第19期
コラム第752号:「サプライチェーンリスク時代の医療セキュリティとは」
第752号コラム:江原 悠介(PwCあらた有限責任監査法人システム・プロセス・アシュアランス部ディレクター、IDF理事) 題:「サプライチェーンリスク時代の医療セキュリティとは」 様々な報道で目にする通り、2022年も様々な国内の医療機関がランサムウェア被害を受け、患者診療の継続性に影響を及ぼす事案が多発した。直近で最も記憶に新しいものは大阪急性期・総合医療センターであろう。 大阪急性期・総合医療センター( https://www.gh.opho.jp/ )では、2021年のつるぎ町立半田病院における被害事案を受け、外部事業者による院内システムへのリモートメンテナンス機器の脆弱性への対応を行っていた。それにもかかわらず、配食サービスを提供していた外部事業者の業務ネットワークに設置されたVPN装置の脆弱性が悪用され、外部業者の感染被害が、当該業者と拠点間ネットワーク接続していた総合医療Cの院内システムへ拡大するといった、二次感染の被害を受けたものであった。医療機関には電カルや医事会計システムという基幹系システムのみでなく、各診療科の専門的な用途に適した部門システムが様々に導入され、その中には外部事業者とほぼ常時接続型で結びつく外部サービスも多数存在する。 医療機関は機微性の高い患者情報を預かり、それに基づき人の命を扱う業務を提供する。
コラム第751号:「新年のご挨拶」
第751号コラム上原 哲太郎(立命館大学 情報理工学部 教授、IDF会長) 題:「新年のご挨拶」 皆様、新年あけましておめでとうございます。 新型コロナウイルス感染拡大による社会的混乱はようやく落ち着いてきて、我々の社会はWithコロナの新しい生活様式にうまく適応しはじめたと感じます。昨年末の第19回デジタル・フォレンジック・コミュニティも、ハイブリッド形式での開催ではありますが多くの方にオンサイトでご参加頂き、懇親会こそ開けなかったもののコロナ禍前の雰囲気をずいぶん取り戻したようでした。ご参加頂いた皆様、ご講演頂きました講師の皆様、ご協賛頂きました企業の皆様、後援団体の皆様には改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。
コラム第750号:「新・安保3文書と法的課題」
第750号コラム:湯浅 墾道(明治大学公共政策大学院 ガバナンス研究科 教授、IDF副会長) 題:「新・安保3文書と法的課題」 2022年の年の暮れに、デジタル・フォレンジックにも関係する大きなニュースが飛び込んできた。いわゆる安全保障戦略3文書の改訂である。 令和4年12月16日、国家安全保障会議及び閣議において、国家安全保障に関する新たな基本方針である「国家安全保障戦略」等が改正された。このうち国家安全保障戦略については、平成25年12月16日に決定されたものを約10年ぶりに改正し、戦後一貫して憲法第9条の下では保有しないとしてきた反撃能力について保有を明示するなど、日本の安全保障政策を大きく転換させるものである。 このこと自体も大きな法的課題であるが、デジタル・フォレンジックに関係する部分について簡単にコメントしてみたい。
コラム第749号:「ロシアにおける暗号資産での国外送金事情」
第749号コラム:松本 隆 理事(株式会社ディー・エヌ・エー 技術統括部 セキュリティ部) 題:「ロシアにおける暗号資産での国外送金事情」 ロシアによるウクライナへ侵攻から1週間ほどたった2022年3月2日。いつものようにロシア語圏のサイバー犯罪者が集うフォーラムを流し読みしていたところ、あるトピックに目が留まった。【戦争始まったけど手持ちのロシア・ルーブル(以下ルーブル)どうする?】と題されたスレッドは、フォーラムのホットトピックスとして、いくつものコメントがついていた。そこでは、 「ステーブルコインに替えて安定的に資産確保したい」 「Bitcoinなどのメジャーな暗号資産に変えて資産運用したい」 「マネーロンダリングのサービスを利用してEUで現金化したあと海外の資産管理サービスに預けておきたい(※1)」 「どうせ戦争はすぐに終わるから、ローカルの取引所でルーブルを買い叩いて戦争終結後の値上がりを期待したい」 などといった、危機感のないどこか他人事のような議論が展開されていた。
コラム第748号:「ゲーム・チェンジ時代のリーダーシップ」
第748号コラム:熊平 美香 監事 (一般財団法人クマヒラセキュリティ財団 代表理事) 題:「ゲーム・チェンジ時代のリーダーシップ」 若者に向けて、ゲーム・チェンジ時代のリーダーシップについて語った内容を共有させていただきます。 <ゲーム・チェンジ時代に生きる若者> ゲーム・チェンジ時代に生きる若者にとって大切なことは、大人や先輩の意見を聴くべきことと、聴かない方がよいことを、識別することです。長く生きる大人が持つ智慧や、古き良き日本については、先輩の話を聴き、これからの未来を創造するテーマについては、多くの場合、自ら考える方が賢明ではないかと思います。無論、未来を創造するためには、哲学が必要になるため、リベラルアーツに代表される人類の智慧は大切です。しかし、AIやWEB3.0を始めとするテクノロジーやカルチャーについては、先輩の意見はあまり役に立たないかもしれません。