第3号コラム「元祖デジタル・フォレンジック考」
第3号コラム:大橋 充直 氏 (ハッカー検事)
題:「元祖デジタル・フォレンジック考」
今は,デジタルフォレンジックと言えば,コンピュータ(サーバ)内のアクセスログや各種ログというデジタルデータを証拠化するものと一般には理解されているようである。その御先祖様は何であろうか。実は刑事法の分野では,30年以上前からデジタルデータの証拠化つまり犯罪立証の証拠としてデジタルデータが使われてきた。ただし,プリントアウトしたペーパーベースであるが(笑)。
それは,固定電話の課金情報すなわち通話履歴である。また,ときに,110番の逆探知というトレーシング(トレースバック)もマスコミに報道されていた。もちろん,手作業のトレースバックをクロスバ交換器に対して行って逆探知で犯人を追う,というところまで行けば,戦後犯罪史を飾る「よしのぶちゃん誘拐事件」までたどり着くであろう。
当時から電話交換が発信番号パルスというデジタルデータで自動接続されていたから,身代金目的幼児誘拐事件という特異重大事件から,酔っ払いが酔った勢いで110番に爆破予告や放火予告を行うという間の抜けた脅迫事件まで,既にデジタルフォレンジックが大活躍していたわけである。とくに,身代金目的の金銭要求電話では,犯人性を特定する証拠として,声紋つまり今風に言えば生体認証が実用化を始めた。記憶では既に昭和30年代から実用化されていたはずである。
ときは流れ,乱暴に言えば,懐かしきIBM360のスペックと同等以上のコンピュータシステムが携帯電話に当然のごとく内蔵され,警察現場ではあらゆる犯罪で犯人や関係者の携帯電話のデータ解析に余念がない。日本でも携帯電話が1人1台の時代に突入し,犯罪の何らかの痕跡が携帯電話内臓メモリに,通話履歴やメール送受信履歴として残るようになったからである。
ヒト・モノ・カネに「通信」が加わり,経営4大要素や犯罪4大要素となった昨今,デジタルフォレンジックの元祖が通信履歴だったことに思いを致す感慨にふけってみた。
元祖デジタルフォレンジック大賞を電電公社(現NTTグループ)に捧げたい。
【著作権は、大橋氏に属します】

