第450号コラム:小山 覚 理事(NTTコミュニケーションズ株式会社 情報セキュリティ部 部長)
題:「『DF普及状況調査』WGの取り組みについて」
本コラムでは、今期第13期に新しく発足した「デジタル・フォレンジック普及状況調査」WGの取り組みについてご紹介します。主査は筆者が担当させて頂くことになりました。何卒よろしくお願いします。
さて、デジタル・フォレンジック研究会が発足して13年が過ぎ、皆様のお陰で「デジタル・フォレンジック(以下、DFと記します)」は市民権を得たように感じます。しかしDFは情報漏洩や不正アクセスなど問題発生時の解決手段として利用されることが多く、外部に対して自慢する話でもないためか、その普及状況はセキュリティ製品やサービスと比較してもあまり知られていないようです。
そこで、DF製品やサービスの導入・使用状況や、DFに対する関係者の認識や、ユーザの期待を調査することで、IDF活動への反映や会員および企業・団体会員のインセンティブとなるデータをまとめることになりました。
まず取り組みの第一弾として、デジタル・フォレンジック・コミュニティ2016の参加者にアンケート調査を行いましたので、簡単にご紹介します。
●質問:ご自身がDFと関わる立場は?
・自組織に導入・活用する立場 ・・・ 59%
・顧客から業務を受託する立場 ・・・ 22%
・ツールや装置を提案・営業する立場 ・・・ 6%
・その他 ・・・ 14%
◎筆者の感想
ユーザ側の立場でコミュニティ2016に参加された方(自組織に導入・活用する立場)が、6割近くいたことはDFへの関心の高さが伺えますね。
●質問:DFの活用経験は?
・活用したことがある ・・・ 43%
・自組織で活用したが当事者ではない ・・・ 18%
・活用を検討しているが実績はない ・・・ 24%
◎筆者の感想
自身または自組織でDFを活用した経験がある方が6割、活用を検討している人が2割超いらっしゃることから、DFは技術導入の黎明期を通過し、成長期又は普及期に入っていると思われます。今後も定点観測的に調査を継続していきたい項目です。
●質問:DFのノウハウは社内や業界で共有されていますか?
・当事者以外に共有されることはない ・・・ 55%
・勉強したいが教材がない ・・・ 30%
・積極的に共有されている ・・・ 15%
◎筆者の感想
情報共有と教育に課題を感じている方が8割を超えています。DFが扱う情報がセンシティブなものが多いことが影響しているのでしょうか。一方で15%の方が「積極的に共有されている」と回答されていますので、情報共有の進め方についても検討し共有していく必要性を感じました。
●質問:DFの有益な活用分野はどこですか?
・不正アクセス発生時の調査 ・・・ 29%
・マルウェア感染時の調査 ・・・ 29%
・情報漏洩時の調査 ・・・ 25%
・eディスカバリ対応 ・・・ 8%
◎筆者の感想
DFはセキュリティインシデント対応の一環として活用される機会が多そうです。一方で、8%がeディスカバリ対応と回答しており、グローバル化する企業の課題が具体化しつつあるように感じました。
●質問:DFが有望なビジネス分野はどこですか?
・IoT ・・・ 42%
・金融 ・・・ 27%
・医療・介護 ・・・ 18%
・AI(人工知能) ・・・ 12%
◎筆者の感想
大量のデータを処理するIoTや、ブロックチェーンやFinTechなど新しい金融サービスへの応用、機微情報を扱う医療や介護、そしてAI(人工知能)への適用など、DFの未来は明るそうですね。
アンケートのご紹介は以上です。アンケートにご協力いただいた皆さんに厚く御礼を申し上げます。
今後の「DF普及状況調査」分科会の活動については、今回のアンケート結果を報告書にまとめる作業と、コミュニティ2017に向けて世の中の最新動向を反映したアンケート項目の検討などの準備を進めていきます。分科会は隔月開催の理事会と同じ日に開催させていただきますので、興味のある方や調査にご協力を頂ける方は振るってご参加下さい。
これからも「DF普及状況調査」分科会を宜しくお願いします。
【著作権は、小山氏に属します】