コラム第895号:「Health ISAC Japanの設立、および「ヘルスケア」分科会との連携について」

第895号コラム:江原 悠介 理事(PwC Japan有限責任監査法人 リスクアシュアランス ディレクター)
題:Health ISAC Japanの設立、および「ヘルスケア」分科会との連携について

2025年9月に、国内のヘルスケア領域を対象としたサイバーセキュリティの教育・啓発団体として(一社)Health ISAC Japanが活動を開始しました。

この団体は医療・介護・薬局、製薬・医療機器、ウェルネス等、我々が日本内で心身の健康を維持する上で必要となる各種領域を維持するためのセキュリティという問題系を市場的な競争領域でなく、社会福祉的な公共性のある協調領域として捉え、これからの未来につなげる活動を行うことを目的としています。
また、この団体は国内病院のほとんどが深刻な経営赤字を恒常的に抱えており、セキュリティという領域に投資できる病院などゼロに近いにもかかわらず、市場の論理に基づく営利活動を目的とした取組は行いません。医療を含む国内のヘルスケア領域はそもそもお金がなく、さらにそこでのセキュリティで商売するなどということは夢物語です。経済的な見返りを得るのではなく、公共的な恩返しこそが活動の軸です。

ところで、IDFの「ヘルスケア」分科会はもともと「医療」分科会でした。デジタル化の観点よりDFの領域を医療に限定する必要もないとの判断より、「ヘルスケア」分科会へ位置づけを改定しています。

この流れのなかで、2024年に「『医療情報システムの契約における当事者間の役割分担等に関する確認表』の利用手引」の公開を行っていますが、ここでも医療という特定ドメインでなく、より幅広に、日本国内の健康領域をターゲットにした問題設定を行っています。ここでも重要な点は、DFという技術を着眼としつつも、医療という公共領域に「おカネの話」を持ち込まない有志とともに、検討を行っている状況です。

このようにIDFのヘルスケア分科会では、Health ISAC Japan等の外部団体も含めた組織とのアライアンス・連携を通して、ヘルスケア領域におけるサイバーセキュリティを協調的な無償の取組として、デジタルフォレンジックの可能性を探求していきたいと考えています。
このような活動に興味がある方は、IDFのヘルスケア分科会に加え、Health ISAC Japanの取組状況もウオッチいただくともに、ご支援いただければ幸いです。

【著作権は、江原氏に属します】