第851号コラム: 小山 覚 理事
(NTTコミュニケーションズ株式会社 情報セキュリティ部 部長)
題:「クラウドフォレンジック人材育成の取り組み」
このコラムはデジタル・フォレンジック研究会のDF人材育成分科会主査の立場で書かせていただいた。第21期DF人材育成分科会は人材育成の一環として「クラウド・フォレンジック・ガイドライン」の執筆を目標に掲げて取り組んできた。
昨年開催されたDF人材育成分科会主催の講演会にて、とある方からガイドラインを執筆してその普及活動を展開することで人材育成に取り組んではどうかと、貴重なご意見をいただいた。その言葉に押され、クラウド環境に対応したフォレンジック人材の育成に取り組み始めた。
ガイドラインの執筆メンバは、デジタル・フォレンジック研究会のDF人材育成分科会と若手WGが連携し6・7名が毎回参加してくれていた。
証拠保全ガイドライン改訂WGからもアドバイスをもらいながら、まもなく完成の運び
となる。
今回の執筆メンバは50代の経験豊富なベテラン勢と、20代30代の若手チームが一丸となって取り組んできた。若手はフォレンジックの業務経験はあるものの、オンプレミス環境とクラウド環境の違いなど、前提知識を整理するだけで相当の勉強になったようで「人材育成に関わるつもりで参加したが、自分の育成になっていた」との感想も聞かれた。
クラウド事業者の専門知識豊富なベテランと、クラウドサービスを活用した構築や運用を行うベテランが、現場でフォレンジック作業やセキュリティ運用を行う若手メンバと目線を合わせて協働する素晴らしいワーキンググループだった。過去形ではなく、今後も継続させていきたいと思うし、DF人材育成分科会主査としてこれ以上に嬉しいことはなかった。
当研究会も御多分に洩れずであるが、多くの業界団体では若返りの必要に迫られているところが多いようだ。私は今回のガイドライン執筆の経験から「業界団体の若返りの秘訣は協働作業にあり」と思うにいたった。共に手を動かし意見を交わし、互いを尊重して作業を進めたことで、一体感と信頼感、そして成果に近づくことが出来た。
当研究会の若手関係者は、いろんな分科会活動に参加して、ベテランメンバと協働されることをお勧めしたい。
いま完成しつつあるガイドラインは、証拠保全ガイドライン第9版を参考にしつつ、最低限必要な知識と手順を整理することで、数ページのコンパクトなガイドラインの完成を目指して取り組んできた。
しかし、あれこれ書き進めるうちにドラフトは20ページを超える大作となった。これでは読み手が疲れてしまうので、ここからどう料理して世に出していこうか思案中である。
執筆に関わった皆様に感謝の気持ちを込めてお疲れ様と申し上げたい。
【著作権は、小山氏に属します】