第461号コラム:守本 正宏 理事(株式会社FRONTEO 代表取締役社長)
題:「LEGALTECHからREGTECHへ ~広がるデジタル・フォレンジック技術の可能性~」

 金融機関を取り巻く環境は新たな変化を迎えています。

 貸出による収益の減少やFINTECHの進展を背景とした新興勢力の台頭、銀行と系列の証券会社の銀証連携・融合による優良顧客の囲い込み等が進む中、特に金融庁が2016年10月に発表した「金融行政方針」が大きな注目を集めています。同方針は、従来の“日本型金融排除”から脱却し、「実質的に良質な金融サービスの提供」を実現するために、金融機関へビジネスモデルの転換を求めており、FINTECHへの対応も掲げ、新たな金融技術の活用を促しています。

 そのような中、テクノロジーの力でビッグデータから新たな課題や、埋もれていたビジネスチャンスを発見する手法も、検討・実装の段階に来ています。

 例えば、支店のお客様企業の担当者が記録した膨大な営業日報から、人工知能などのテクノロジーの力でお客様の課題や事業の成長機会を見つけ出し、それに対応する商品やサービス、情報のマッチングなどを提案する機会を作ろうとしています。

 従来は、金融機関の支店の担当者がお客様企業にヒアリングした課題や事業計画を元に商品やサービスを提案していますが、担当者やチェックする上司の経験や業務知識、スキルに左右され、可能性に気付かず適切な支援ができていないことがあります。

 その状況を改善するために、本店の担当部署が人工知能等を用いて、支店の営業日報を網羅的に解析することで、担当者が気付いていないお客様の課題やニーズを検知し、その分野の専門スタッフと連携することでお客様への支援を強化できるようになると期待されています。

 一方、コンプライアンスチェックにより、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の実現をテクノロジーの力で実現しようとする動きも始まりました。

 支店など営業担当者の応接記録から、金融商品取引法などに抵触する勧誘や、契約における不適切な対応を、人工知能が検知するというものです。

 これまでは人が読んで監査するしかなかった営業担当者とお客様との応接記録を、人工知能などのテクノロジーを活用することにより、人を介さず必要な文章が正確に抽出され、大幅な時間の削減と監査の質の向上が実現します。また同時にリスクの高い取引を見つけつつ、網羅性も高めることが可能になると考えられています。

 これらの実現のためには、ルール作りだけでは不十分で、実際に現場でのコミュニケーションの微妙なやり取りの中に問題を見つけ出す技術が必要です。最初からわかりやすく規定違反をする人は少なく、中には規定違反をしている自覚がないまま違反してしまう、という例も少なくありません。判断の難しい曖昧なやり取りの中にこそ重要な予兆があり、その予兆を早期に発見しなければ、フィデューシャリー・デューティーの実現は難しいといえるでしょう。

 デジタル・フォレンジックが培ってきた技術や経験は、まさにこのような要求に応えてきたもので、その範囲は、これまでの訴訟や犯罪捜査といったLEGALTECHから、FINTECH、REGTECHへと拡大されつつあります。

 今後はソフトウェアやハードウェアといった製品の提供だけでなく、適切に運用するためのトレーニングや、そもそもそのような仕組みを作る支援をするコンサルティングサービスなどが発生してくるでしょう。

 LEGALTECHからREGTECHへ。デジタル・フォレンジック技術、経験の必要性は日々高まり、その可能性は広がっています。

【著作権は、守本氏に属します】