第193号コラム「クラウドの諸問題を今一度考えてみる」

第193号コラム:須川 賢洋 理事(新潟大学大学院 現代社会文化研究科・法学部 助教)
題:「クラウドの諸問題を今一度考えてみる」

今回のコラムは、拙稿コラム147号「二つの最高裁判例に見る動画配信」の続きでもある。この時に筆者はテレビ番組をネットを通じて地方や海外などに配信する事業の判例に関して、「番組のネット配信だけに限った問題のようにも思えるが、今後、各種クラウド事業や書籍の電子化代行サービスなどにも影響を与える可能性を秘めている。」と書いた。たまたま同様のことを問題提起した記事が、先日(2012年1月9日)の日本経済新聞の法務面にも載っていた。

ネットワークを利用したコンテンツ配信関連の事件は、ずっと単なる著作権侵害(公衆送信権侵害や複製権侵害など)の成立の有無に関する事件としてだけ捉えられてきたが、ここに来て、「クラウド」というキーワードと共に、再評価(評価というより検討か?)されるようになってきている。ネットワーク上に滞留させたコンテンツを利用するという行為が、今でいう「クラウド・サービス」と特性がたまたま一致したせいであるのだが…。それ故、知財、とりわけデジタル著作権の世界では、まだクラウドという言葉が使われる遥か以前から、ネット空間からコンテンツが降ってくる際の法律問題についていろいろと議論されてきた。

第191号コラム「原発事故は「水に流す」な」

第191号コラム:林 紘一郎 理事 (情報セキュリティ大学院大学 学長)
題:「原発事故は「水に流す」な」

3.11の東日本大震災の事故を、大規模な自然災害にとどまらず歴史に残る大惨事にしたのは、東京電力福島第一原子力発電所の放射線事故であった。その原因究明に当たっていた政府の事故調査委員会は、暮れも押し迫った12月26日に中間報告書を公表した。その内容は未だ確定できない部分(たとえば、津波だけが放射線事故の直接的原因なのか、それとも地震そのものも原因の1つなのか)がかなり残されているが、大筋は押えていて、委員会が精力的に調査・分析をしたことが伺える。

この委員会の長を勤めているのは、「失敗学」の提唱者として有名な畑村洋太郎氏(東大名誉教授)である。失敗学は、従来の学問がすべて「成功学」であったことを逆転させる発想で、私が関係している情報セキュリティなどでは、不可欠の発想法である。しかし、残念なことに「情報の公開」を制度的に保障するという伝統を持たない我が国では、分析に必要な事故情報が集まらないことから、失敗学会もできたが期待されたほどの成果を挙げていない。そこで今回のお役目は、同氏にとって「起死回生のチャンス」と思われ、分析に力が入っているのも頷ける。

第190号コラム「新しい年を迎えて」

第190号コラム:佐々木 良一 会長(東京電機大学 未来科学部 情報メディア学科 教授)
題:「新しい年を迎えて」

新しい年2012年を迎えました。2011年はまさに激動の年でした。「東日本大震災」は、大地震、津波、原子力発電所事故と連鎖的に発生し大きな被害を与え、今も「あけましておめでとう」等とは言いにくいような爪痕を残しています。

セキュリティ関係でもいろいろなことがありました。新しいタイプの攻撃が広がり、従来の対策では守りきれないような状況になってきています。このため、ネットワーク関連のログを保存し利用するネットワーク・フォレンジックの重要性が認識されるとともに、サーバなどのログとの相互関連を早急に確認できるシステムの必要性も増大してきています。また、従来のデジタル・フォレンジックがいよいよ実用段階に入ったなというのを強く感じます。個人情報の漏えいに関連して漏洩事実や漏洩経路を明確化するために民間でも専門業者に依頼してデジタル・フォレンジックを適用する機会が増えてきているように思います。さらに、デジタル・フォレンジックの専門家でない情報セキュリティ技術者がデジタル・フォレンジックに興味を持ちはじめ、昨年9月に「デジタル・フォレンジック製品&トレーニング概要説明会」を実施したところ多くの方々に参加いただきました。