第160号コラム:宮坂 肇 理事(株式会社NTTデータ技術 開発本部
                 ITアーキテクチャ&セキュリティ技術センタ NTTDATA-CERT
                              兼 品質保証部 情報セキュリティ推進室)
題:「情報の大切さと正しさが求められる社会」

「情報の信頼性」という用語を使うと学術的な領域での議論になると思われるので、柔らかめの内容とするために「情報の大切さと正しさが求められる社会」というタイトルで話題を進めたいと思う。

普段皆さんが必要な情報をどのように入手していますか? 新聞、テレビ、雑誌などが20年前ほどは当たり前だったのが、インターネットや携帯電話の普及とともに変化し、この数年に登場したスマートデバイス(ここではスマートフォン、タブレット端末を指す)により、ネット情報を何時でもどこでも入手し活用することが定着してきた。さらに、Twitter や FaceBook などのソーシャルメディアの登場により、個人個人が気軽に、簡単に情報提供する、情報交換することが簡単に行われ、さらにスマートデバイスの普及によりソーシャルメディアの活用範囲が広がってきた。また、企業もソーシャルメディアをマーケッティングの一つの手段として広く使われてきている。これらにより、情報の量や情報の伝達速度が加速的に増大していることは言うまでもない。

一方、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、筆者も東京都内を移動中に地震に遭遇し、家族の安否状況の確認や会社の被災状況などは携帯電話に頼ることになり、発信規制や救急電話等の優先のため利用を控え、公衆電話(数が少なくなっていることを実感)も長蛇の列で連絡手段がとれない状況が長時間続いた。何が発生し、どのような状況なのかを知り得る手段が、当時は、携帯電話のワンセグでのニュース番組やソーシャルメディアなどのネット情報が頼りであった。家族や会社との連絡は、ショートメッセンジャーなどでの連絡が唯一のものであった。日頃は携帯電話やメールは常に使える状況であり、ネット情報も入手し易い。しかしながら、非常事態の際には、「必要な情報」すら手に入りにくくなり、正しい情報か誤った情報かを判別しにくく、自分自身を安全な行動を行うための判断する情報がないという状態に置かれることを身を挺して把握し、「情報の大切さ」を痛感した。

震災以降も、余震や津波、原発などの情報が錯綜しているのはご承知の通りかと思いますが、特に、ソーシャルメディアやメール等では、デマ情報や震災情報を偽ったウィルス付きメールなどが悪質な情報も増加している。国民一人一人も、この数ヶ月の経験から「情報の大切さと正しさ」を欲しているものと思われる。

正しい大切な情報を必要な人に伝達しようという取り組みが各所で行われており、その一つを紹介する。“みんなでつくる復興支援プラットフォーム http://sinsai.info/ ” である。このサイトは、オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパンが主管となり、OpenStreetMap Japan の有志やボランティアのメンバで運営されている。現在は100名以上におよびボランティアスタッフの力を借りているとのことである。このサイトでは、これらのスタッフが正しい情報を必要な人に提供するために情報の内容確認などを行っている。このサイトは震災直後から運営されており、様々なメディアでも取り上げられている。

情報が氾濫している社会で、スピードも重要であり、情報そのものの大切さ正しさが一層に求められるようになってきている。情報の正確性を確保するための技術開発も必要であるが、情報を正しく正確に伝える文化も形成していく必要があるのではないかと考える。

【著作権は宮坂氏に属します】