第145号コラム:芝 啓真 幹事((株)フォーカスシステムズ フォレンジックセキュリティ室)
題:「公開メールデータ」

「エンロン事件」をご存じの方は多いと思います。総合エネルギー取引とITビジネスを行っていたエンロン社が、不正経理・取引が発覚したことにより、2001年12月に破たんした事件です。事件の詳細はここでは省略させて頂きますが、ワールドコムの事件と合わせて、上場企業会計改革および投資家保護法(通称SOX法)が制定される要因の一つとなり、また同社の不正に関わっていた大手監査法人アーサー・アンダーセンが解散するなど、多大な影響を及ぼした事件です。(およそ10年前の事件になることをあらためて知り、時の流れの早さを実感しました。)

また、このコラムをご覧になられている方の中には、EDRM(The Electronic Discovery Reference Model)をご存知の方もいらっしゃるかと思います。eDiscovery(電子情報開示)における処理フローのガイドラインを示すものです。このガイドラインはhttp://edrm.net/にて公開されていますが、このサイトでは、eDiscoveryを効率よく進めるためにいくつかのプロジェクトが行われています。これらプロジェクトは、複雑なeDiscovery処理フローをある程度標準化し、処理の品質を高め、eDiscoveryにかかるコストを削減することを目的としています。

「エンロン事件」「EDRM」という2つの単語とこのコラムのタイトルから、すでにお分かりになった人もいらっしゃるかと思いますが、現在EDRMでは8つのプロジェクトが進行しています。この中の1つにData Setプロジェクトがあり、そのプロジェクトでは、さまざまなテストデータが公開されています。そのデータの一つに、冒頭に述べたエンロン社のメールデータがあります。ZIPファイルの状態で百数十GBものメールデータが公開されています。
中には元経営陣のメールも含まれており、当時を伝える生のデータとしても、またさまざまな目的に利用できるサンプルデータとしても非常に有益なものです。

以前、このデータのことを初めて知ったときはとても驚きました。現在はエンロン社はないとはいえ、実際にビジネスにおいて使用されていたメールデータを誰でも閲覧可能な状態にしているからです。これも米国と日本の文化の違いの一つと言えるのかもしれません。

最後に、これらのデータをご利用・閲覧される場合は、ウィルス等が含まれている可能性が十分に考えられますので、お気をつけて自己責任でお願い致します。

【著作権は芝氏に属します】