第311号コラム:伊藤 一泰 理事 (栗林運輸株式会社 監査役)
題:「「法務・監査」分科会の第11期活動計画について」
既にIDFの第11期がスタートし、先日の定例総会にて活動計画が披露されたところです。IDF設立後の10年間で、デジタル・フォレンジックについての社会的認知度は飛躍的に向上しました。10年前、一般の人々に対し、「デジタル・フォレンジックとはどんな技術なのか?また、社会的にどんな利便性を提供できるのか?」について、わかりやすく説明するのはかなり困難でした。
それが今では、一般の新聞・雑誌でも様々な事件の解説記事などで、デジタル・フォレンジックについて言及することが増えてきました。
これによって、一般の人々も「あの事件を解決に導いた」要因や背景にある技術として、デジタル・フォレンジックについて知るようになってきました。
また、製品やサービスを提供する側の動きとしては、ソリューションベンダーはもとより、大手監査法人や弁護士事務所もサービス提供に名乗りを上げ、デジタル・フォレンジック関連のサービスを続々と開始しているところです。
一方で、一般企業や諸団体の日常的な活動において、「デジタル・フォレンジックが具体的にどのように適用できるのか」については、未だ普及・啓蒙が不十分であると言わざるを得ません。
このような状況認識のもと、「法務・監査」分科会として、これらの課題に対処すべく第11期の活動計画を策定した次第です。
役員および会員の皆様には、今後とも「法務・監査」分科会の活動について、ご支援ご協力をお願いすると同時に、活動計画について追加すべき事柄や内容に不十分な部分があれば、ぜひ、事務局または主査宛にご指摘いただければ幸いです。
1 現状認識と第11期活動計画の概要
経済社会活動の中で、法令違反や不正行為を調査し、爾後の抑止効果を発揮させるため一般企業や諸団体に於いてもデジタル・フォレンジックが必要とされる局面が増えている。しかしながら、実際の事案が常にデリケートな問題を含んでいるため、具体的事例について、デジタル・フォレンジックの適用についての詳細な実施状況や解析手法が明らかにされるケースは稀である。
我々としては、一般企業や諸団体において、普段の仕事の中で、「どのような活用がなされるのか」「どのように実施されているのか」については大変興味のある点である。むろん、多くの制約があることは承知しているが、できる限り具体的な内容を開示できる案件を紹介し、広く一般に情報提供していきたい。
また、今後さらなる普及を図るためにはコスト面の問題は重要である。より低コストで効果的な導入を図るための方策についても併せて検討していきたい。
(1)開催時期:6月より全5回開催(12月のコミュニティ枠を除く)
但し、会員より研究の発表希望があれば、別途「公募枠」として追加開催も検討する。
(2)開催内容:専門家による講演を通して、「法務・監査」の分野におけるフォレンジックの具体的な適用事例や今後の展望について参加者と共に検討を行う。
2 第11期の主な活動内容
(1)企業社会とデジタル・フォレンジックの関連を深堀する。
証拠性確保の技術進展を認識しつつ、企業や団体への応用拡大を図るために具体策を検討する。
(2)当研究会から対外的に発信できる「法務・監査」系の公開資料の検討・作成を目指す。
具体的には、法曹関係者がデジタル・フォレンジック絡みの訴訟実務で使えるリーガルテック的な題材を検討したい。また、将来的には実務的な法務ソリューションとして提案可能なツールに繋がる研究の端緒としたい。
(3)デジタル・フォレンジックに関わる法制度について検討・紹介を行う。
特に民事訴訟における電子証拠の取扱いに関して、米国に於ける証拠提出の手続きや真正性の担保方法等を主な対象として、米国の実情に詳しい識者から事例紹介してもらい、日本における今後の展開と方向性を探る。
(4)eディスカバリに関する最新判例・最新立法の紹介を行う。
(5)サイバー犯罪対策への取組と法整備について最新動向の紹介を行う。
(6)必要に応じて他の分科会や提携団体との研究会等も開催する。
【著作権は伊藤氏に属します】