第807号コラム:和田 則仁 理事(湘南慶育病院 外科 部長)
題:「医療AIとデジタルフォレンジック」


 一昔前、AIの応用で注目されていた分野の一つが画像認識でした。顔認証やOCRなどで日常生活にも広く導入されてきました。医療の世界では診断学の分野で大きく発展しました。従来診断学は医師の知識と経験がものをいう分野でしたが、AIの登場により、画像診断(レントゲン、CT、MRIなど)、病理診断、内視鏡診断においては既に専門医よりも正確に短時間で大量の画像を処理できるようになりました。もちろん現状はあくまで医師の補助として用いられ、医師の最終判断を必要としますが、極めて有用な情報が得られることには間違いありません。

 昨年2023年は、ChatGPTが社会的に大きく注目され、生成AI元年とも呼ばれる年になりました。生成AIはすっかり日常生活に浸透したと言えるでしょう。生成AIが医療の中で力を発揮するのが業務効率化です。同意書作成、IC(インフォームドコンセント)の記録、診断書作成、サマリー作成など臨床業務において文書等の作成効率を上げ、本年4月から本格実施となる医師の働き方改革に資する仕組み作りが進められています。しかし、医療行為そのものの質や効率を高めるところには、なかなか応用が難しいようです。ただし今後の臨床データの蓄積により、ChatGPTのように対話型の問診によりバーチャル医師が診断を進めていくことが可能となるかも知れません。そうなればweb上での問診により、病院に行くべきかどうか、何科を受診すべきか、大病院にすべきかクリニックでいいのか、救急車を呼ぶべきかどうかなど、かなりの精度で答え出してくれるようになるかも知れません。より効率的な医療提供体制が構築できる可能性があります。当然のことながら料金は安く(あるいは無料に)設定されるべきでしょう。また導き出された答えに対する法的責任についても、免責事項などあらかじめ明確にされるべきでしょう。安かろう悪かろうでは困りますので、質の担保は、PMDAによる医療機器としての審査が必要でしょう。国民医療費を削減できるだけのインパクトが期待できるのであれば、国主導で開発に取り組む必要もあるかも知れません。デジタルフォレンジック的な視点は重要でしょう。自動音声認識により、電話相談窓口のような形で実現できれば理想的ではないでしょうか。夢は膨らみます。

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