第606号コラム:宮坂 肇 理事(NTTデータ先端技術株式会社 セキュリティ事業部サイバーセキュリティインテリジェンスセンター長 プリンシパル)
題:「新型コロナウィルス感染症における情報について」
新型コロナウィルス感染症に関連するニュースが連日、毎時間のように報道されており、政府の発表等も毎日のように新たな発表がされている日々が続いている。また、本コラムが発行される前日は、東日本大震災から9年目となる日であった。9年前とはいえ、その時に触れていた日々の報道等と、現時点が似ている。今回のコラムでは、先週に引き続くが、新型コロナウィルス関連について記してみたい。
9年前の震災後の本コラムでも執筆を行なったが、大きな事案や災害、今回のような事態には、情報が錯綜し、さらにデマや信頼性のない情報が流され、不安を抱える国民等が増加する。スマートデバイスの普及とともにソーシャルメディアネットワーク(SNS)が広く普及したことにより、誰でもいつでもどこでも情報を発信できるというメリットがあるが、一方、信頼性のない不正確な情報が大量に拡散されることが発生している。情報を閲覧する受信者は、この膨大な情報の中から、本当に必要な信頼性の高い情報を見極めることを任されているのが現状である。
世界保健機関(WHO:World Health Organization)でさまざまな会見等もされているが、同機関は、このような根拠が乏しく不正確な情報が数多く拡散され、正確な情報が得難くなることを“インフォデミック(infordemic)”と指摘して、警鐘を鳴らしている。“infordemic”は、“information epidemic”を短縮したものである。この手の情報が拡散されると、トイレットペーパなどのように特定の商品が店頭からなくなるなどの問題も出たり、企業等が被る根も葉もない風評被害を受けることも想定される。
実際に風評の被害を受けた事例等も多く発生しているようであるが、先日報道がされたある企業の男性の事例を簡単に紹介したい。
・ある自治体で新型コロナウィルス感染者が確認されたと発表
・その数日後に男性の取引先からその男性が感染者だといううわさを聞いたと連絡が入った
・男性が調べたところ、SNS上で会社名、会社周辺の施設名や家族も感染者だという書き込みがあり、その情報が拡散していることを確認した
・男性は、情報を否定する内容の文章を会社のホームページ、地元の新聞に掲載するなどして、誤った情報であることを告知
男性はうその情報が拡散し、自身がコントロールできない状況に非常に怖さを感じ、何がうそで何が正しいことかをしっかりと情報を判断して欲しいと発言していたという。
本日3/12のWHOの定例記者会見にて、新型コロナウィルスは「パンデミック」と言えると評価したと発表されており、強い危機感を持って対策を強化し、冷静に対策を進める必要性があると伝えている。インターネットで誰が発したか不明瞭な情報を鵜呑みにせず、かつ、内容を確認せず拡散する事は慎んで欲しく、情報が正確であるかを判断することが難しい場合は、自治体や政府機関が公式に発表している一次情報を当たることで、冷静な行動につながるのではないかと思う。
【著作権は、宮坂氏に属します】