第6号コラム:萩原 栄幸 理事(ネットエージェント株式会社 取締役)
題:「デジタル・フォレンジック調査の夢」
フォレンジック調査・・・あまり一般的には知られていない用語ではありますが、通常は被疑者の使用パソコンの内容をツールや「技」を駆使して言い逃れの出来ない証拠物件を探すこともしくは、逆に正当な使い方をしており、「無実」であることを証明する直接的な方法として用いられる事が多いようです。
現在、このような意味でのフォレンジック調査を商売として行っている会社はUBICやネットエージェントなどまだまだ数が少ないと思われます。そのせいか、外資系コンサルタント会社に時々フォレンジック調査依頼があっても、大抵は米国、香港などのいわゆる外国人部隊を招き作業を行っている例が多いと聞き及んでおります。
しかし、1バイトコード圏で著名なフォレンジック調査員であっても2バイトコード圏での作業は難しいと関係者からも聞き及んでおり、実際に統計をとった訳ではありませんが、大半は多分にこの環境が分析の足かせになった事と思われます。
また、本来であれば「フォレンジック調査員」という職業は米国などでは専門家として尊重され、それなりに優遇されているようですが、日本における「フォレンジック調査員」の権威はほとんどないに等しく収入も他のIT関連に比べ見劣りしている可能性すら一部あるようです。
私はこのような状況から脱すべく日夜努力をしているのですがなかなか先に進みません。
やはり、こういう状況から脱出する一番良い方法は「官」の力が一番効果的だと考え、産官学バランスのいい説得活動を行い、時にはデモなどを通じて、フォレンジック自体の啓蒙活動やお役所のコンサルタントも行っておりますが、一様に腰が重たいようです。
しかし、世界の情勢はますます加速度をつけ、先に先に進んでおり、感覚で米国に遅れること10年程度と思っていたのは昔の話で現在では15年くらいと関係者にはお話しております。日本での改善はもうしばらく時間がかかるようです。でも、状況は少しずつ改善され、そしてある時、ドラスティックに変化すると期待しております。
いわゆるJ-SOX法対応や内部統制そして米国では主流のeDiscovery(電子証拠開示)の日本企業への浸透などフォレンジック調査員のニーズはどうみても高まっているからです。しかも「外国人部隊」への極めて高額の調査費をいつまでも黙っている企業は少なく、国産の優秀なフォレンジック調査員を待望している企業が数多くあると、確信を持っております。
パイは山の様にあります。この業界はゼロサムではなく、全員が勝者となれる可能性がある極めて有望な領域だと思います。
そして、いつの日か国家資格「フォレンジック調査員」を立ち上げ、弁護士や公認会計士並の社会的地位を確立できれば最高と思います。現状では様々な活動を通じて関係者とスクラムを組み、皆さんがそれぞれ、WinWinの関係で成長できる日を願いつつ頑張っておりますので今後ともご支援の程、よろしくお願い申し上げます。