第21号コラム「ニーズとシーズ、目的と手段」

第21号コラム:丸山 満彦 監事(監査法人トーマツ パートナー、公認会計士)
題:「ニーズとシーズ、目的と手段」

ニーズとシーズ
いろいろな定義の仕方があると思いますが、需要者が望んでいるものを「ニーズ」、提供者が有しているものを「シーズ」ということにしましょう。ニーズとシーズが一致すれば交換が成立することになります。例えば、「楽して洗濯をしたい」というニーズに対して、「電気で洗濯ができる機械をつくれる」というシーズがあればそこで「電気洗濯機」というものを通じてニーズとシーズが一致し、交換が成立します。シーズを中心に考えるのをプロダクトアウトの発想という場合もあります。「電気洗濯機を作れる。世の中には、楽して洗濯したいニーズがきっとあるはずだ。だからきっとこれは売れる」。一方、ニーズを中心に考えるのがマーケットインの発想といえるでしょう。「楽して洗濯したい」というニーズを把握してから、「それなら電気洗濯機というものを売ろう。そのためには電気洗濯機を作らないといけない。」という考え方です。需要者側のニーズが大きい場合にはプロダクトアウト型つまり、シーズ中心のビジネスが成り立ちやすくなります。一方、需要者側のニーズに比べると供給者側のシーズが多い場合には、マーケットイン型つまり、ニーズ中心のビジネスが成り立ちやすくなります。例えば、マーケットが非常にセグメント化されている場合などは、そのニーズにマッチしなければ、非常にすばらしいシーズがあったとしてもビジネスとしては成り立ちにくいことになります。最近では、マーケットイン型のビジネスが持ち上げられている嫌いはありますが、マーケットイン型のビジネスが良くてプロダクトアウト型のビジネスが悪いと言うわけではありません。非常に有益なシーズがある場合は、むしろプロダクトアウト型でマーケットを作っていくということも可能です。重要なことは、需要と供給のバランス、ニーズとシーズの強さのバランスや社会的な必要性のバランスを見極めながらビジネスを展開していくことです。

第19号コラム「ユビキタス・ネットワーク社会におけるデジタル・フォレンジックへの期待」

第19号コラム:安冨 潔 副会長(慶應義塾大学大学院法務研究科 学部教授、弁護士)
題:「ユビキタス・ネットワーク社会におけるデジタル・フォレンジックへの期待」

わが国は,明治維新を契機として,農業社会から工業社会へと移行し,第2次世界大戦の終戦を機に,さらに大量生産型の工業社会を急速に発展させ,米国に次ぐ経済大国に成長した。こうした状況にあって,1960年代に始まったコンピュータや通信技術の急速な発展とともに世界規模で進行するIT(情報技術)革命は,18世紀に英国で始まった産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらした。産業革命では,蒸気機関の発明を発端とする動力技術の進歩が世界を農業社会から工業社会に移行させ,個人,企業,国家の社会経済活動のあり方を一変させたが,インターネットを中心とする情報技術の進歩は,情報流通の費用と時間を劇的に低下させ,髙密度の情報の流通を容易にすることにより,人と人との関係,人と組織との関係,人と社会との関係を1変させることとなった。そして,今後,世界は知識の相互連鎖的な進化により高度な付加価値が生み出される知識創発型社会に急速に移行していくと考えられる。そうしたなかでわが国が引き続き経済的に繁栄し,国民全体の更に豊かな生活を実現するためには,情報と知識が付加価値の源泉となる新しい社会にふさわしい法制度や情報通信インフラなどの国家基盤を早急に確立する必要がある。