第22回デジタル・フォレンジック・コミュニティ2025 メルマガ7号
今回はコミュニティ2025での「DF若手優秀研究者表彰」についてご案内いたします。
次回メルマガ第8号では、「来場方法」についてご紹介する予定です。
【デジタル・フォレンジック優秀若手研究者表彰】
デジタル・フォレンジック研究の活性化を目的として、デジタル・フォレンジックに関する優れた若手研究者を表彰するために第14期より設けられたものです。
本年もデジタル・フォレンジック・コミュニティの2日目12/9(火)10時から表彰式を実施いたします。
今回受賞された方は、下記となります。
【最優秀賞】
九鬼 琉 様(横浜国立大学大学院 環境情報学府 情報環境専攻)
宮本 岩麒 様(横浜国立大学大学院 環境情報学府 情報環境専攻)
「セキュリティホールか意図的なバックドアか?IoT機器におけるマニュアルに記載されていないTelnet・SSHサービスの調査」
コンピュータセキュリティシンポジウム2025 (CSS 2025)
受賞理由
IoT機器の中には外部からアクセス可能な Telnet や SSH サービスが有効化されているにも関わらず、マニュアルに記載されていないためIoT機器の利用者自身がそのことに気付けない製品が販売されている。
このようなIoT機器のバックドアに対して、実際にファームウェアを解析して、バックドアの有無の実態調査を大規模に行なっている。
調査の結果、バックドアがあった場合には、メーカーにフィードバックするところまで行なっており、問題解決につながる有益な行動を評価したい。
【優秀賞】
大前 俊暁 様(株式会社GRI 投稿時東京電機大学)
「社会共同体における対リスク施策決定議論を支援するAIシステム」
情報処理学会論文誌,66(9),pp.1218-1234,2025-09-15発行.
(大前俊暁,山田剛一,増田英孝,佐々木良一)
受賞理由
Social-MRCは、多人数の関与者に対するリスクコミュニケーションを可能とする合意形成システムである。しかし、一般関与者の意見が多すぎるとオピニオンリーダが意見を十分把握できない問題と、逆に意見が少なすぎる場合に議論が深まらない問題があった。
本研究では、大規模言語モデル(LLM)を活用し、議論予測、意見抽出、意見補完機能を持つ議論支援AIシステム「新Social-MRC」の提案・実装・評価を行い、その有効性を確認した。
LLMを使用するにあたり、意見の抽出や補足という複雑なタスクを一度の処理で行わせることは、思考の飛躍や誤りを招くリスクがある。このようなリスクを回避するために、Chain-of-Thought(CoT)プロンプティングを活用し、タスクを1.議論予測 2.意見抽出 3.意見補完 の3つに段階に分け、中間生成物として収束予想込みの議論を明示的に保持する。この構造により、どの意見がどの根拠から抽出・補完されたのかを事後に検証可能とし、意思決定の透明性とトレーサビリティを確保する点に新規性がある。本成果は、自治体のパブコメや企業のIR/監査、事故調査における論点整理など、証拠性・再現性・即応性を要する場面への展開が期待できる。
【優秀賞】
Guo Yuchen (郭 宇辰 )様 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻 )
Guo, Y., Dou, Z., Nguyen, H. H., Chang, C. C., Sugawara, S., & Echizen, I. (2025).
「Measuring Human Involvement in AI-Generated Text: A Case Study on Academic Writing」
International Joint Conference on Neural Networks (IJCNN 2025), Rome, Italy, 10 pages, June 2025.
受賞理由
大規模言語モデル(LLM)の進展によって、人間とAIの協業によるレポートや学術論文の執筆が急速に普及しつつある。一方で、教育現場や学会において、このような文章から、人間とAIの協業度合いを判断するニーズが顕在化しているが、従来手法は、文章全体がAI生成か人間作成かの二値判定を行うため、ニーズに対応できていなかった。
本研究は、(1)LLMに多様なプロンプト(人間作成)を入力して生成した文章に対して、人間の関与度を定量化する指標を提案し、当該指標に基づいた多様な学術文章からなる大規模データセットを構築した。さらに、(2)RoBERTaベースのdual-headモデルを提案し、(1)のデータセットをモデル学習に用いることで,入力された文章から人間の関与度を回帰的に推定するとともに、単語毎に人間の寄与度を推測し、モデルの出力における説明可能性を実現した。提案モデルを用いた実験では、従来モデルと比較して、提案モデルは人間とAIの協業による学術文章の推定精度を大幅に向上した。
本研究成果は、研究活動において人間とAIが協業するAI4Research時代の学術不正の対策への貢献が期待される。
【優秀賞】
阪田 恒晟 様(株式会社 日立製作所 研究開発グループ 東京科学大 工学院 システム制御系)
「重要インフラのGRC対応強化に向けた連鎖ダイアモンドモデルの提案」
(Chained Diamond Model for Enhancing GRC Practices in Critical Infrastructure)
コンピュータセキュリティシンポジウム2025 (CSS 2025)
受賞理由
本研究は、重要インフラのセキュリティ強化に資する研究として「連鎖ダイアモンドモデル」を提案し、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)
対応の高度化に大きな貢献を果たしている。従来、重要インフラにおけるリスク評価やフォレンジック分析は静的かつ断片的であり、実運用ログや検知情報を時系列的・因果的に整理する仕組みは未整備であった。同氏の研究は、侵入検知システムのログを拡張ダイアモンドモデルに変換し、攻撃シナリオを因果的に連鎖させることで、制御システムの国際標準IEC 62443の規格要件と動的に対応付ける枠組みを構築した点に新規性がある。評価実験では、総当たり攻撃および中間者攻撃のシナリオを対象に、14件のクエリから6件の要件でアラートを検出、計7個の拡張ダイアモンドを生成し、28ノードからなる連鎖モデルへ統合した。この結果、優先的に是正すべき要件の抽出が可能となり、従来のフォレンジックを定量的かつ規格準拠的に発展させ得ることを実証した。理論的独自性と実用性を兼ね備えた成果は今後のGRC自動化やサイバー防御基盤の発展に寄与するものであり、若手研究者として本表彰にふさわしい。
なお、選定は「デジタル・フォレンジック優秀若手研究者賞」規定のもとで行っております。
【「デジタル・フォレンジック優秀若手研究者賞」規定 概要】
1 IDF理事会が選定委員会を設置し、理事の中から選定委員長を任命する。
2 選定委員長は、選定委員(複数名)を指名する。
3 選定委員会は、デジタル・フォレンジックに関する優れた若手研究者を理事会に推薦し、理事会承認後、当該研究者の表彰を実施する。
4 表彰対象者の推薦
デジタル・フォレンジック研究会理事は、その年に実施された学会発表や掲載された学会論文等の筆頭者を対象とし、その年の10月末までに表彰候補者名、対象となる学会発表テーマまたは論文名及び500字以内の推薦理由を記述した推薦書を用いて表彰候補者を推薦する。
なお、表彰を実施するにあたっては事前に表彰候補者本人の承諾を得るものとする。
5 表彰区分
(1)最優秀表彰者
①選定委員会は、表彰候補者の中から最優秀若手研究者1名を選定する。
②受賞者には、「表彰状(最優秀賞)」と「賞金」5万円を授与する。
(2)優秀表彰者
①選定委員会は、優秀若手研究者を複数名選定することができる。
②受賞者には、「表彰状(優秀賞)」を授与する。
6 表彰対象者の年齢制限
表彰候補者は表彰の時点で40歳未満とする。
今年の選定委員長は、佐々木 良一 理事、選定委員は、上原 哲太郎 会長、
辻井 重男 顧問、湯淺 墾道 副会長、小向 太郎 理事、佐藤 慶浩 理事でした。
改めまして、受賞された方々にお祝い申し上げ、益々のDF研究の深化と拡大を期待致します。また、表彰式では、コミュニティ2025参加者の皆様と共に受賞をお慶びしたいと思います。
なお、コミュニティの参加申込は、随時受付けております。
皆様のお申込みをお待ちしております。
■第22回デジタル・フォレンジック・コミュニティ2025テーマ:
「フェイクとデジタル・フォレンジック」〜真実を見極める技術と戦略〜
・日程:12/8(月)~12/9(火)
・メイン会場:品川ザ・グランドホール
品川駅 港南口より徒歩5分
https://tg-hall.com/
・開催方式:会場参加(オンラインはありません)
・定員:250名
・参加費:IDF会員¥10,000、一般¥20,000、学生¥5,000
※本年より一般価格を¥20,000に変更しました。
・締切:11/25(火)(ただし、満員になり次第、締め切ります。)
【デジタル・フォレンジック・コミュニティ2025ご案内ページ】
https://digitalforensic.jp/community-22-2025
【参加申込フォーム】
https://digitalforensic.jp/form-community-22-2025
■各種ポイントの申請用紙について
参加お申込み時に受講証明書「要」とされた方には、12/10(水)以降1週間程度で
次項の受講証明書類一式をメール添付にてお送りいたします。
なお、開催後に受講証明要否の変更や再発行はいたしかねますのでご注意ください。
■受講証明書類について
メールにてお送りする<ポイント申請用紙>は以下の資格に対応したものとなります。
・ACFE
・DF実務者資格(CDFP-P)
・ITコーディネータ
・ISACA
この他に、
・IDF事務局発行の<受講証明書>
も含めてお送りしますので、必要に応じてご記入の上各種申請等にご利用ください。
これまでのメールマガジンは以下でご覧頂けます。
https://digitalforensic.jp/category/community/

