第111号コラム「外国判例事情 -ブラックベリーのデータについても保存義務-」

第111号コラム:金子 宏直 氏(東京工業大学大学院 社会理工学研究科 准教授)
題:「外国判例事情 -ブラックベリーのデータについても保存義務-」

 先日の法務・監査分科会で取り上げた米国のe-Discovery事例の中から1件簡単に紹介する。米国では、訴訟が予測される時点で、企業は速やかにメールサーバーや問題の鍵となる人物の使用しているPC等のデータが消去、改変されないように保存する義務が判例法上認められるようになっている。数年前であれば、都合の悪いデータを故意に消去して、訴訟の相手方当事者からのディスカバリの要求に対応しないという者も存在していたが、近時は、そのような故意による消去は裁判所による金銭負担その他の制裁の対象となるため、制裁を覚悟の上でなければ行われない。そして、訴訟が予測される時点でも、通常業務の関係で意図せずに古いメールやファイルを順次消去することがあるため、企業は社内全体に対して適切なデータ保存を即時に行うように周知し、かつ、システム管理者等の専門家による適切な保存手順を踏むことが求められている。

第110号コラム「フォレンジック業界の再編?」

第110号コラム: 芝 啓真 氏(株式会社フォーカスシステムズ フォレンジックセキュリティ室)
題:「フォレンジック業界の再編?」

 仰々しいタイトルをつけてしまい少し後悔していますが、フォレンジック製品のメーカーの買収についての話題です。一体フォレンジック業界の再編とは何事かと思われた方、申し訳ございません。

 「Guidance Software」「Tableau」この二つの言葉を聞いてピンと来た人ももしかするといらっしゃるかもしれません。約一カ月前の2010年5月に、Guidance Software社がTableau社を買収したというニュースが報じられました。私にとっては最近一カ月で一番驚いたニュースでした。

 とはいえ、日本ではまだニッチなフォレンジック業界の話題のため、念のためそれぞれどのような会社なのか簡単にご説明させて頂きます。ご存知の方は飛ばしてお読み下さい。
 Guidance Software社は「EnCase」という調査解析ソフトウェアのメーカーです。EnCaseは、フォレンジック調査において世界中で使用されているソフトウェアの一つと言っても過言ではないと思います。一方Tableau社は、HDDやUSB、Firewire、各種メディアカードなどの書込み防止装置や、HDDデュプリケーターなどのメーカーであり、10万個以上の書込み防止装置の販売実績がある会社です。

第109号コラム「お手軽なオープン・ソース・インテリジェンスの手法」

第109号コラム: 名和 利男 理事(株式会社サイバーディフェンス研究所 上級分析官、IDF理事)
題:「お手軽なオープン・ソース・インテリジェンスの手法」

読者のみなさんの中には、日々の業務において、様々な情報を収集及びまとめをしなければならない、或いは、特定の事象について詳細に調査しなければならない立場の方々がおられるかと思います。

ただ、「情報の収集及び調査」は、意外に大変な作業であり、相当の根気と忍耐が必要となることが多いと思います。どうしても見つからない場合は、その筋の専門家を活用するという手段があると思いますが、本当に望む情報は、自ら手を動かさないと得られないものです。

特に、サイバーセキュリティは、専門性が高いものでありながら、どこでも発生する可能性のある厄介のものです。また、サイバーセキュリティインシデントの発生頻度の上昇により、予防的措置及び事後的措置等の目的のため、サイバーセキュリティに関する情報収集をしなければならない方々に出会うことが多くなりました。
そこで、今回のコラムについては、オープン・ソース・インテリジェンスという考え方に基づいて、みなさんにお役に立ちそうな「お手軽な手法」を紹介させていただきます。

第108号コラム「韓国は如何にして電子行政世界最先進国家となりし乎――韓国訪問記」

第108号コラム:辻井 重男 会長(中央大学 研究開発機構 教授、IDF会長)
題:「韓国は如何にして電子行政世界最先進国家となりし乎――韓国訪問記」

Ⅰ 韓国情勢
 国連のサイト「UNE-Government Development Knowledge Database」では、各国の電子政府の準備度を調査し、ランキングを発表している。それによれば、1位は韓国、2位米国、3位カナダ、以下、ヨーロッパ諸国が続き、我が日本は17位である。
 様々な項目ごとに、準備度を設けて、点数をつけているが、そのような採点法で良いのか、私には疑問に思われる。電子行政は、全体最適化の構想を定めた上で進めることが必須である。各省庁や自治体などの組織毎の最適化を積み重ねても、理想的な姿には近づけない。多くの国は、電子行政の到達点へ向けてのプロセスにあるが、全体最適化のプロセスにあるのか、個別最適化を積み重ねるプロセスにあるのか、同じ点数でも、意味が違ってくるのではないだろうか。
さて、その全体最適化を進めた、世界最先進国、韓国を本年(2010年)4月21日から24日の4日間、電子行政のヨン様こと、廉 宗淳氏の案内で、一行5名が訪問した。
 自民党政権の頃は、野田聖子元IT担当大臣、最近では、廉氏の案内で、原口総務大臣も韓国を訪れている。我々は、日本で言えば、東京都港区役所に相当するソウル市の江南区役所も訪れたが、米国を含め60カ国からの訪問を受けたとのことである。
 日本の国会図書館に当たる中央図書館の敷地には、4階建てのデジタル図書館が建てられ、1億冊が収容されているそうである。著作権の問題があるから、館外への貸し出しはしていないが、館内では、拡大、手めくりなどが自由に出来る大画面で、多数の人が読書を楽しんでいた。
何故、韓国が電子行政で世界トップに躍進したのか、私の俄か韓国出羽守の目で観たところ、次のような理由・動機によるものと思われる。