第192号コラム:山田 晃 理事(株式会社サイバーディフェンス研究所 情報分析部
上級分析官)
題:「デジタル・フォレンジックに係る国際会議の開催状況等」

最近、日米だけでなく、世界的に「デジタル・フォレンジック」が高い注目度を得ている中、国際会議が頻繁に開催されるようになりました。長いものでは10年以上、年次会合を開催し続けている組織もあり、年々増加しています。デジタル・フォレンジックについて、専門家・非専門家が一堂に会して議論を繰り広げることは、大いに歓迎されるべきことであり、今後、更に多くの議論の場が誕生していくことを願ってやみません。
そこで、ここ数年間に開催されている、デジタル・フォレンジックをテーマに含んだ国際会議・イベント等を調査してみました。これで全部という訳ではありませんが、今後の動向を観察していく上でも、いい材料を提供してくれる可能性があります。(開催回数が多いものについては直近の数回分を掲載)

1 「Digital Forensic Research Workshop(DFRWS) Annual Conference」
政府機関、産業界、学術界等のデジタル・フォレンジック研究者が研究内容や成果を発表し、共同研究等の機会に繋げるための場を提供する年次会合。参加者数は100名程度と比較的少なく、プレゼンに関して議論するための分科会を設置するなど、参加者同士のコミュニケーションが活発である。
(詳細: http://www.dfrws.org/index.shtml
・第12回 2012年8月6~8日、ワシントンDC、米国
・第11回 2011年8月1~3日、ニューオーリンズ、米国
・第10回 2010年8月2~4日、ポートランド、オレゴン、米国
・第9回 2009年8月17~19日、モントリオール、カナダ

2 「Annual IFIP WG 11.9 International Conference on Digital Forensics」
デジタル・フォレンジックの分野における最先端の研究及び実務を推進する役割を担う科学者、技術者、弁護士等から成る国際的なコミュニティが主催する年次会合。5年前に京都で初めて開催されたことは記憶に新しい。
(詳細: http://www.ifip119.org
・第8回 2012年1月3~5日、プレトリア大学、南アフリカ共和国
・第7回 2011年1月30日~2月2日、セントラルフロリダ大学、米国
・第6回 2010年1月3~6日、香港大学、香港
・第5回 2009年1月25~28日、セントラルフロリダ大学、米国
・第4回 2008年1月27~30日、京都大学

3 「ADFSL Conference on Digital Forensics, Security and Law」
Association of Digital Forensics Security and Law(ADFSL)が主催する年次会合。デジタル・フォレンジック及びそのセキュリティや法律との関係性に関する研究動向等を発表・議論する場を、デジタル・フォレンジック、セキュリティ、法律等に関する研究・授業を行う研究者に対して提供している。
(詳細: http://www.digitalforensics-conference.org/
・第7回 2012年5月30~31日、リッチモンド、バージニア、米国
・第6回 2011年5月25~27日、リッチモンド、バージニア、米国
・第5回 2010年5月19~21日、セントポール、ミネソタ、米国

4 「Computer Enterprise and Investigation Conference (CEIC) 」
法執行機関、政府機関、企業、法務、IT等から参加者が集い、デジタル捜査分野における最新の話題を議論するための国際的な年次会合。産業界の専門家、弁護士、スポンサー等が毎年参加し、高品質な教育プログラムを提供する他、人的ネットワークを広げられる機会を与えている。 Guidance Software主催。
(詳細: http://www.ceicconference.com/
・第12回 2012年5月21~24日、ラスベガス、ネバダ、米国
・第11回 2011年5月15~18日、オーランド、フロリダ、米国
・第10回 2010年5月24~27日、ラスベガス、ネバダ、米国

5 「IT SECURITY AND FORENSICS CONFERENCE AND EXPO」
フォレンジック、セキュリティ、データ管理、情報管理、サイバー犯罪、e-Discovery、クラウドのフォレンジック、電子透かし、プライバシー、ワイヤレスのセキュリティ、ID窃盗等、幅広い分野での議論の場を提供。
(詳細:http://www.cpd.iit.edu/forensecure
・第10回 2012年4月19~20日、ウィートン、イリノイ、米国
・第9回 2011年3月24~25日、ウィートン、イリノイ、米国
・第8回 2010年3月4日、ウィートン、イリノイ、米国

6 「Paraben’s Forensic Innovations Conference」
米国のParaben社が主催する会議。デジタル・フォレンジック分野の専門家が集い、最新技術動向を話し合うための会議の場と、各種研修プログラムも提供している。
(詳細: http://www.pfic-conference.com/
・第6回 2012年11月3~7日、パークシティ、ユタ、米国
・第5回 2011年11月5~9日、パークシティ、ユタ、米国
・第4回 2010年11月7~10日、パークシティ、ユタ、米国

7 「Euro Forensics, Digital & Medical Forensic Sciences Conference」
産業界のリーダー、学者、最先端企業等が一堂に介して、ビジョンやアイディア、製品情報、将来の開発計画等を共有するための場。政府機関や法執行機関、サイバー犯罪捜査官、医療フォレンジック専門家等を中心にフォレンジック科学のみを扱う会議として設立されたもの。
(詳細: http://euroforensics.com
・第3回 2012年3月29~31日、イスタンブール、トルコ
・第2回 2011年3月24~26日、イスタンブール、トルコ
・第1回 2010年3月26~28日、イスタンブール、トルコ

8 「Information Hiding Conference」
電子透かしやステガノグラフィー等、情報(デジタル著作権)を保護、又は秘密を隠すために使われる技術に関する調査研究を通じて得られた知見を、捜査官や研究者、専門家が共有し、これらのデータを扱うための理解を深める場を提供する会議。
(詳細: http://www.ihconference.org/
・第14回 2012年5月15~18日、バークレイ、カリフォルニア、米国
・第13回 2011年5月18~20日、プラハ、チェコ
・第12回 2010年6月28~30日、カルガリー、カナダ
・第11回 2009年6月8~10日、ダルムスタット、ドイツ

9 「International ICST Conference on Digital Forensics & Cyber Crime (ICDF2C)」
様々な分野の弁護士や研究者を一堂に集め、参加者間のビジネスや文化交流の機会を与えるための会合。基礎及び応用フォレンジック技術やサイバー犯罪捜査手法の専門家によるスピーチや世界中の研究者から寄せられる最新の成果から学べる機会を提供している。Institute for Computer Sciences, Social Informatics and Telecommunications Engineering(ICST)主催。
(詳細: http://d-forensics.org/2012/
・第4回 2012年10月23~25日、ラファイエット、インディアナ、米国
・第3回 2011年10月26~28日、ダブリン、アイルランド
・第2回 2010年10月4~6日、アブダビ、アラブ首長国連邦
・第1回 2009年9月30日~10月2日、オルバニー、ニューヨーク、米国

10 「Techno Forensics & Digital Investigations Conference」
産業界、学術界及び政府の主要なステークホルダーを集め、重要な技術、研究分野、コミュニケーション網を強化するための定例イベント。
(詳細: http://www.techsec.com/html/TechnoForensics2011.html
・第7回 2011年10月31日~11月1日、マートルビーチ、サウスカロライナ、米国
・第6回 2010年10月25~26日、ゲイサースバーグ、メリーランド、米国
・第5回 2009年10月26~28日、ゲイサースバーグ、メリーランド、米国

11 「Mobile Forensic Conference」
モバイル機器専門の会議で、米国内の国、州、地方機関のフォレンジック専門家、企業のフォレンジック技術者、産業界のリーダー、学術界のフォレンジック研究者等を対象としている。携帯機器のフォレンジック、SIM/USIMカードの解析、モバイル機器専用フォレンジックアプリケーション、モバイルフォレンジックの研究等について討議される。
(詳細: http://www.techsec.com/html/MFC-2012-Spring.html
・第2回 2012年6月3~6日、マートルビーチ、サウスカロライナ、米国
・第1回 2011年6月5~8日、マートルビーチ、サウスカロライナ、米国

12 「Open Source Digital Forensics Conference」
オープンソースのデジタル・フォレンジック・ソフトウェアの開発者及び利用者で構成するフォーラムを提供し、お互いに学び、交流する場を提供する会合。デジタル捜査官が新しいツールを習得し、ツール開発者に直接、フィードバックする場にもなっている。更に、コードや関連文書の作成、テストを実施するボランティアを募ることもできる。Basis Technology主催。
(詳細:http://www.basistech.com/about-us/events/open-source-forensics-conference/
・第2回 2011年6月14日、マクリーン、米国
・第1回 2010年6月9日、シャンティリー、米国

13 「BIT’s Annual World Congress of Forensics」
世界中の専門家に、フォレンジック捜査及び解析に関する共通の問題を共有し、議論する機会を提供する会合。フォレンジック科学を駆使した犯罪捜査を助長する最先端技術について学ぶことができる。BITeomics, Inc主催。
(詳細:http://www.bitlifesciences.com/wcf2011/
・第2回 2011年10月15~18日、重慶、中国
・第1回 2010年10月21~23日、大連、中国

14 「International Conference on Cybercrime, Security & Digital Forensics」
デジタル機器や、コンピュータが関与する犯罪や侵入行為の捜査に関して、不正な活動が行われた証拠を確保するという立場を考慮しつつ、この分野の様々な、現代の全体像について話し合われる会議。
(詳細:http://www.cyberforensics.org.uk/
・2012年5月14~15日、東ロンドン大学、ロンドン、英国
・2011年6月27~28日、ストラスクライド大学、グラスゴー、英国

その他にも、今後継続的に開催されていくことが予想される会議、単発で終了している会議等が幾つか存在しています。
○ 「The International Conference on Cyber Security, Cyber Warfare and Digital Forensics」
(詳細:http://www.sdiwc.net/CyberSec2012/page.php?id=2 )
・2012年6月26~28日、クアラルンプール、マレーシア
○ 「IEDF 2011 – 1st International Workshop on Digital Forensics」
(詳細: http://iwdf.org/ ※リンク切れ)
・2011年11月4~6日、上海、中国
○ 「e-Discovery & Digital Forensics」
(詳細: http://innoxcell.net/events/e-discovery2010/ )
・2010年7月7~8日、香港
○ 「China Computer Forensics Conference & Exhibition 2009」
(詳細: http://www.h11-digital-forensics.com/china-computer-forensics-conference.php ※リンク切れ)
・2009年12月6~8日、中国

今後も増えてくることが予想されますので、引き続きウォッチしていきたいと思います。近い将来、IDFの活動を紹介するようなフェーズが生まれることを期待したいと思います。

【著作権は山田氏に属します】