第602号コラム:手塚 悟 理事(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
題:「第9回慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』について」

2015年8月に、慶應義塾大学は全塾研究センターとして「サイバーセキュリティ研究センター」を設立しました。その記念行事として2016年2月に開催したサイバーセキュリティ国際シンポジウムを皮切りに、昨年12月に「第9回慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』を開催しましたので、この内容についてご紹介します。

 

トラストサービスのテーマについては、前回7月開催の「第8回サイバーセキュリティ国際シンポジウム」において議論をしたが、現在益々、日本のみならず米国、EU等においても議論が高まってきている。これに合わせて、「Data Free Flow with Trust(DFFT)」についても、日本の提案によって、国際的に議論が行われている。

9回目を迎える本サイバーセキュリティ国際シンポジウムでは、さらに「多国間」の議論に焦点を当てたトラストサービス等に焦点を当て、日本、米国、英国、EU、イスラエル、オーストラリア等の有識者ならびに関係者等が一堂に介し検討議論した。議論内容には以下が含まれる:Data Free Flow with Trust(DFFT)は、①どのように国際間で相互協調して信頼を得ていくか、②どのようにIoTや5G等の新技術を日米欧で標準化し国際的に実現していくか、③どのようにデジタルエコノミーの国際連携可能な仕組みを日米欧が共同で作れるか、④どのように国家間の信頼できるデータを共有していくか。さらに、継続するトピックとして、グローバルサプライチェーン、AI、ビッグデータ、IoTなどを駆使したSociety 5.0への取り組み等を議論した。

第1日目は、大ホールにて終日の全体会議を予定し、基調講演や全体パネル等、各国の状況や重要課題について議論した。第2日目は、基調パネルから始まり、Society5.0、サプライチェーン、ベストプラクティス等のテーマごとやINCS-CoE所属の著名教授を含めた世界最高峰の専門家をお招きし、より深いパラレルセッションを産官学の立場から実施した。

グローバル社会において、さらにコミュニティーが成長し重要課題を共有する仲間が集い、さらに新しい人々も加わり、闊達で打ち解けた信頼関係を醸成することを願っている。

1日目:2019年12月11日(水)9:00-18:30 全体会議:基調講演、全体パネル

全体会議:村井純(慶應)、手塚悟(慶應)、バッド・ロス(笹川平和財団米国)、日本政府、在日米国大使館、駐日英国大使館、駐日イスラエル大使館、駐日欧州連合代表部、在日オーストラリア大使館からVIP

基調講演と全体パネル:米国、英国、イスラエル、EU、オーストラリア、日本などの政府機関や企業VIP
多国間トラスト・サービス、DFFT
日米欧国際的相互認証、など

(レセプション:18:30-20:00)

2日目:2019年12月12日(木)9:00-18:30 全体基調パネルと個々パラレル・パネル

全体基調パネル:デニス・ブレア(笹川平和財団米国)、マイケル・チャートフ(元米国DHS長官)、欧州、英国、日本VIP、など

パラレル・セッション:産官学による
Society 5.0
グローバル・サプライチェーン
5Gセキュリティ、など

 

米国大使館、英国大使館、イスラエル大使館、EU代表部の大使等のご出席をいただくと共にご支援ご協力を得て、今までに増して国際色豊かなシンポジウムとなりました。具体的には、5トラック、約20セッションで開催し、前回に比べて2倍の規模となりました。また、各界の著名人が壇上に上がり、大いに盛り上がりました。

慶應義塾大学が第3回シンポジウムで設立した、世界初の日米英の主要大学をメンバとしたサイバーセキュリティの国際版CoEであるInterNational Cyber Security Center of Excellence(INCS-CoE)は国際的にも広がりを見せ、今回のシンポジウムでは、新たなステージに発展いたしました。具体的には、日本からは慶應義塾大学、九州大学、米国からはノースイースタン大学、UMBC大学、英国からはインペリアル大学、ロイヤルホロウェイ大学の6大学が、学長レベルでのサインに基づきボードを設立し、今まで以上のより深い活動をすることにいたしました。

その一つの表れとしては、Global CTF:Country2Country(C2C)5-year Planとして、日本、米国、英国、イスラエル、オーストラリア、インドネシアのINCS-CoE参画大学の学生によるGlobal CTFを5年計画で実施する。具体的には、第1次スクリーニングとして、Online CTFを実施し、このスクリーニングに通った学生を、年1回開催する大学に集合して、Face2FaceのCTFを実施し優勝を競います。現在のところ、下記のような開催大学を予定しています。

2020年 英国:ロイヤルホロウェイ大
2020年 イスラエル:テクニオン大
2021年 米国:MIT
2022年 日本:慶大
2023年 オーストラリア:現在候補大学を選択中

2020年の英国ロイヤルホロウェイ大での実施は、7月5日(日)-7日(火)の3日間の開催を予定しており、世界のトップ大学の学生が集い切磋琢磨する計画です。

以上のように、9回開催して参りましたサイバーセキュリティ国際シンポジウムは、回を重ねるごとにその内容が充実し、我が国のサイバーセキュリティ関連のシンポジウムにおいて、大変重要な地位を占めるようになってきたと実感しております。慶應義塾大学という「学」で開催した国際シンポジウムが、産官学の分野を超えたシンポジウムに発展し、さらに国際的なシンポジウムに脱皮を始めてきていることを大変嬉しく思っております。慶應義塾大学としては、今後さらに「サイバーセキュリティ国際シンポジウム」をより一層充実した内容にするとともにシリーズ化して開催して参りますので、多くの皆様が参加されることを期待しております。

【著作権は、手塚氏に属します】