第386号コラム:丸谷 俊博 理事・事務局長
(株式会社フォーカスシステムズ 新規事業推進室 室長)
題:「第5回IDF講習会を終えて、コミュニティ2015に向けて」

急な冷え込みから秋が深まっているのを感じますが今年も年末に向け忙しく時が過ぎてゆくものと思います。第12期のIDF活動も分科会やワーキング等で中味の濃い有益な活動が続けられております。これらの活動を推進して頂いております役員、主査、参加会員、省庁オブザーバーの皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
IDFの独立イベントである第5回IDF講習会が9月に終了し、また12月のコミュニティ2015の準備も順次進んでおりますので、これらについて報告させて頂きます。

1 第5回IDF講習会を終えて
9/17(木)、18(金)の2日間開催致しました第5回IDF講習会は、通常コース(3時間枠で午前・午後実施)と昨年に続いて実機、実ソフトを触る簡易トレーニングコース(1日)を設けました。受講者は、合計132名で、通常コース受講者が延べ252名、簡易トレーニングコース受講者は延べ42名でした。

今回の受講者は、現場でデジタル・フォレンジック実務に携わる関係者が多くなってきていることを反映し、官公庁からの受講者及び民間でも実務に関わる方々が増加しました。また、現場で活用できる知見や製品情報等を求めておられる方も多くなってきたことが感じられました。各コースとも熱心に受講された方々が多く、アンケート結果からも良い評価を頂いております。また各コースを担当・実施して頂いた各社からも良い評価を頂いております。

アンケートから幾つかの特性を報告致しますと、初受講の方が68%、2回以上の受講者が32%で、次回も実施して欲しいか?に対しては、96%が実施を希望されました。講習会の年間での実施回数については、現状と同じく1回を希望する方が40%に対し、2回35%、3回以上8%と実施回数の追加要望が多くなって参りました。受講費についても、妥当とされた方が79%で、安いとされた方が9%おられました。また、各コースの評価も大半の方が“非常に有益だった”との回答となっており、主催者側としては所期の目的を達成できたと考えております。

この他、今年初めてIDF主催コースとして、受講者を官公庁に限定した「証拠保全ガイドラインの解説」コースを設けましたが「証拠保全ガイドライン」への認識や啓発及び各種情報共有の場として大変有意義な場となりました。

上述の内容を踏まえ、来期第13期のIDF講習会の企画検討を進め来期計画に反映して参りたいと思います。

2 デジタル・フォレンジック・コミュニティ2015開催へ向けて
第12回目となるコミュニティ2015は、これまでと同様にグランドヒル市ヶ谷で12/14(月)、12/15(火)に開催致します。コミュニティのテーマにつきましては、「IoT/クラウド、M2Mのデジタル・フォレンジック - 飛躍的に向上する社会の利便性とともに -」としました。これは開催趣旨に示しておりますように、急速な勢いで進む趨勢にあり、日本が世界をリードできる分野でもあるIoT(Internet of Things)やM2M(Machine toMachine)の流れに対応して、デジタル・フォレンジックもIoT、M2Mで必要とされる手法・技術として寄与していくことが求められているとの認識から設定したテーマです。今回のコミュニティ2015では、ビジネスや産業分野でのIoT、M2M等の動向や方向を把握し、またこれらの課題や論点を識者に提起して頂き、IoT、M2M分野での今後のデジタル・フォレンジックの方向性を検討する示唆を得たいと考えております。

コミュニティの後援省庁は、新たに国土交通省が加わり全12省庁となり、後援団体は、一般社団法人メディカルITセキュリティフォーラムと一般社団法人日本画像認識協会が加わり全21団体となりました。

プログラム編成としては、14日(月)は、佐々木会長挨拶に続き、①基調講演(楽天:平井康文氏)、②特別講演(IPA:頓宮裕貴氏)、③招待講演(JC3:坂明氏)、④研究会1(座長:名和利男理事、NISC:伊貝耕氏、TOCOG:舘剛司氏、日本マイクロソフト:高橋正和氏)、15日(火)は、協賛企業プレゼンに続き、⑤国内事例報告(東京電力:中嶋好文氏)、⑥海外講演(メトロポリタン州立大学:Jigang Liu教授)、⑦研究会2(座長:小向太郎理事、東京工科大学:手塚悟氏、新潟大学大学院:須川賢洋氏、情報セキュリティ大学大学院:湯淺墾道氏、LINE:大倉健嗣氏)の構成としました。各講師の演題や内容については、コミュニティ2015紹介ページ( https://digitalforensic.jp/home/act/community/community-12-2015/ )をご覧下さい。また、各講演の概要や講師紹介につきましては、皆様に発信済みのコミュニティメルマガ第1号、第2号、第3号( https://digitalforensic.jp/category/community/ )にて紹介しております。

初日の14日(月)は、楽天の平井様から楽天が進めるモバイルとセキュリティーに関する戦略及び今後の急激な環境変化に対応するCIO職のミッション等についてのお話しを頂き、IPAの頓宮様からは、IoTのセキュリティ上の課題の紹介とIPAが進めるセキュリティ向上の取組についてお話し頂きます。産官学の協働と国際連携を目的に昨年11月に設立されたJC3の坂様からは、脅威の特定・軽減、そして無効化を図るための産学官の協働の現況をお話し頂きます。「研究会1」では、IoTオリンピックとも言われる2020年の東京オリンピックを見据えて、サイバーセキュリティの政府施策や東京オリンピック組織委員会の取組について俯瞰し、今後の技術動向や脅威への対策・対応を検討し、フォレンジックが対応してゆかなければならない課題等を洗い出し、討議を行って頂く予定です。

二日目の15日(火)は、協賛企業のうちプラチナサポーターによる企業プレゼンに続き、東京電力の中島様から電力分野での代表的なIoT機器となるスマートメーターが全国的に導入拡大されてゆくことに対応したスマートメーターシステムの安定運用に向けた取り組み等をお話し頂き課題を検討致します。午後は、コミュニティでは久し振りとなる海外から講師をお迎えして米国における「IoTフォレンジック」研究等の状況についてメトロポリタン州立大学のJigang Liu 教授からお話しをお伺い致します。「研究会2」では、「コンシューマ向けビジネスにおけるIoT/M2Mと法的課題」をテーマとして、エンドユーザ向けに提供されるサービスや消費者向けの物販の分野でも、IoT技術の利用が活発となってゆく趨勢を踏まえ、ビジネスにおいて懸念される各種法的課題(製造物責任、不法行為責任、個人情報保護等)について検討・議論を深めて頂きます。

尚、コミュニティ2015でも例年と同様に交流会の開催、最新のフォレンジック、サイバー関連の機器・ソフトやサービスを紹介する企業製品展示も行いますのでこちらへのご参加、ご参観も宜しくお願い致します。

では、デジタル・フォレンジック・コミュニティ2015への参加申込をお待ち申し上げます。

【著作権は、丸谷氏に属します】