第544号コラム:手塚 悟 理事(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授)
題:「第7回慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』について」

2015年8月に、慶應義塾大学は全塾研究センターとして「サイバーセキュリティ研究センター」を設立しました。その記念行事として2016年2月に開催したサイバーセキュリティ国際シンポジウムを皮切りに、本年11月に「第7回慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』を開催しましたので、この内容についてご紹介します。

今回のシンポジウムは、約1年半後に迫りました2020年の東京オリンピックに対して、「2020オリンピックに向けて、サイバーセキュリティは万全か?-トラストな環境に向かって-」というテーマの下、2日間にわたり開催いたしました。併せて、現在我が国において研究開発が進められているSociety5.0、サプライチェーンさらにはトラストサービスについても活発に議論をいたしました。

米国大使館、英国大使館、イスラエル大使館、EU代表部の大使等のご出席をいただくと共にご支援ご協力を得て、今までに増して国際色豊かなシンポジウムとなりました。具体的には、5トラック、26セッションで開催し、前回に比べて2倍の規模となりました。また、各界の著名人が壇上に上がり、大いに盛り上がりました。さらに、シンポジウム開催の3週間前からは、InterNational Cyber Security Center of Excellence(INCS-CoE)の25大学において、Online CTFを実施し当日優勝者を発表しました。また、今回も、招待者のみのTable Top Exerciseを実施し大変好評を博しました。次回以降も実施する予定です。

慶應義塾大学が第3回シンポジウムで設立した、世界初の日米英の主要大学をメンバとしたサイバーセキュリティの国際版CoEであるInterNational Cyber Security Center of Excellence(INCS-CoE)は国際的にも広がりを見せ、今回のシンポジウムでは、成果として、White Paperを下記の3つ公開いたしました。今回ご参加いただきました方々には、この3つのWhite Paperの印刷版をお持ち帰りいただきました。

以下、その3つのWhite Paperの内容についてご紹介します。

  1. Internet of Things and Operational Technology(IoT and OT)

日本、米国、英国の「IoT and OT」の状況報告を行った。具体的には、各国間のギャップ分析を行い、そのギャップ分析を基に、国際間での共通部分とは何かを検討した。今後は、あるべき姿についても議論を深めていく予定である。

  1. Global CTF : Country2Country(C2C)5-year Plan

日本、米国、英国、イスラエル、インドネシアのINCS-CoE参画大学の学生によるGlobal CTFを5年計画で実施する。具体的には、第1次スクリーニングとして、Online CTFを実施し、このスクリーニングに通った学生を、年1回開催する大学に集合して、Face2FaceのCTFを実施し優勝を競う。現在のところ、下記のような開催大学を予定している。

2019年 米国:MIT
2020年 英国:ロイヤルホロウェイ大
2021年 日本:慶大
2022年 イスラエル:テクニオン大
2023年 現在候補大学を選択中

  1. International Mutual Recognition Technical Working Group(IMRT-WG)

日本、米国、EUの3大経済圏において、トラストサービスの相互運用性を実現するための技術的検討グループを立ち上げたので、その内容を発表した。具体的には、電子署名、電子認証、タイムスタンプ等のサイバー空間での安心安全なトラスト基盤を実現し、それらを各国、地域で相互運用できるようにすることで、デジタルエコノミー、デジタルトランスフォーメーションを実現する。

以上のように、7回開催して参りましたサイバーセキュリティ国際シンポジウムは、回を重ねるごとにその内容が充実し、我が国のサイバーセキュリティ関連のシンポジウムにおいて、大変重要な地位を占めるようになってきたと実感しております。慶應義塾大学という「学」で開催した国際シンポジウムが、産官学の分野を超えたシンポジウムに発展し、さらに国際的なシンポジウムに脱皮を始めてきていることを大変嬉しく思っております。慶應義塾大学としては、今後さらに「サイバーセキュリティ国際シンポジウム」をより一層充実した内容にするとともにシリーズ化して開催して参りますので、多くの皆様が参加されることを期待しております。

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