コラム第939号:「自律型ロボットとの共生社会におけるデジタルフォレンジックス」
第939号コラム:丸山 満彦 監事(PwCコンサルティング合同会社 パートナー)
題:自律型ロボットとの共生社会におけるデジタルフォレンジックス
1. 一台の自律型ロボットの事故から…
“深夜二時ごろ、物流倉庫の倉庫群に隣接する構内私道で、一人の男性が配送ロボットと接触し、搬送先の病院で死亡が確認された…”
自律型ロボットは配送だけでなく、警備、清掃、点検、見守りなど、さまざまな人間が行動する現場に広がっていくと考えられています。こうした共生が社会に根付くかどうかは、ロボットが事故を起こさないことだけでなく、事故が起きた際に何が起きたのかを説明できるかどうかにも懸かっているように思います。
上記の想定の事故は、単純な機械故障ではありません。例えば、事故を起こした配送ロボットは、物流事業者であるD社が保有・運用していますが、その車体はA社製です。経路選択や群制御の中核ロジックはB社のクラウドAI基盤に依存し、ロボット間通信にはC社の回線が用いられていた、ということはあり得る話ですね。
コラム第938号:「ランサム事案における信頼と責任」
第938号コラム:北條 孝佳 理事(NPOデジタル・フォレンジック研究会理事/一般社団法人日本シーサート協議会専門委員)
題:ランサム事案*1における信頼と責任
1. ランサム対応を「専門家」に委ねたくなる心理
日本において、ランサム被害に直面した組織が、交渉会社や身代金の支払代行会社に支援を求めることは、慎重に検討されるべき選択肢である。多くの機関が繰り返し注意喚起しているように、身代金の支払いは復旧を保証するものではなく、結果として犯罪行為を助長する可能性も指摘されている。そうした状況の中で、「専門家に任せれば解決できるのではないか」という期待のもと、交渉や身代金の支払いを前提とした支援に目を向ける動きが見られることについては、慎重な検討が必要である。
交渉会社や支払代行会社は、被害組織に対して一定の助言や支援を提供し得る存在ではある。しかし、その判断や助言は、あくまでビジネスの枠組みとして行われる以上、被害組織の利益と常に一致するとは限らない。このことを、支援を求める前に明確に認識しておく必要がある。なお、この点は外部専門事業者の活用一般を否定する趣旨ではなく、ランサム攻撃者との交渉や身代金の支払いへの関与を主たる業務とする事業者において生じ得る特有のリスクである。
コラム第937号:「日本警察におけるデジタル・フォレンジックの草創期 ―私が見た草創期の歩み―」
第937号コラム:舟橋 信 理事(株式会社FRONTEO 取締役)
題:日本警察におけるデジタル・フォレンジックの草創期 ―私が見た草創期の歩み―
今日、デジタル・フォレンジックはサイバー犯罪捜査やインシデント対応に欠かせない技術となっている。日本警察が本格的にデジタル証拠の解析に取り組み始めたのは、コンピュータがまだ一部の企業や官公庁で利用されていた時代までさかのぼる。
1970年代後半、日本では銀行のバンキングシステムをはじめとする大型コンピュータ(メインフレーム)の導入が急速に進み、銀行員による不正送金や詐欺事件など、コンピュータを悪用した犯罪が発生するようになった。当時の捜査では、磁気ディスクや磁気テープに保存されたデータを解析し、不正の痕跡を明らかにする作業が行われていた。また、パチンコ等のゲーム機のROMに記録された違法プログラムの解析も実施されており、これらが日本警察におけるデジタル・フォレンジックの原点であった。
