第815号コラム:植草 祐則 理事
(IDF事務局長、NTTデータ先端技術株式会社 セキュリティ&テクノロジーコンサルティング事業本部 シニアスペシャリスト)
題:「IDFの第21期計画について」 

ようやく気温も上がって来ていよいよ春というこの時期、今年は花粉の猛威に薬も歯が立たず、涙目で過ごしている事務局長の植草でございます。

 さて、事務局長に就任して約一年、様々な業務やイベントのノウハウを引き継ぐために前事務局長に並走して頂いていたのですが、いよいよ独り立ちすることになりました。
 昨年5月のコラム第770号では「20期からは周囲の変化を先取りして当会で必要なものはより機動的に変化させるといった対応を進めて行きます。」と書かせて頂きましたが、これを実践することになります。

 まず第20期の状況ですが、5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行しました。このため様々な活動がコロナ禍の状態から通常の活動へ戻る変化の年となり、影響のあった部分もいくつか見られました。

 各分科会活動については参会式へ戻した分科会講演も複数ありましたが、まだ大半はオンラインで実施されています。一方で、12月に開催したデジタル・フォレンジック・コミュニティ2023では参会式のみとしましたが、参加者が想定よりも伸びない結果となりました。オンライン参加イベントでの時間や場所の自由度というメリットについて、参加者側の意識の変化が想像以上に大きかったと痛感しました。しかし参会式で相手を認識しながら行う情報交換などそれぞれに利点はあるため、IDFとしてのバランスをどこで取るのかが今後の課題となります。

 また、8月にはIDF設立20周年記念式典を行い、功労者の表彰や歴代会長によるとても濃いパネルディスカッションなど、節目にふさわしい行事を行うことができました。ご参加いただきました皆様には厚く御礼申し上げます。この他、9月には第13回IDF講習会、第6回DF基礎資格および第2回DF実務者資格の認定試験が行われ、2月には第7回DF基礎資格認定試験が行われました。

 収支に関しては、各イベント等も含めてトータルで今までの繰越を減らすことなく第20期を終えることが出来そうです。これは言うまでもなく、第20期で改訂をした会費について会員の皆様にご理解を頂き納入頂けたことがベースとなっています。改めて、御礼申し上げます。

第21期に向けましては、大きく以下の点をポイントに計画を検討しています。

1.若手の活動領域の提供
 これは、IDFに限らずセキュリティ業界でもよく言われておりますが、次世代のリーダーとなれる人に芽を出してもらう、また若手が参加したくなる研究会として行くために必要な施策と考えています。
 大枠の目指すところは定義しますが、事務局・役員ともに求められたら支援はするけども、基本的には方針や手法も含めて若手に任せるというWGを立ち上げようとしています。

2.イベントの費用や事務局費用の見直し
 10年以上据え置かれていたIDF講習会の通常コース参加費見直しや、DF資格認定試験の団体会員割引の実施など、適切なコスト負担のお願いと、会員メリットの明確化を進めます。
 同時に、コミュニティの規模や経費、事務局の固定費など、イベントおよび運営の係るコストについて柔軟に最適化を進めます。

3.Webサイトを始めとする情報発信手段について
 第20期では、Webサイトについて根本的な更改の前段として必要な作業である、
・サイトの構成改修(3サーバー構成を1サーバーへ統合)
・フラットUI調のユーザインターフェースへの変更、構造の修正
・過去のコンテンツも含め、サイト内デザイン及び表記の統一
・全体的なセキュリティ設定の見直し、修正
といった作業を直営で実施完了するところまでで、当初の目標の更改までには至りませんでした。
 第21期では上記が完了しているため、基盤の更新を外注作業で実施する計画をしています。また、昨今のメール関係のセキュリティ強化による影響や、Webサイトに対するセキュリティ評価の影響も鑑みて、随時見直しや事業者変更の検討を進めます。

4.情報発信の継続と拡大について
 第20期ではガイドライン等の更新タイミングが無く、新たな公開コンテンツが少ないタイミングとなっていました。
第21期では人材育成分科会と技術分科会の共同でクラウドフォレンジックの内容を拡充した証拠保全ガイドラインの改訂を進めるほか、デジタル・フォレンジックと経済安全保障に関連する提言や啓発活動を計画するなど、社会への貢献として情報発信の活動を行います。
また、800回を超えて今も継続しております本コラムについても役員での執筆を続けるとともに、事務局ではWebサイトで過去の記事を探しやすくするなどの改良を計画しています。

 この他にも様々な施策や変更点を含めて第21期の計画を練り、理事会で議論し意見を頂いているところです。
5月の総会で会員の皆様にご承認頂き、第21期のスタートが切れるよう、引き続き計画の作成を進めます。

【著作権は、植草氏に属します】