第405号コラム:手塚 悟 理事(東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 教授)
題:「『サイバーセキュリティ国際シンポジウム-重要インフラ対策とTOKYO2020に向けた戦略-』に参加して」

2016年2月29日(月)、「サイバーセキュリティ国際シンポジウム-重要インフラ対策とTOKYO2020に向けた戦略-」が開催された。小生は、本シンポジウムの実行委員として、また学術界から見たパネルディスカッションのコーディネータとして参加した。

本シンポジウムは、昨年の8月に慶應義塾大学が全塾研究センターとして「サイバーセキュリティ研究センター」を設立したため、その記念行事として開催された。概要は、「国際的な産官学連携を通して、重要インフラや情報共有等に関するサイバーセキュリティの専門家と共に、政策・運用・技術等についての意見交換や今後のあるべき姿の検討を行うことを意図している。このセンターが、米国・英国をはじめとした海外の産官学の連携を図り、『人』の安心と安全のための重要インフラ等を守るリーダとしての役割を担うことができれば幸いである。」とのことである。

本シンポジウムのプログラムは、以下のような産官学の主要メンバで構成された。

1. 米英のそれぞれの公使の挨拶
2. 日米英の政府関係者の基調講演と講演
3. 日米英の企業関係者の講演とパネルディスカッション
4. 日米英の大学関係者の講演とパネルディスカッション

1. 米国英国大使館それぞれのNo.2の立場の公使からご挨拶をいただいたことより、如何に各国がサイバーセキュリティに対して関心が高いかを伺うことができた。

2. 米国はDHS(Department of Homeland Security)から、政策を担当しているCheryl Davis女史より米国のサイバーセキュリティ政策についての基調講演をいただいた。また、英国からは、英国の外務省の大臣へのアドバイザーであるRobin Grimes教授より英国のサイバーセキュリティ政策についての基調講演をいただいた。日本からは、NISCの谷脇審議官に基調講演に引き続いて、警察庁からは河原警視長、総務省からは大森室長、経済産業省から瓜生室長にそれぞれ政府のサイバーセキュリティに対する取り組み状況について講演をいただいた。

3. 米国英国を代表する企業からの講演と、日本企業を含むパネルディスカッションを行った。具体的には、本シンポジウムでのテーマでもある重要インフラ対策に対する取り組みや2020年に日本で開催される東京オリンピック・パラリンピックに対する動向等について議論を展開した。

4. 米国英国を代表する大学からの講演と、日本を代表する東京大学(急遽欠席)、早稲田大学、情報セキュリティ大学院大学、主催の慶應義塾大学を含むパネルディスカッションを行った。具体的には、各大学での「サイバーセキュリティ人材育成」に対する教育カリキュラム等について説明があった。議論としては、「情報系」のサイバーセキュリティ人材育成はまだ十分とは言えないまでもどうにか各大学で進めてきているとのことであったが、「制御系」のサイバーセキュリティ人材育成に関しては手付かずの状態であるとのことであった。これに関しては、今後は産業界と連携してサイバーセキュリティ人材育成を計画しなければいけないとの結論となった。

以上のことより、今回のシンポジウムは、国際的にもサイバーセキュリティに対する各国の取り組み状況を知るとともに、我が国の状況の全体を把握するのには、大変良いタイミングで開催されたと感じた。また、日米英の連携の重要性を改めて確認することができた機会でもあった。

今後は、我が国において開催される2020年の東京オリンピック・パラリンピックに対するサイバーセキュリティ対策の備えを、産官学挙げて総合的に取組んでいくことが重要であることを再認識する場となった。

【著作権は、手塚氏に属します】