について、述べたいと思います。

国際規格(ISO/IEC Guide 51:1999)において、リスク(Risk)は、人の健康、資産及び環境に対して危害や被害(Harm)を与える可能性(Probability)とその重大性(Severity)の組み合わせ(Combination)として定義されております。

その語源は、オンライン語源辞書(Online Etymology Dictionary)等によりますと、ラテン語のriscumが基となり、イタリア語で「危険を冒す」と言う意味のriscareから、riscio(現代語イタリア語:rischio)、riscoと言った言葉を経てフランス語のrisqueとなり、17世紀中葉に英語に移入されてrisqueとなったようです。なお、参照する辞書や論文により、前記の綴りが異なっている場合がありますが、ここでは、今回参照した辞書等の綴りを使用します。

リスクと言う概念は、Deborah Luptonの著書「RISK」(1999年)によれば、中世において、航海の危険性、いわゆる神の行為(act of God)に対する海上保険に関連して使われ、数世紀を経て、現在用いられているように、災害、感染症、犯罪、投資などの様々な分野において用いられるようになってきたところです。

最近の大きなリスク要因は、新型インフルエンザではないかと思いますので、「マスク」の話題を取り上げ、関係官庁と国民とのリスクコミュニケーションの問題について考察したいと思います。

第76号コラム「科学的証拠とデジタル・フォレンジック」

第76号コラム:安冨 潔 副会長(慶應義塾大学大学院 法務研究科、IDF副会長)
題:「科学的証拠とデジタル・フォレンジック」

1990年に発生したいわゆる足利事件では、当時導入されて間がないDNA型鑑定の結果が有力な有罪証拠として無期懲役が言い渡されたのですが、当時の鑑定結果と異なる再鑑定結果によって再審が行われることとなったことは周知のことです。この事件は、有罪判決を受けて服役したS氏にとって取り返すことのできない極めて重大な人権侵害を引き起こしたというだけでなく、刑事裁判における科学捜査のあり方と収集された証拠の評価について考えなければならない問題を提起しました。

そもそも、刑事裁判において、鑑定試料の収集・保管と分析が適切になされなければ、証拠としての価値はないのですが、科学技術を用いた捜査ということで自白や供述よりも信用できると捜査機関や裁判所が過信してしまう危険がないわけではありません。このことは、デジタル・フォレンジックという科学捜査の手法が定着しつつあるなかで,今後,ますますデジタル証拠の重要性が増すと考えられるだけに、デジタル・フォレンジックを活用する上で、留意しておかなればならない関心事ではないでしょうか。