第745号コラム:辻井 重男 理事 顧問(中央大学研究開発機構 機構フェロー・機構教授)
題:「メタバースに向けて 三止揚・MELT-Upしよう」

私が暗号の研究を始めたのは、1980年前後、現代暗号の勃興期で情報セキュリティの基盤として持て囃され、大蔵省の局長さん達に講演し、「素数ってそんなに沢山あるのですか」と玄人裸足の質問を受けたりしました。公開鍵暗号が、IoTの真正性保証・本人確認の社会基盤になった現在、社会の関心は薄れました。世の常ですね。
1990年代、私は逆に、「暗号=情報セキュリティのように言われるが、暗号だけでセキュリティが保てるわけがない。セキュリティ保険等も必要だろう」と考え、ある学会誌の招待論文に「情報セキュリティ総合科学の構築」を提案しました。2004年度に設立された「情報セキュリティ大学院大学(IISEC)」の初代学長を依頼された際、大学の理念を「三止揚・MELT-Upを思考基盤・実現方策とする情報セキュリティ総合科学」に決めました。
今、世界は、「現実世界」から「現実世界×仮想世界」へと大きく広がろうとしています。
IoTは、現実世界と仮想世界を繋ぐ何百億にものぼる接点になり、また、経済安全保障の基盤でもあります。それらの真正性保証はIoT・メタバースのアバター等で益々、生命・財産に関わるようになるでしょう。
私は、現在、「一社 セキュアIoTプラットフォーム協議会」理事長としてIoTの真正性保証に、また、個人的研究としては、本人確認の完全性・健全性・零知識性の達成について
三止揚・MELT-Up、そして情報セキュリティ総合科学の立場から考えています。

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