第258号コラム:伊藤 一泰 理事(株式会社インターセントラル 取締役副社長)
題:「『法務・監査』分科会の第10期活動方針について」
昨年から「法務・監査」分科会の主査を務めさせていただいておりますが、第9期活動報告を取りまとめるに当たり、いくつかの反省点がありました。
第一に、主査の交代があったため(言い訳です)期初のスタートが出遅れてしまい、第1回の分科会開催が7月となってしまった点です。
第二に、第4回分科会が講師の選定やスケジュール調整に手間取り、予定していた開催時期から大幅にずれ込んだため、結果的に、計画していた年5回の開催が出来ず、年4回に止まってしまった点です。
第10期の活動方針を策定する際には、これらの反省を踏まえ、常に前倒しの手配を心掛けていきたいと思っております。とはいうものの、既に1ヶ月が経過してしまい、本原稿も締切ギリギリとなり、事務局にご迷惑をお掛けしている状況は冷汗三斗の思いです。
私の一番の関心事は、組織内の法令違反をどのように防ぐのか、そしてデジタル・フォレンジック技術が具体的にどう活用できるかということです。
対象者には社長等のトップマネジメントも含まれるため、普通であれば、中核的な役割を担う企業の管理部門も、この問題については積極的に動けない状況にあろうかと思っております。光学機器メーカーO社や大手製紙メーカーD社など大きく報道された事案が記憶に新しいのは言うまでもありません。
一般企業や諸団体に於いても、不正行為を調査したり、再発防止策を構築し、爾後の抑止効果を発揮させるためデジタル・フォレンジック技術を活用する時代になっています。しかしながら、実際の活用事例について、具体的な状況や解析手法が明らかにされるケースは稀なので、「法務・監査」分科会の場で、当事者しか知りえない情報を提供していければと思っております。
また、当然ながら、一般企業に普及させるためには如何に低コストで導入できるかということも重要です。そして、効果的な導入を図るための方策についても、具体的に検討して参りたいと思っております。たとえば、導入手順書、導入にあたって考慮すべき事項、必要な諸条件など、検討課題はたくさんあります。
そうはいっても足元の情報整理も大事なので、目標は高く持ちつつも地に足がついた活動にしていきたいと思っております。
以下に理事会に付議したテーマ(主務活動)をご紹介します。
(1)企業社会とデジタル・フォレンジックの関連を深堀する。証拠性確保の技術進展を認識しつつ、企業や団体への応用拡大を図るために具体策を検討する。
(2)当研究会から対外的に発信できる「法務・監査」系の公開資料の検討・作成を目指す。具体的には、法曹関係者がデジタル・フォレンジック絡みの訴訟実務で使えるリーガルテック的な題材を検討したい。将来的には「e法務ソリューション」として提案可能なツールに繋がる研究の端緒としたい。
(3)デジタル・フォレンジックに関わる法制度について検討・紹介を行う。特に民事訴訟における電子証拠の取扱いに関して、米国に於ける証拠提出の手続きや真正性の担保方法等を主な対象として、米国の実情に詳しい識者から事例紹介してもらい、日本における今後の展開と方向性を探る。
(4)e-Discoveryに関する最新判例・最新立法の紹介を行う。
(5)サイバー犯罪対策への取組と法整備について最新動向の紹介を行う。
(6)必要に応じて他の分科会や提携団体との研究会等も開催する
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