第302号コラム「PC遠隔操作事件:初公判冒頭陳述要旨から読み解く「証拠」とデジタル・フォレンジック」

第302号コラム:松本 隆 理事
(ネットエージェント株式会社 フォレンジックエバンジェリスト)
題:「PC遠隔操作事件:初公判冒頭陳述要旨から読み解く「証拠」とデジタル・フォレンジック」

PC遠隔操作事件は、ネットにつながっている快適さや便利さの裏側、何の落ち度もない個人のPCが誰かに踏み台にされ、悪用されるというリスクを改めて明らかにした。2月12日に行われた初公判において、検察、弁護側、そして被告人それぞれの立場でどのような主張がなされたのかは、われわれ専門家だけでなく多くの方が注目していることだろう。

今回のコラムでは、検察による被告人の犯人性の立証で最も重要だと思われる、「被告人が犯行供用プログラム(以下供用ウイルス)を開発作成したこと」に絞って紹介したい。文字の制限もあり、全てを詳細にカバーすることはできないが、デジタル・フォレンジックの観点から重要と思われる点に若干の解説を加えようと思う。なお、本コラムはあくまで筆者個人の感想であって、所属する組織や団体とは一切関係はない。検察、弁護側及び被告人いずれの側にも立つことなく、技術者として一般に向けて解説するものだ。

第300号コラム「ビッグデータとリーガルテクノロジー」

第300号コラム:守本 正宏 理事(株式会社UBIC 代表取締役社長)
題:「ビッグデータとリーガルテクノロジー」

今やビッグデータという言葉を新聞やWEBの記事で見ない日はないくらい話題になっています。ビッグデータを適切に活用できるか否かが、ユーザー側にとってもサービスや技術を提供する側にとっても企業の将来を左右するのではと思われるほど重要性は増しています。最も、昨今の過熱ぶりは、一度は冷静になって収まるでしょう。しかし、その後は改めて、かつ冷静にあらゆる場面でビッグデータが活用されることは間違いありません。そもそも社会に存在するデータは全てがビッグデータと言っても過言ではないからです。(どれだけの容量がビッグデータと呼ぶべきかという議論はここでは省かせていただきます。)

ビッグデータ活用というと、大手IT企業からなるIT業界が技術的なソリューションを提供し、ビッグデータを持っている企業の事業に役立つ分析をするために活用するという事例が比較的よく見られますし、一般的にも知られています。しかし、我々のような「デジタル・フォレンジックが扱っている事案が実はビッグデータ解析事案だ。」という事を認識している人はほとんどいないのではないのでしょうか?

第299号コラム「INTERPOLが設立するデジタル・フォレンジック・ラボ」

第299号コラム:山田 晃 理事(株式会社サイバーディフェンス)
題:「INTERPOLが設立するデジタル・フォレンジック・ラボ」

INTERPOL(国際刑事警察機構)は、「異なる各国法制度の範囲内で、全刑事警察間における最大限の相互協力の確保と推進、及び、一般法犯罪の予防・鎮圧に効果があると考えられるあらゆる制度の確立・開発を図る(INTERPOL憲章第2条)」ことを目的として、世界各国の警察機関により構成される国際機関であり、フランス中東部の都市、リヨンに本部を置き、現在は190カ国が加盟しています。INTERPOLの活動は、「安全な世界構築のために各国警察機関を結び付ける」ことを目標に、犯罪情報の収集・交換、複数国にまたがる犯罪捜査促進のためのオペレーションの実施、各種会議・プロジェクトの開催、逃亡犯罪人の発見等のための国際手配書の発行等、広範囲にわたっています。

INTERPOLは、今年秋に、「INTERPOL Global Complex for Innovation(IGCI:シンガポール総局)」をシンガポールに設立・開設します。この中には、各加盟国のサイバー犯罪捜査部門と密な連携を図りながら彼らの活動を支援する「INTERPOL Digital Crime Centre(IDCC:デジタル・クライム・センター)」が設置されます。IDCCでは、国際レベルのサイバー犯罪と効率よく対峙するために必要なスキルやツールを、各加盟国のサイバー犯罪捜査部門に提供するなどの支援を行う予定です。

第298号コラム「匿名化情報という青い鳥」

第298号コラム:佐藤 慶浩 理事
(日本ヒューレット・パッカード株式会社 個人情報保護対策室 室長)
題:「匿名化情報という青い鳥」

第272号コラム「ビッグデータ時代におけるパーソナルデータを保護する義務と活用する責任」では、パーソナルデータを保護する法的・道義的義務に加えて、活用する社会的責任もあるという視点を紹介した。その中で個人情報の匿名化に関係する法的な課題を含めた基本的な考え方について触れたが、今回は匿名化について掘り下げる。それについて政府では、IT総合戦略本部にパーソナルデータに関する検討会を設置し、その下に、技術検討ワーキンググループを設置して匿名化について検討したので、その経緯と結果を紹介する。(以下の本文で「」で引用した文章は、政策会議の公開ページ http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/index.html に掲載されているものである)

上位の検討会から下位のワーキンググループへの命題は、「合理的な水準まで匿名化を施されたパーソナルデータについて、法的に通常の個人情報とは異なる取扱い(例:第三者提供に関する同意を不要とする一方、提供先事業者に対して法的な責任を課す等)とすることの可否について検討すべき」(第1回検討会資料3-2)というものであった。これは、すなわち、個人情報を匿名化する加工方法を定めることにより、その加工された情報を、先述のコラムで紹介した第三者提供の制限に該当しない情報として取り扱うことでパーソナルデータの利活用を促進することが狙いであった。そのようなパーソナルデータ利活用にとって幸せの使いである青い鳥を探すワーキンググループが発足したのである。