第144号コラム「クラウド時代のセキュリティの真実~AWS最新動向から見る現実解~」

第144号コラム:熊平 美香 監事(一般財団法人クマヒラセキュリティ財団 専務理事)
題:「クラウド時代のセキュリティの真実~AWS最新動向から見る現実解~」

昨年秋に、AWS(アマゾンウェブサービス)のJeff Barr氏を講師に招き、クラウド時代のセキュリティをテーマにセミナーを開催致しました。企業のセキュリティ担当者やセキュリティの専門家など全部で136名の方にお集まりいただきました。Jeff Barr氏は、技術的な専門性が高く、AWS に精通している一方で、対象者の専門性や興味・関心に合わせて、『言語』を変えて話すことができるAWS のエバンジェリストです。現在は、世界中を回り、AWS の競争優位性や特徴を、経営者や技術専門家に対して『言語』を使い分け、解説されているそうです。講演では、セキュリティの専門家の『言語』でお話し頂きました。

Jeff Barr氏の講演を聞いて一番驚いたのは、「安全性」を実現しながらも、アマゾンの「顧客中心」という企業方針が、クラウド・コンピューティングサービスにも生かされているという点です。アマゾンがこのサービスを企業に提供し始めたのは2006年ですが、初期設計段階からセキュリティを設計に組み入れていました。システムを使うユーザーが最初から独立した形で保護されるという安全性を実現することが、顧客にとって最重要課題であり、セキュリティを保証するためには、セキュリティを後付けにするのではなく、システム設計の初期段階から設計に組み入むことが不可欠であるという認識からです。

第143号コラム「デジタル・フォレンジックと外科」

第143号コラム:和田 則仁 理事(慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科 助教)
題:「デジタル・フォレンジックと外科」

 医療には不確実性があります。患者さんにはなかなか理解しにくいことかもしれませんが、最善を尽くしても良くない結果が起きることがあります。すなわち同じような治療を行っても結果は同じとは限らないのです。

 外科手術には微妙なことが多く、例えば、切開するラインが1mmずれるだけで、癌を取り残すことになったり、逆に正常な組織を損傷したりすることもあります。薬物療法であれば、処方箋は教授が書いても研修医が書いても出てくる薬は同じですが、手術はそうはいきません。やはり技術や経験の差が結果に出ることがあります。外科医は手術がうまくなりたいので、日々手技の向上を目指して研鑽に努めます。手術のビデオを撮影することもありますが、それを後から見なおして、「この場をこう展開していれば、もっと効率的にできたな」とか、「もう少しこっちを切れば出血が防げたな」というふうに、今後の自分の手術へのフィードバックを考えます。特に結果が悪かった場合は、いろいろと勉強して、どうすれば良かったかを真剣に考えます。このようにして経験を積んで、専門医を取得し、質の高い手術を行ったとしても、合併症のような患者さんにとって好ましくないことはある一定の確率で起きます。治療で治る合併症もありますが、後遺症として後に症状を残すものもあります。そのようなときは、患者さんも辛いわけですが、われわれ外科医も悩みます。やはり「あの時こうしていれば…」などと考えるわけです。医療の結果は、治療の内容だけではなく、患者さんの病状や環境因子など様々な要因が影響して決まるので、どのようにやっても結果がどうなるかはわからないので、悩んでも仕方ないのですが、でも「しょうがない」で片づけることはできません。このように医療の不確実性は避けられないのが現実なのです。

第140号コラム「個人情報を大切にする仕組み」

第140号コラム:秋山 昌範 理事(東京大学 政策ビジョン研究センター 教授)
題:「個人情報を大切にする仕組み」

 現在の国民皆保険は、丁度半世紀前の1961年(昭和36年)に達成された。その後も、日本の医療は機能分化せず、長期間病院と診療所の区別しかなかった。本来ならそこから福祉的な分野の介護と、予防医学的な部分、クリニック的な部分、専門医療的な部分という4つのドメインに分化していくことを考える方策も考えられたが、政府がとった政策は、医療費抑制のために総病床数を減らそうというものだった。一方、病院には、自治体病院、国立・私立病院などがあるが、特に自治体病院では、その頃、多くの院長に権限がなかった故に経営感覚も不足しており、時間単価の高い医師に雑用が多いという現状であった。近年の医療制度改革で、経営学的に生産性を上げる必要が増加した。そのために、医師に事務的なことを受け持つクラーク(事務員)をつければよいとよく言われる。しかし、クラークをつければ、単純に生産性が向上するというものでもない。医療は市場経済ではなく、事実上、計画経済によって運営されているからである。このような医療制度の見直しが必要になっている中で、効率性のみではなく、医療の質的維持が図られる仕組みも重要である。そのためには、正しい医学的評価や医学研究ができる必要がある。