第615号コラム:熊平 美香 監事(一般財団法人クマヒラセキュリティ財団 代表理事)
題:「リフレクション」
現在、21世紀学び研究所という一般社団法人を立ち上げて、リフレクションと対話という学び方の啓発活動を行っています。
リフレクションとは、自己の内面を客観的・批判的に振り返る行為。対話とは、リフレクション(自己内省)と、エンパシー(共感)を伴う話し方・聴き方です。
リフレクションができるようになると、これまでのやり方やものの見方をそのまま踏襲するのではなく、批判的なスタンスで考え、行動することが可能になります。変化・複雑・相依存の時代の中で、自ら正解を創っていく力や、これまでのものの見方を手放すアンラーンが必要であるといわれますが、リフレクションの習慣が身につくと、それが簡単にできるようになります。
対話とは、リフレクション(自己内省)し、評価判断を保留にして、他者に共感する聴き方と話し方です。評価判断を保留にして、多様な世界に共感することで、自分の枠の外に出ることが可能になります。リフレクションのみを行っていると、思考が、自分の枠の中に閉じてしまいますが、対話ができると、多様な世界を自分のものの見方に反映させる力が身に付きます。
コロナ禍で、中央集権型から自律分散型の組織への移行が始まり、自ら考え、行動し、結果に責任を持つ自律型人材に期待が寄せられています。ここでも、リフレクションが大切な役割を果たします。自ら設定したゴールに向かって、行動計画を立ててアクションをした結果と原因を振り返る際に、カギを握るのは、自己の内面を振り返るリフレクションです。
経験の振り返りには、4つのレベルがあります。➀結果や出来事を振り返る、②他者や環境を振り返る、この2つは他責の振り返りです。③自分の行動を振り返る、④自分の内面を振り返る、この2つが自責の振り返りですが、その中でも、④自己の内面の振り返りがとても大事です。
自分の内面とは、過去の経験を通して形成されたものの見方です。このものの見方が、行動計画の前提にあります。「こうすれば、うまくいくはず」この仮説が当たれば、良い結果になり、外れれば、期待外れの結果になります。結果を変えるためには、仮説の前提にある「ものの見方」を変える必要があります。
自己の内面を振り返るリフレクションが意味を持つのは、これまで通りのやり方では、物事がうまくいかないと感じた時です。変化の激しく、前例のない時代に生きていると、そんな場面に遭遇するのではないかと思います。その時には、ぜひ、リフレクションを実践してみてください。自分一人では新しいアイディアが生み出せないと思ったら、自分の知らない世界と対話を試みてください。そして、その世界にある経験やものの見方を探求してみてください。評価判断を保留にして、自分の境界線の外にでることができれば、対話からたくさんの気づきを得られるはずです。
【著作権は、熊平氏に属します】