コラム第881号:「不正被害額と不正取引額」
第881号コラム:松本 隆 理事(株式会社ディー・エヌ・エー IT本部 セキュリティ部 サイバーアナリスト)
題:不正被害額と不正取引額
近年発生した証券口座乗っ取り事案は、その手口の巧妙さと被害の広がりにおいて、従来の金融犯罪とは一線を画すものであった。今回の報道では各社が「不正取引額」や「不正売買額」が「5000億円超」という見出しで伝えており、ネットでは「なぜ異なる被害額を足し合わせるのか」「被害を水増しして報道しているのではないか」といった意見も散見される。私はこの不正取引額や売買額という指標での報道は、一般向けの報道として的外れではないと考えている。ともあれ、「不正被害額」と「不正取引額」について検討するには、今回の証券口座乗っ取り事案における犯罪者の新たな収益化スキームを理解することが重要である。