第666号コラム:上原 哲太郎 会長(立命館大学 情報理工学部 教授)
題:「会長就任にあたって」
過日開催されました特定非営利活動法人デジタル・フォレンジック研究会第18期総会におきまして、会長に選任頂きました上原です。安冨前会長のような素晴らしいリーダーの後任としては些か頼りない会長ではございますが、お引き受けしたからにはデジタル・フォレンジックの発展のため尽くして参りたいと思います。副会長をお受け頂きました湯淺墾道先生、顧問をお務め頂いております歴代会長の皆様、事務局員の皆様、そして何より会員の皆様のお力を借りながら、なんとか進めてまいりたいと思いますので、何卒ご協力をよろしくお願いいたします。
2004年に発足した本研究会もおかげさまで18期を数えました。この間、デジタル・フォレンジックという言葉は次第に認知が広がり、その応用の広がりと共に社会的な重要度を増してきていることは皆様ご承知の通りです。さらに昨年からのコロナ禍は社会のデジタル化、デジタル・トランスフォーメーションを急激に加速させ、ここに来ていよいよ社会のあらゆる活動がデジタルの上で行われることが前提になって参りました。元はインバウンド対応のためであったキャッシュレスの推進がソーシャルディスタンス確保のためと目的を変えることでかえって加速し、皆が当たり前のようにスマートフォン決済を利用するようになったことは、そのような変化の身近な一例です。政府もデジタル庁を発足させ、最もデジタル化から遠かった行政分野からハンコ文化がいよいよ淘汰されはじめるなど、これまで考えられなかったような社会的変化に多くの人々が巻き込まれつつあります。このような変化の中で、社会を騒がすサイバー犯罪や諜報、不正は後を絶たず、インシデントレスポンスの重要性はさらに増してきております。さらに静止画や動画の改ざん、その拡散によるデマやフェイクニュースといった新しい課題への対応も求められるようになるなど、デジタル・フォレンジックの活用場面も広がっており、本研究会が社会に果たす役割も変化してきているため、柔軟な対応が求められていると感じております。
このような社会的要請の変化に対応するため、私たちデジタル・フォレンジック研究会のあり方もまた変化が必要だと感じております。そもそも今回、初めて関東在住でない会長となってしまったため、会の意思決定プロセスをはじめとする運営体制にデジタルの力を最大限に生かさなくてはならなくなりました。そこで事務局体制の分散化や、理事会・総会を含む重要会議の運営方法の見直し、各分科会、講習会やコミュニティ、DF資格認定といった会の主力活動の準備や運営バックアップ体制のリモート化など、研究会運営のデジタル・トランスフォーメーションを通じた効率化を進めてまいります。また、DF資格認定試験をはじめとする新たな活動を拡大するとともに、研究会が持続的に運営できるような体制づくりも進めてまいります。さらに、デジタル化に伴い会の運営の方向性について会員の皆様からのご意見やご要望を汲み取り、活動に反映するための仕組みも整備してまいりたいと思っております。
本研究会が発足して18年になろうとしておりますが、来年からはわが国でも18歳から成年として扱われることになっております。本研究会もそろそろ社会からオトナとして扱われるようになる時期かと存じます。成熟期を迎えた本研究会が社会に貢献していくために出来ることを着実に進めてまいることをお誓いして、会長就任のご挨拶とさせて頂きました。
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