コラム第900号:「2025年の崖は乗り越えられたのか、足元は大丈夫か?」
第900号コラム:小山 覚 理事(NTTドコモビジネス株式会社 情報セキュリティ部 部長)
題:2025年の崖は乗り越えられたのか、足元は大丈夫か?
最近になって身に染みて思い出した言葉がある。それが「2025年の崖」である。経済産業省が2018年に出したDXレポートの副題は“ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開”だった。当時は奇をてらった表現に眉をひそめながら読み進めたが、書いてあることは至極もっとも、老朽化したシステム刷新の遅れや人材不足が、DX進める企業に立ちはだかる崖だとして、警鐘が鳴らされていた。
このコラムでは、2025年の崖を克服する以前に、障壁となった足元の課題についてお伝えしたい。
コラム第899号:「SNSは子どもにとって危険なのか」
第899号コラム:小向 太郎 理事(中央大学 国際情報学部 教授)
題:SNSは子どもにとって危険なのか
子どものSNS利用を制限しようという動きが、広まっています。
オーストラリアでは、2024年成立した Online Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Act 2024 により、SNS事業者に対して16歳未満がアカウントをもたないよう合理的措置を講じる義務が課されることになりました。2025年12月10日に施行される予定です。以前から、子どもにサービスを提供したり、子どもの個人情報を収集したりする際に、保護者の同意を義務付けている国や地域はありました。しかし、SNSの子どもへの提供を一律に制限する法律はめずらしく、とても注目されています。EUでも、2025年10月には欧州議会がデジタル最低年齢を16歳とする提案をしています。日本でも、愛知県豊明市が、子どもに限らずスマホ利用について1日2時間を目安とする努力義務を定めた条例で話題になりました。
コラム第898号:「銃声検知システムShotSpotterと刑事手続における技術的中立性」
第898号コラム:尾崎 愛美 理事 (筑波大学ビジネスサイエンス系准教授)
題:銃声検知システムShotSpotterと刑事手続における技術的中立性
銃声検知システム「ShotSpotter」は、米国カリフォルニア州に拠点を置くSoundThinking社(旧ShotSpotter社)が提供する銃声検出システムであり、公共施設、街灯、商業ビル、ショッピングモール、アパートメント、携帯電話基地局等にセンサーを配備(1マイル四方の範囲に20~25個程度)することにより、銃撃が起こった場所を60秒以内に特定するものである。センサーにはマイク、GPS、メモリ、処理装置、データ送信用のセル通信機能が内蔵され、トリガー音の1秒前から録音を開始し1秒後に停止する仕組みとなっており、センサーが反応すると訓練を受けた専門家が音声の発生源と発砲音の有無を判定する。警察はスマートフォンまたは指令室経由でアラートを受信し、30~45秒以内に現場に到着するようになっている。ShotSpotterは、全米90を超える都市で導入され、報道によれば、ShotSpotterを導入したオークランド市では銃撃事件の件数が急減したという。
しかしながら、ShotSpotterの精度とその技術的中立性には深刻な疑義が呈されている。以下では、具体的な事例を紹介することとしたい。
