第759号コラム:守本 正宏 理事(株式会社FRONTEO 代表取締役社長)題:「ドラッグ・ディスカバリやデジタル・フォレンジックにおける検索・探索、文書自動生成技術の活用について」

デジタル・フォレンジック調査においては、証拠を見つける代表的技術として、キーワード検索が活用されています。この検索技術では、膨大な情報の中から、知りたい情報を見つけることができますが、前提として知りたい情報をすでにある程度は知っている、あるいは予想・仮定していることが不可欠です。
一方、探索においては、まだ分かっていない未知のことを知ろうとして探る、言い換えれば謎を解き明かす活動となります。証拠探しやドラッグ・ディスカバリでは、検索というよりもこの探索的な作業が必要となります。
不正調査では、既知の情報を端緒として、関係者の洗い出し、未知のカストディアンの特定、不正行為の実態解明、未知の不正行為の有無の判断など、網羅性と正当性を担保しつつ、全容の解明を行います。
そして、最終的に結論付けたことや、不正行為者に何らかの処置を行うことの正当性を証明しなければなりません。訴訟における電子ディスカバリやデジタル・フォレンジック調査でも同様です。
また、ドラッグ・ディスカバリにおいて、製薬工程の初期段階を担いますが、その際に、論文探索などによって、医薬品の標的となる標的分子の特定や、その疾患のメカニズムについて仮説生成が必要となります。もし、ドラッグ・ディスカバリで標的分子を特定し、開発プロジェクトが始まると、膨大な研究・開発費が投入されるため、まず特定した標的分子が正当であることの証明が必要です。
特に、ドラッグ・ディスカバリでは、その標的分子が誰にも知られていない、誰も研究していない、という独自性と、さらにその標的分子に関連する疾患が医薬品を必要としていることが重要です。当然、有効性はもちろん、特異性、安全性など複数の評価を経て、その正当性を説明しなければなりません。そもそも新しい仮説生成は、既存の論文やデータベースにはないものなので、探索で見つけた情報から新たに作り出し、正しいことを証明する必要があります。
膨大な情報から各種ディスカバリを実施するためには、高度なドメイン知識と経験に基づく推論能力が不可欠であり、これは一般的な情報を参照し、既存の知識とのパターンマッチを行うAIで解答を生成するだけでは対処はできません。AIが専門家の知識と経験に基づく思考過程に追随し、支援する技術が必須なのです。

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