第59号コラム「デジタル・フォレンジックのオープンソースソフトウェア The Sleuth Kit開発者 (Brian Carrier)へのインタビュー」

第59号コラム:竹崎 紀子 氏(ベイシス・テクノロジー株式会社)
題:「デジタル・フォレンジックのオープンソースソフトウェア The Sleuth Kit開発者 (Brian Carrier)へのインタビュー」

IDF会員の皆様にはすでにおなじみの方も多くいらっしゃると思いますが、デジタル・フォレンジックのオープンソースツールの草分け的存在として、The Sleuth Kit (「ザ・スルース・キット」と発音)というファイルシステム調査用のソフトウェアライブラリ(コマンドラインツール)があります。このThe Sleuth KitならびにそのGUI(グラフィカル・インターフェース)であるAutopsy を開発したBrian Carrier (現 Basis Technology Corporation勤務)に、デジタル・フォレンジックの米国での動向や今後の展望などについてインタビューしてみました。

http://www.sleuthkit.org/

http://www.basistech.co.jp/management/  (一番下にBrian の紹介があります。)

竹崎: The Sleuth Kit を開発したきっかけは? USではこの分野の研究は盛んなのか?

Brian: 今は大学でデジタル・フォレンジックを勉強できるところがでてきたが、私が大学生、大学院生のころはこれを勉強できるところはなかった。個人的興味でデジタル・フォレンジックの研究を始め、それがThe Sleuth Kit の開発に発展した。もともとはThe Coroner’s Tool Kit というデジタル・フォレンジックのオープンソースソフトウェアがあって、それに機能追加をして発展させたので、このThe Coroner’s Tool Kit との出会いがきっかけだったと言える。今のThe Sleuth Kitには、もうThe Coroner’s Tool Kitのオリジナルのソースコードはほとんど残っていないが。

第58号コラム「不正をさせない」

第58号コラム:丸山 満彦 氏(監査法人トーマツ パートナー  公認会計士)
題:「不正をさせない」

情報化社会の進展とともに、不正調査におけるデジタル・フォレンジック技術の重要性が増しています。しかし、今回は不正が起こってからの不正調査ではなく、不正をさせないための話をしたいと思います。デジタル・フォレンジックとは直接関係ないかもしれませんが、少しお付き合いください。

私が、不正を発見した時の話です。帳簿上の数字と実際の現金残高が一致していないことから問題が発見されました。一見数字は一致していたのですが、必要な修正仕訳を入れると一致しなくなり、不正が明らかになりました。一致していなかった数字は約7万円。支店で経理業務を行っていたベテラン社員が不正を働いていました。不正を行ったきっかけは、友人に立て替えてもらった息子のランドセル代を返すために銀行に行くことを忘れたことでした。その日は金曜日であったこともあり、返済が月曜日になっては悪いと思い、会社のお金を少しばかり借りて友人に立て替えたお金を返しました。月曜日にはすぐに銀行にいってお金をおろし、会社に戻しました。銀行が支店から遠いこともあって、その担当者はしばしば、会社のお金を借りては返すということを繰り返すようになってしまいました。そのうち、会社から借りているお金を返すのが遅れるようになりました。そのタイミングで監査があり、会社のお金を使い込んでいたということになってしまいました。
性善説か性悪説か。個人情報保護法の対応、内部統制報告制度の対応がきっかけとなって多くの人が語るようになった言葉です。私は、性善説、性悪説といった単純化した議論は好きではありません。実際に不正を見つけたり、その渦中に身をおいたものであれば、人間が善か悪か、単純に分けることができないことはわかってもらえると思います。

第57号コラム「続・米国フォレンジックe-Discoveryの現状」

第57号コラム:池上 成朝 氏(株式会社UBIC 取締役/UBIC North America, Inc.)
題:「続・米国フォレンジックe-Discoveryの現状」

前回はe-Discovery対応のここ数年間に渡る変化について主に記述しましたが、今回は前回トピックに挙げた技術や文書管理技術をさらにもう一段階掘り下げて考えてみます。

引き続き技術革新の中心はいかに大量の電子データの中から真に争点に関連する文脈を正確に早く捜し出すかに集中しています。前回紹介した重複除外技術も既にハッシュ値を用いた完全一致は当然のこと、より近い意味の文章、文節を重複文書として認識する技術も標準搭載的な機能となってきています。我々が想像する以上の速度で文書内容を自動判別する技術が応用されている事を示す一つの良い例だと考えます。

1)インデックスを応用した技術
最近出てきた手法で、インターネット世界と結び付けて、意味の似た単語を自動的に収集し、調査システムに文書内容を学習させる物があります。言い換えるとシステムの中に似た意味の単語辞書を持たせ、巨大化させていく手法ですが、同時に専門性も持たせる必要がある為、調べたい案件に特化したウェブサイトやブログ等を学習ソースにして似た意味の単語辞書精度を上げる手法も開発されています。
一方インデックスされた単語数を基に考案された機能に言語判別技術があります。膨大な電子データの中に外国語文章がどれだけ含まれているかを調査する技術です。特にグローバル企業のデータを調査する際には何人のバイリンガル調査人員・閲覧人員を準備し何日かけて調査を終わらせるか等の判断に必須の技術になってきています。精度に関して現在の所、英語・スペイン語の区別などはかなり高くなっていますが、日本語等のカタカナと英語のつづりが一つの文の中に多く含まれる言語に関しては依然エラー率の方が高い状態になっています。専門性の高い文書になると専門用語がすべて英語の綴りになっており文章自体は日本語文法で正しく書かれていたとしても数学的に判断すれば英語となってしまう場合がまだまだ多い状態です。