第308号コラム「標的型攻撃には内部不正対応が重要?」

第308号コラム:丸山 満彦 監事(デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 代表取締役社長、公認会計士、
公認情報システム監査人)
題:「標的型攻撃には内部不正対応が重要?」

今回は、内部不正対策の重要性を説明し、いわゆる標的型攻撃にたいして内部不正対策が重要であることを説明したいと思います。

従業員による金銭の横領、重要な技術情報や営業秘密の横流し、個人情報の売却など、従業員による不正は、従来から一定の割合で起こっています。私は職業柄、そのような内部者の不正に関係する仕事に関わることがたびたび有りましたが、会社が十分な内部不正対応をしていれば防げた場合がほとんどでした。つまり、会社の内部不正対応の不備が従業員による内部不正の温床になっているともいえるのです。

内部不正は、
1.機会 (不正行為ができる職場環境)
2.動機 (不正行為をしようとする本人の事情)
3.正当化 (不正行為を是認しようとする本人の事情)
の3つの要因がすべてそろった場合に起こりやすくなると、いわれています。これは、クレッシー(Cressey, Donald Ray, 1919-1987)が実際のホワイトカラー犯罪者に対して調査をして得た「不正のトライアングル理論(the theory of the “fraud triangle”)」といわれているものです。さすがに、理論的に実証的に分析し、論理的に整理されたものですから、不正の分析の多くの場面でこの考え方は有効だと思っています。

第307号コラム「尸位素餐(しいそさん)とは?―ビッグデータ時代の日本語の論理性と国際性」

第307号コラム:辻井 重男 顧問(中央大学研究開発機構 教授)
題:「尸位素餐(しいそさん)とは?―ビッグデータ時代の日本語の論理性と国際性」

このところ、NHKから「第2次大戦と暗号」について取材を受けている。我々、暗号研究者は、1970年代以降の、情報社会の基盤としての暗号を現代暗号と呼び、20世紀前半までの軍事・外交用暗号を古典暗号と呼んで区別している。

2016年からマイ・ナンバーの使用も始まり、本人確認やデジタル署名の基盤性は増すばかりだから、公開鍵暗号を初めとする現代暗号についても、メディアの関心を期待したいのだが、そうはいかないのが悩ましいところだ。

それはさておき、改めて古典暗号関連の資料を読み直してみると、それはそれで、これからの日本再生に向けて考えさせられることも多い。
冒頭にあげた「尸位素餐」という言葉をご存知だろうか。私も最近、小松啓一郎著「暗号名はマジックー太平洋戦争が起こった本当の理由」で初めて知ったのだが、「尸位素餐」とは、「高い官位にありながら、満足に職責を果たさず、給料だけを貰っていること」だそうである。
昭和16年(1941年)12月8日の真珠湾攻撃に始まる日米開戦を回避すべくアメリカとの折衝に当たっていた、野村吉三郎駐米大使は、遅々として進展しない外交交渉に失望し、「このまま、成果が挙がらないのに、給料を貰い続けるのは、心苦しいので、辞任したい」という気持ちを「尸位素餐」の四文字に託して、米国から日本に向けて暗号電文で送信したのである。この電文を傍受した、米国の暗号解読者は、日本人でも分からない漢語が分かる筈もなく、別の意味にすりかえて、米国政府に報告したのである。
これは一例であるが、暗号解読はできても、その翻訳ができず、好戦的に解釈された事例が多かったようである。こうした誤訳の積み重ねがなければ、日米開戦は避けられたかも知れないと、上記の著者は述べている。

第306号コラム「2014年度の研究会活動に向けて」

第306号コラム:佐々木 良一 会長(東京電機大学 未来科学部 情報メディア学科 教授)
題:「2014年度の研究会活動に向けて」

この4月からデジタル・フォレンジック研究会の活動も第11期となります。10期では10周年記念ということで、通常の活動に加え、次のような活動を実施してきました。

(1)「改訂版デジタル・フォレンジック事典」の出版(2014年4月下旬発刊予定)

(2)10周年記念式典の実施(2013年8月23日)

(3)功労者表彰の実施(2013年8月23日)

デジタル・フォレンジック研究会のこのような活動は世間の注目を浴びるようになっていき、2013年のデジタル・フォレンジック・コミュニティの参加者は328人を数えるまでになっていきました。また、デジタル・フォレンジックという言葉は、広く使われるようになり、一般のセキュリティ技術者が「フォレンジックする」というようなことを言うようになってきています。遠隔操作ウイルス事件の法廷でも「ファイルスラック領域」のようなデジタル・フォレンジックの専門用語が飛び交うようになっています。NISCのセキュリティ技術戦略の中にも重要技術の1つとしてしっかり位置づけられています。したがって、デジタル・フォレンジック研究会の重要性もますます増大していくとも考えられます。

第305号コラム「改訂版デジタル・フォレンジック事典の出版について」

第305号コラム:舟橋 信 理事(株式会社UBIC 取締役)
題:「改訂版デジタル・フォレンジック事典の出版について」

 デジタル・フォレンジック研究会は、2006年12月20日、デジタル・フォレンジックの啓発・普及を図るため、和書では国内初の専門書として「デジタル・フォレンジック事典」を日科技連出版社から出版いたしました。初版本は、発行から既に7年が経過しておりますことから、デジタル・フォレンジック研究会の設立10周年記念行事の一環といたしまして、「改訂版 デジタル・フォレンジック事典」を日科技連出版社から出版することといたしました。発売開始は4月下旬の予定です。発売につきましては、別途、事務局からご案内させていただきます。

 この度の改訂では、「第Ⅰ部 基礎偏」と、「第Ⅱ部 応用編」の2部構成といたしました。基礎編は、初学者向けにデジタル・フォレンジックの基礎的事項を取り上げております。応用編は、研究者や実務者に役立つ内容としております。付録では、2012年10月に公開されました国際規格、デジタル・フォレンジック研究会が公開しております証拠保全ガイドライン、および、デジタル・フォレンジックと近い関係にあるデータ復旧などをご紹介しております。

 また、改訂版では、この7年間のデジタル・フォレンジックに関係する法律の改正や関連技術の発展などを盛り込んでおります。