第46号コラム「米国の越境的e-DiscoveryとEUのデータ保護」

第46号コラム:金子 宏直 氏(東京工業大学大学院社会理工学研究科准教授)
題:「米国の越境的e-DiscoveryとEUのデータ保護」

EUデータ保護指令(95/46/EC)の29条検討委員会が2009年2月11日付けでEU諸国が米国のディスカバリへの対応について検討報告書(ワーキングペーパー)を公表している(00339/09/EN,WP158)。これも参考に米国の越境的e-Discoveryをみてみよう。ここでは米国の越境的e-Discoveryは、米国訴訟の外国訴訟当事者の関係者に対して、直接的に米国内と同様に電子的情報(ESI)を対象にしたディスカバリを指すものとする。
まず、司法制度を異にする国においてESIの提出を要求される者には脅威である。特に、大陸法諸国は証拠収集における当事者の役割、証拠収集が司法権の行使にあたるかについて立場を異にするため、米国のディスカバリ制度には強い拒絶反応がみられる。
そもそも越境的ディスカバリについては、これまで証拠の開示・提出を要求する当事者の代理人である弁護士が行う証言録取が、外国による裁判権行使にあたり自国の主権を侵害する危険があり、国際民事証拠共助制度によるべきであると主張される。諸外国では自国内で事実上ディスカバリによる証拠収集が行われることを阻止する目的の規定を立法する国もある。

第45号コラム「デジタル・フォレンジック・ガイドラインとは」

第45号コラム:和田 則仁 氏(慶應義塾大学 医学部外科 助教)
題:「デジタル・フォレンジック・ガイドラインとは」

医療界では10年ほど前から学会主導でガイドラインの策定が盛んに進められています。これは診療ガイドライン(clinical practice guideline)と呼ばれるもので、「医療者と患者が特定の臨床状況での適切な診療の意思決定を行うことを助ける目的で系統的に作成された文書」とされます。現在、この診療ガイドラインの多くは、「エビデンスに基づいたガイドライン(evidence-based guideline)」というスタイルで作成されます。
エビデンスとは、個々の臨床研究の結果、あるいはそのいくつかをまとめた結果を指し、その臨床研究の方法論や質によりレベルが分類されています。一番レベルが低いのが「偉い人が言っている(expert opinion)」というもので、従来はとてもありがたいものでしたが、今では軽く見られています。逆に最も高いのが、ランダム化比較試験(randomized controlled trial; RCT)によるエビデンスです。これは何万人という患者をくじ引きで2つの治療法に振り分け、その比較の結果、より良い治療法を明らかにしていく手法です。最近では新しい治療法は、RCTで従来の最善の治療法と比較され優れているということが証明されない限り受け入れられないという状況になってきています。このようなエビデンスをよく吟味してまとめられたのがエビデンスに基づいた診療ガイドラインです。

第44号コラム「多種多様な分野からの参入を」

第44号コラム:西川 徹矢 氏(明治安田生命保険相互会社)
題:「多種多様な分野からの参入を」

先般、知人の法律事務所でベイシステクノロジー社の創設者カール・ホフマン氏と面談する機会を得た。正に世界的レベルで自然言語処理ソフトウェアのトップ企業を率いていると言いうる人物である。
同氏から、同社の製品が、検索に際しての多言語間の変換速度・効率についていかに素晴らしい機能を有しているかを、デモをまじえて聞くことができた。インテリジェンスや捜査情報分野におけるデータ検索の在り方やシステムの構築などが話題になったが、話はオリジナリティのあるものを生み出した人にしか語ることのできない示唆に富む内容で、言語処理と検索機能との在り方などがどうあるべきかなど興味尽きないものであった。
話題も弾んで偶々デジタル・フォレンジックに及んだところ、同社でも、最近、事業枠を拡げて、デジタル・フォレンジックの分野に本格的に参入しているとのことであった。(後日手許の資料を調べてみると、昨年フォレンジックのイベント会場かどこかで同社の方と名刺を交換していた。)
デジタル・フォレンジックは、ご案内どおり、しばしば「デジタル鑑識」と言われ、先ずは、故意か否かにかかわらず膨大なデータの中に埋もれた、真に価値の高い証拠をできるだけ多く発見、収集することが肝要であるとされるところであるが、同社のような、検索を得意とするグループのアプローチからどのような光明がもたらされるのか、期待と興味のそそられるところである。

第43号コラム「危機管理と個人情報保護」

第43号コラム:舟橋 信 氏(財団法人未来工学研究所)
題:「危機管理と個人情報保護」

本日のコラムは、「危機管理と個人情報保護」について、その中でも、個人情報保護が問題となる災害時要援護者に係わる情報共有に関するお話です。

「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(内閣府、2006年3月、p2)によれば、災害時要援護者(以下、「要援護者」と表記します。)とは、一般的には重度の要介護者、身体障害者、独居高齢者、乳幼児、妊婦、外国人などの各種災害から身を守るために自ら避難行動をすることが著しく困難で、支援を要する人々を指しており、各自治体が対象者を定めることとなっております。

1995年1月の阪神・淡路大震災の際に、要援護者の安否確認や避難が問題として顕在化しました。当時は、自治体の福祉担当職員が、震災対応に追われ、要援護者の安否確認や状況把握等が困難であったこと、また、要援護者にとって、避難所生活は、相当な困難がともなったことなどの課題が浮き彫りとなりました。
阪神・淡路大震災の教訓を基に、一部の自治体では、対応方策が作成されましたが、政府の動きは遅く、2004年の日本海側における水害の際にも要援護者の避難が問題となったことから、漸く2006年に上記のガイドラインがまとめられたところです。
政府のガイドラインにおいて、情報共有方式として次の3方式が挙げられております。個人情報保護条例との関係については、関係機関共有方式として示されており、これによる情報共有が推奨されているところです。

第42号コラム「最近のネット記事投稿で気がついたこと」

第42号コラム: 萩原 栄幸 氏(ネットエージェント株式会社 取締役)
題:「最近のネット記事投稿で気がついたこと」

縁あって昨年11月からITmediaに投稿記事を毎週掲載させて頂いている。思えば週間記事というのは以前私がまだペンネームを書籍ごとに多用していた時期に金融機関であれば必ずといっていいほど購入されていた「週刊金融財政事情」の「情報セキュリティ入門」20回シリーズ以来である。(当時のペンネームは山岡俊一)ただし、実際に行って気がついたのだが「紙」と「ネット」の違いに今更ではあるがびっくりした。
当時は原稿を作成後たとえ週刊とはいえその後校正、版下確認など何回かの確認作業がありやっと印刷という感じであったのでどんなに原稿が遅れても印刷所の持ち込み3日前くらいでないとその他の作業が完了しなかった。ところが現在のネットはどうか・・・
びっくりしました。確認作業は全くなし。私が原稿を書くのが遅延しても催促の電話もない。黙っていたら投稿記事がアップする火曜日の早朝の前日頃にやっと「原稿まだですか?」という問い合わせがあった!つまり今まで必至に守っていた「原稿はアップの1週間前に必着のこと!」というのがめちゃくちゃに「さばを読んで」いたのである。