コラム第898号:「銃声検知システムShotSpotterと刑事手続における技術的中立性」
第898号コラム:尾崎 愛美 理事 (筑波大学ビジネスサイエンス系准教授)
題:銃声検知システムShotSpotterと刑事手続における技術的中立性
銃声検知システム「ShotSpotter」は、米国カリフォルニア州に拠点を置くSoundThinking社(旧ShotSpotter社)が提供する銃声検出システムであり、公共施設、街灯、商業ビル、ショッピングモール、アパートメント、携帯電話基地局等にセンサーを配備(1マイル四方の範囲に20~25個程度)することにより、銃撃が起こった場所を60秒以内に特定するものである。センサーにはマイク、GPS、メモリ、処理装置、データ送信用のセル通信機能が内蔵され、トリガー音の1秒前から録音を開始し1秒後に停止する仕組みとなっており、センサーが反応すると訓練を受けた専門家が音声の発生源と発砲音の有無を判定する。警察はスマートフォンまたは指令室経由でアラートを受信し、30~45秒以内に現場に到着するようになっている。ShotSpotterは、全米90を超える都市で導入され、報道によれば、ShotSpotterを導入したオークランド市では銃撃事件の件数が急減したという。
しかしながら、ShotSpotterの精度とその技術的中立性には深刻な疑義が呈されている。以下では、具体的な事例を紹介することとしたい。
