「デジタル・フォレンジック優秀若手研究者賞」は、デジタル・フォレンジック研究の活性化を目的として、デジタル・フォレンジックに関する優れた若手研究者を表彰するために、IDF第14期(2017年度)に初めて設けられ、以後、毎年デジタル・フォレンジック・コミュニティの場で表彰式を実施しております。
本年も「第21期デジタル・フォレンジック・コミュニティ2024 in Tokyo」にて、8回目となる表彰式を行います。

最優秀賞:
辻 真琴 様(立命館大学大学院 情報理工学研究科)
「NTFSのMFTを用いたSSDにおけるデジタル・フォレンジック手法」
(受賞理由)
本研究は、SSDにおいて削除ファイルの復元が困難になっているという課題に対し、NTFSにおいてメタデータを保持するデータ構造であるMFT内のファイルレコードの情報を用いて得られるアーティファクトの活用によって復元できない情報を補い、フォレンジックに活用しようとするものである。実際にどのファイルレコードがどのように変化するについて体系的にまとめた資料はこれまでなく、学術的な発表としても他に例を見ない。よって研究結果の資料的な価値が高いと評価できる。 

優秀賞:
荒木 辰哉 様 (立命館大学大学院 情報理工学研究科情報理工学専攻)
「ログ生成元プロセス情報によるレジストリとファイル操作ログの関連付け」
(受賞理由)
本論文は、マルウェアによって引き起こされるインシデント発生時のログ解析の容易化を目標とし、ログと出力元プロセスの関連付けに必要となる要件を明らかにしたこと、そのための機構を実装し、評価まで達成しており、デジタルフォレンジックス技術の発展に貢献したと言える。

優秀賞:
植木 優輝 様(株式会社日立製作所 研究開発グループ セキュリティ・トラスト研究部)
「クラウドストレージを攻撃対象としたランサムウェア検知技術の提案」
(受賞理由)
本研究は、ランサムウェアの被害が今後クラウドストレージにまで広がるという高い視座に基づき、クラウドストレージのファイルを攻撃対象とするランサムウェアに対して,APIでの検知および防御する技術を提案し、有効性を評価した。
さらに,提案方式の実用性の観点から,クラウドストレージを一般的に利用する際には誤検知がないこと,通信遅延が少ないことを定量的に確認した。

優秀賞:
Zhicheng Dou(竇 志成)様(東京大学 大学院 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 大学院生)
「Enhancing Robustness of LLM-Synthetic Text Detectors for Academic Writing
  : A Comprehensive Analysis,」
(受賞理由)
大規模言語モデル(LLM)の進展によって高校生や大学生の3割近くが、レポートにLLMの回答をそのまま写して提出しており、教育現場に深刻な問題が生じている。
候補者はこの問題に対し、教員が学生に与えた課題に対して、(1)学生側がLLMを用いてレポートを生成するシナリオを分析し、さらに、(2)上述のシナリオに対して、教員側が深層距離学習モデルを活用することで、生成されたレポートをロバストに検出する手法を提案し、複雑化したContentで生成したレポートに対して高い検出精度を達成した。

優秀賞:
宮地 麟 様(東京電機大学大学院 工学研究科情報通信工学専攻)
「Race condition vulnerabilities in WordPress plug-ins」
(受賞理由)
本研究は、Webアプリケーションにおけるレースコンディション脆弱性の攻撃痕跡がデータベースに残り、それがフォレンジック調査において重要な証拠となる可能性を示したものである。