第184号コラム「図上演習について」

第184号コラム:舟橋 信 理事(株式会社セキュリティ工学研究所 取締役)
題:「図上演習について」

先の東日本大震災では、多くの方々が亡くなられた。岩手県釜石市では、地震直後の津波で大きな被害が発生したが、市内の小中学生の生存率は99.8%に達することが報道されている。その要因として、同市の防災・危機管理アドバイザーの片田敏孝群馬大学教授による小中学生を対象とした大津波に備えた教育、避難訓練等により身に就いた判断が小中学生の生命を守ったのである。

発生すれば大きな犠牲が生じるが、人の生涯でほとんど遭遇することのない大規模な災害などへの対処は、演習を通じて経験し、前もって対処方策を考察しておけば、被害を最小化することに寄与する。
このような観点から、慈恵会医科大学の浦島准教授を委員長とするボランティアの実行委員会(委員長を含め9名)主催により、平成19年より、バイオセキュリティ分野の図上演習を毎年開催している。今年は5回目の開催となる。毎回100人~300人の官公庁、警察、消防、自衛隊、医療機関、マスコミ、重要インフラ・リスクコンサルタント、製薬会社等の民間企業の方々、また、当研究会会員の方々にも御参加いただいている。

第183号コラム「サイバー攻撃と情報保有者の責任」

第183号コラム:小向 太郎 理事(株式会社情報通信総合研究所 法制度研究グループ 部長 兼 主席研究員、IDF「法務・監査」分科会主査)
題:「サイバー攻撃と情報保有者の責任」

わが国でも、サイバー攻撃が急速に注目を集めています。海外では、以前から重要インフラへのサイバー攻撃の脅威が指摘されており、昨年には実際にインフラ設備を制御するシステムを狙ったウィルスなどが話題になりました。

これらの報には接しながら、国内ではまだ具体的な攻撃があまり話題になっていませんでした。しかし、この秋に三菱重工業等の国防関連の製品を扱う企業に対する大規模かつ組織的なサイバー攻撃が発覚し、国家機密に当たる情報も漏洩した危険があるとして大きな注目を集めました。その後、衆議院や政府機関への攻撃も報じられており、政府も2011年10月7日に「情報セキュリティ政策会議」(議長・藤村修官房長官)を開いて、情報共有など官民連携の強化を検討しています。

企業による情報漏洩について最近、マスコミ等の論調が微妙に変化しているように感じます。従来、個人情報等の漏洩がおきた場合、企業はひたすらごめんなさいでした。しかし、組織的な標的型攻撃は通常のセキュリティ対策では防ぎようがないという認識が急速に浸透しているように思います。

第182号コラム「証跡とログの区別~温故知新」

第182号コラム:佐藤 慶浩 理事(日本ヒューレット・パッカード株式会社 個人情報保護対策室 室長)
題:「証跡とログの区別~温故知新」

証跡という用語があるが、ログとの区別を付けていない場合がある。

ひどいときには、「証跡(ログ)」などと書かれていることがある。日本語だと漢字とカタカナでなんとなくあり得そうに見えるが、英語であれば、「trail(log)」と書いているわけで、異なる単語を同義語だと書いていることになり、それが如何に乱暴なことかは一目瞭然である。しかし、実は英語でもそういうことを書いてある場合がある。(笑)

IT技術者でも、証跡とログは、なんとなく違うとは思っていながら、その区別をはっきりと説明できる人は、実は意外に少ない。証跡は監査証跡という用語として使われることが多いために、それとアクセスログを並べて、目的が監査なのか、アクセス確認なのかの違いだと説明したりする。果たして、それは本当なのだろうか?ちょっと考えればわかるが、そんなはずがない。それらは証跡とログに付けた接頭辞の違いを言っているだけだ。そういうことを言う人には、「では、アクセス証跡と監査ログという用語は誤りですか?」と意地悪な質問をすることができる。
では、ぼくは知っているのか?知るはずがない。このコラムを書くために思いついたネタなのだから。
しかし、答えを知らないけれど、違う言葉を同義だと言ってみたり、接頭辞を付けて区別したフリをしてみたりすることが世のためにならないことは知っている。
そして、答えを知らないけれど、以下のように考えることはできる。

第181号コラム「暴力団排除条例と企業・病院の対応」

第181号コラム:木下 渉 氏(木下綜合法律事務所 弁護士、IDF会員)
題:「暴力団排除条例と企業・病院の対応」

今年の10月1日より東京都暴力団排除条例が施行され、これにより、47都道府県全てで暴力団排除条例が施行されることとなりました。

暴力団排除条例の内容は、各都道府県によって異なりますが、基本的には、企業・病院等の事業者が暴力団の威力を利用したり、暴力団の活動を助長するような取引を行うことを禁止し、事業者が暴力団との関係を絶つことを求めています。

暴力団の威力を利用することが許されないことは言うまでもありませんが、何が「暴力団の活動を助長する取引」に当たるのかは必ずしも明確ではないため、条例対応に追われる事業者の方から、「この取引は条例で規制されるのか」という相談をしばしば受けます。
事業者として条例に対応することは重要なことであり、経営者や法務担当者の方が「どういった場合に条例に違反するのか」を気にされるのは当然のことです。
しかしながら、決して勘違いして頂きたくないのは、「条例ができたから、暴力団を排除しなければならない」のではなく、あくまでも「暴力団を排除しなければならないから、条例ができた」ということです。