第257号コラム「ネットワーク・フォレンジックの限界と事前の設定確認の重要性」

第257号コラム:名和 利男 理事
(株式会社サイバーディフェンス研究所 情報分析部 部長 上級分析官)
題:「ネットワーク・フォレンジックの限界と事前の設定確認の重要性

ここ数ヶ月、外部からのサイバー攻撃によるインシデントが急増している。筆者のチームで、依頼に基づいた緊急的な対処支援を行なっているところがあるが、そのリソースを確保することが徐々に難しくなりつつあり、止むを得ずに頂いた依頼をお断りせざるを得ない状況が発生している。

その対処の実態を示すものとして、以前、本コラムでネットワーク・フォレンジックに関することを紹介させていただいた。

212号コラム「ネットワーク・フォレンジックの経験から得られたこと」

https://digitalforensic.jp/2014/06/26/column212/

そのコラムを書いてから1年も経っていないが、外部からのサイバー攻撃の手口は、より一層多様化・巧妙化しており、その複雑さは想像以上なものとなっている。現場対処の中で感じるところであるが、ネットワーク・フォレンジックの技法が十分に確立していない状況であるのに、もはや限界が見えつつあると言わざるを得ない。

この理由は、次のような実例で説明できる。なお、この実例は、筆者のチームによる対処支援の経験の中で比較的多いパターンであるが、感染した端末やネットワークシステムの状況により、その順序や利用するマルウェア等は大きく異なる。

第256号コラム「デジタル・フォレンジックの発展に向けて」

第256号コラム:舟橋 信 理事(株式会社UBIC 取締役)
題:「デジタル・フォレンジックの発展に向けて」

 早いもので、本年8月23日にはデジタル・フォレンジック研究会が発足して10年目を迎えます。この間、「デジタル・フォレンジック事典」の発行、「証拠保全ガイドライン」の公開、「技術」、「法務・監査」、「医療」の各分科会の開催など、研究会の活動を推進して参りました。また、研究会を設立した年、2004年12月には、デジタル・フォレンジックの普及・啓発を目的として「第1回デジタル・フォレンジック・コミュニティ2004 in TOKYO」を開催致しました。お陰さまで本年12月の開催で10回を重ねることとなります。コミュニティは回を重ねるごとに活性化して来ております。これも会員の皆さまから頂いております御支援の賜物と、感謝致しております。

 この10年間、デジタル・フォレンジックは、少しは世の中に認知されるようになって参りました。また、ライブドア事件の際の偽造メール問題やサーバーの捜索、相撲八百長事件の際の携帯電話のメール、最近のPC遠隔操作に関わる事件のIPアドレス捜査など、マスメディアの関心も高まってきているように見えます。しかし、一部上場企業の役員の方々でも、e-Discoveryが、国境を越えて自社に係わってくることを想定されていない、あるいは、e-Discoveryに関することを全く御存じないのが実情ではないかと思われます。このような意味で、デジタル・フォレンジックの普及・啓発活動を継続する意義があり、経営層の方々にもコミュニティや研究会に参加して頂くことが必要かと思います。

第255号コラム「デジタル・フォレンジックの黎明期からの発展 ― 「デジタル・フォレンジック」ってなに?」

第255号コラム:安冨 潔 副会長(慶應義塾大学大学院 法務研究科 教授、弁護士)
題:「デジタル・フォレンジックの黎明期からの発展 ― 「デジタル・フォレンジック」ってなに?」

 デジタル・フォレンジック、最近では、様々な分野で知られるようになってきたものの、約10年前には、専門家の間では別にして、社会一般ではほとんど知られていなかったように思い出される。わたくしも、当研究会設立にあたって。お誘いをうけたとき、デジタル・フォレンジックってなんなのという印象をもったことが思い出されます。お話を伺っていくうちに、このような技術が活用されるようになれば、犯罪捜査や刑事裁判で大いに役に立つだろうなと思いました。しかし、法律の分野においてどこまで浸透して、実務で利用され、裁判や法的リスク管理に活用されるようになるのか、法律の世界で、新規性の技術への関心について懸念も感じました。
 あれから10年あまり、研究会の熱心な活動もあり、今日では、デジタル・フォレンジックという言葉が、社会に定着してきたことは、研究会に関わってきた者としては、まことにうれしいことです。

第254号コラム「第10期の活動方針 今後の10年を見据えて」

第254号コラム:佐々木 良一 会長(東京電機大学 未来科学部 情報メディア学科 教授)
題:「第10期の活動方針 今後の10年を見据えて」

この4月からデジタル・フォレンジック研究会の活動も第10期となり、10年目の活動が始まります。

これまでの10年を振り返ると、2004年から始まる「デジタル・フォレンジックコミュニティ」の実施、2011年から始まる「デジタル・フォレンジック講習会」の実施、2006年の「デジタル・フォレンジック事典」(日科技連)の発刊、2010年の「実践的eディスカバリ -米国民事訴訟に備える-」(NTT出版)の発刊などを通じて、デジタル・フォレンジックという概念の普及に確実に貢献してきたと言えると思います。この間、デジタル・フォレンジックもいよいよ実用段階に入り、警察だけでなく民間においても、いろいろな局面で利用されています。

例えば、個人情報の漏えいなどに関連して漏洩事実や漏洩経路を明確化するために民間でも専門業者に依頼してデジタル・フォレンジックを適用する機会が増えてきています。また、デジタル・フォレンジックの一分野であるネットワーク・フォレンジックも新しい攻撃に対する対策として注目を浴びています。政府においても、ログ管理・証跡管理に関連する統一基準を設定すべく、内閣官房の情報セキュリティセンターと本研究会が協力して検討を行い、2012年7月に「平成23年度 政府機関における情報システムのログ取得・管理の在り方の検討に係る調査報告書」としてまとめあげました( http://www.nisc.go.jp/inquiry/pdf/log_shutoku.pdf )。