第3号コラム:大橋 充直 氏 (ハッカー検事)
題:「元祖デジタル・フォレンジック考」

2014年6月21日(土)、東京工科大学八王子キャンパス片柳研究所にて、日本セキュリティ・マネジメント学会第28回全国大会を開催した。

本学会は、デジタル・フォレンジック研究会の佐々木会長が現在会長をされており、前会長は辻井先生が務められていたという、本研究会にとっても大変深い関わりのある学会である。

今年の全国大会の統一テーマは、「日本の再生戦略と未来志向のセキュリティ・マネジメント」であった。基調講演では、中央大学法科大学院教授である森信茂樹先生が、「番号を活用して税と社会保障の改革を」と題してお話しされた。また特別講演では、特定個人情報保護委員会委員長・一橋大学名誉教授であり、かつて本学会の副会長も務められた堀部政男先生が、「パーソナルデータの安心安全な利活用とその制度的対応 -日本のプライバシー・コミッショナー制の展望-」と題してお話しされた。研究発表では、9つの研究会による9トラックとともに、英語セッション、学生セッション、および自由論題枠を設け、全36件の学際・業際的な発表が行われた。

統一テーマを「日本の再生戦略と未来志向のセキュリティ・マネジメント」としたのは、安倍内閣が、「アベノミクス」と呼ばれる「3本の矢」、即ち①大胆な金融政策、②機動的な財政施策、③民間企業を喚起する成長戦略を政策として挙げ、その実現を進めているので、これらの政策に、本学会も何らかの貢献をすることが重要だと考えたからである。特に、番号制度(マイナンバー制度)と個人情報保護法改正に関しては、国民の関心も高いため、我が国におけるその分野の第一人者である先生方にご講演いただくことにした。

基調講演は、税と社会保障の一体改革に係る番号制度(マイナンバー制度)の視点から、税に関する第一人者である森信先生に、なぜ番号制度を導入する必要があるのか、さらには給付付き税額控除と軽減税率の関係、インボイスの導入の可能性についてわかりやすく解説いただいた。

特別講演をされた堀部先生は、我が国における個人情報保護やプライバシーに関する第一人者であり、我が国におけるこれらの分野の発展に深く関わりを持たれている。先生はこの分野の創始者と言っても過言ではなく、豊富な知識とご経験をもとにご説明いただいた。さらに、特定個人情報保護委員会と今後改正予定の個人情報保護法に関して、具体例を交えてご講演いただいた。

本学会は、学際的でかつ業際的な分野横断型活動をしており、そのメリットを活かした有意義な全国大会となった。この全国大会をきっかけとして、本研究会を始めとする他の学会等に研究の輪が広がることを期待する。

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