第150号コラム「コミュニケーションギャップとデジタル・フォレンジック」

第150号コラム:秋山 昌範 理事(東京大学 政策ビジョン研究センター 教授)
題:「コミュニケーションギャップとデジタル・フォレンジック」

 東北関東大震災により被災された皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。

1)立場による視座の違い
 さて、現在の我が国は厳しい財政事情下にあり、超高齢化社会を迎えた社会保障改革は大きな課題である。そこで、医療の仕組みも改良する必要があるが、その過程で医療関係者だけでなく、患者からも一般国民からも信頼を得ることが必須であり、客観的なデータに基づく議論が必要である。またそのデータは正確であることが前提である。関係するステークホルダにとって、医療費の値上げ等、将来の見直しは、それぞれ痛みを伴いものになる可能性が高いため、継続的再評価(自己評価、客観評価)が必須であり、そこには信頼性が伴わなければならない。医療提供側の医療機関と患者・国民側には、その認識に大きなギャップがある。また、医療提供側間にも、医師、看護師、薬剤師やその他のコメディカル間にも、認識にギャップがある。これらは、それぞれの立場で得られる情報の量(広さ)や質(深さ)に差があることに起因している。そのために、それぞれの立場間の視座の違いを認識していないと、不毛な対立を生むことになり、改革が進まない。

第147号コラム「二つの最高裁判例に見る動画配信」

第147号コラム:須川 賢洋 理事(新潟大学 大学院現代社会文化研究科・法学部 助教)
題:「二つの最高裁判例に見る動画配信」

 今回は、ネットを利用した動画(テレビ番組)の録画・配信と著作権について思うところを書いてみたい。

 さる1月18日、20日と最高裁判所は、ネットワーク上でのテレビ放送の再送信や録画に関して立て続けて判断を示した。一つは「まねきTV事件」(平成23年1月18日)であり、もう一つは「ロクラクII事件」(平成23年1月20日)である。どちらも原判決を破棄し、知財高裁に審議を差し戻している。

 これらはどちらも、客から預かった地上アナログ放送の受信機械を都内に置き、ネットワークを通して客先に視聴させるサービスである。利用者はリモートで機械を操作し番組を視聴する。海外赴任者や地方居住者にはニーズがある故、ビジネスとして成立する。「まねきTV」は市販されているソニーの「ロケーションフリー」を大量に預かり設置しサービスを提供するものである(注:ロケーションフリーには録画機能はない)。また、「ロクラクII」はインターネット通信機能を有するHDDレコーダで親機(会社側設置)と子機(ユーザ側設置)からなるものである。

第145号コラム「公開メールデータ」

第145号コラム:芝 啓真 幹事((株)フォーカスシステムズ フォレンジックセキュリティ室)
題:「公開メールデータ」

「エンロン事件」をご存じの方は多いと思います。総合エネルギー取引とITビジネスを行っていたエンロン社が、不正経理・取引が発覚したことにより、2001年12月に破たんした事件です。事件の詳細はここでは省略させて頂きますが、ワールドコムの事件と合わせて、上場企業会計改革および投資家保護法(通称SOX法)が制定される要因の一つとなり、また同社の不正に関わっていた大手監査法人アーサー・アンダーセンが解散するなど、多大な影響を及ぼした事件です。(およそ10年前の事件になることをあらためて知り、時の流れの早さを実感しました。)

また、このコラムをご覧になられている方の中には、EDRM(The Electronic Discovery Reference Model)をご存知の方もいらっしゃるかと思います。eDiscovery(電子情報開示)における処理フローのガイドラインを示すものです。このガイドラインはhttp://edrm.net/にて公開されていますが、このサイトでは、eDiscoveryを効率よく進めるためにいくつかのプロジェクトが行われています。これらプロジェクトは、複雑なeDiscovery処理フローをある程度標準化し、処理の品質を高め、eDiscoveryにかかるコストを削減することを目的としています。